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ユネスコ、校内暴力といじめに関するレポートを発表(2017年1月)

 ユネスコ(国連教育科学文化機関)は、2017年1月17日~19日に韓国のソウルで、梨花女子大学と共催した国際シンポジウムで、世界の校内暴力といじめに関するレポート(School Violence and Bullying- Global Status Report)を発表しました。

 レポートは、世界で10億人以上が学校に通う中、毎年2億4,600万人もの子どもたちが校内暴力やいじめで苦しんでおり、グローバルな取り組みが必要だとしています。以下、レポートの概要を紹介します。                               

特徴

校内暴力といじめはすべての国で起こっており、多くの子どもたちの安全な環境で教育を受ける権利が損なわれている。

● 弱い立場にある子どもたちが、とりわけいじめの対象とされやすい傾向にある。2016年のユニセフによる調査によれば、いじめの原因は外見・容姿(25%)、民族・国籍(25%)、性的指向(25%)、その他(25%)だった。

● ネット上のいじめの問題も拡大しており、先進国における調査では5%~21%の子どもが被害にあっている。EUの調査ではネット上のいじめの被害者の半数が、現実社会でもいじめを受けている。

● いじめの事実は他人に伝えづらく、2016年のユニセフ調査ではいじめられた経験のある30%が誰にも伝えなかったと答えた。

● 世界で半数の子どもが体罰から法的に保護されていない。2014年12月時点で122ヵ国が体罰を法的に禁止しているが、76ヵ国にはそのような法制度はない。また、いくつかの国では女子生徒に対する暴力のうち、教員によるものが相当な割合を占めている(ウガンダ48%、ケニア42%、ナイジェリア32%)。

影響

校内暴力といじめは、子どもの心身の健康・福祉を害するものである。校内でいじめが蔓延すると学校の雰囲気が不安定になり、教育の質が落ちるため全生徒に悪影響を与える。

● 先進国を含む30ヵ国での調査では、いじめに関わらない生徒が「健康良好」「生活に満足」と答えたのはそれぞれ36%、40%だったのに対して、いじめの被害者・加害者では27%、29%にとどまった。

● イギリスでの調査では、7~11歳でいじめを受けた人は、学歴やその後の人間関係、知能(IQ)などに悪影響がみられた。

● 体罰はいくつかの国では中途退学の要因となっており、ネパールの調査では中途退学の理由の14%が体罰や教師への恐怖心によるものだった。

対応

教育セクターには子どもを暴力から守り、すべての生徒に安全でインクルーシブな学習環境を提供する責任がある。そのためには以下のような要素を含む取り組みが必要である。

● リーダーシップ

いじめや体罰対策のための法を制定し、政策を進めていくことは、それらを非難するメッセージを社会に明確に示すという効果があり、子どもの権利を尊重する文化基盤となる。24ヵ国において、体罰を法的に禁止することが子どもに対する教育の一環として、体罰減少に繋がったという調査もある。

● 学校環境

管理がしっかりとして有能なリーダーがいることが安全な学校の特徴だとする研究がある。学校側が、明確に暴力やいじめは受け入れられないものだというメッセージを発信していくことが必要である。

● 能力開発

学校関係者が校内暴力やいじめを理解し、それを予防・特定・対応するための訓練が必要である。また、人権の尊重などに関する教育は暴力を予防する上でとても重要である。

● パートナーシップ

いじめ根絶のためには政府、学校、親、メディアなどを含めた広いコミュニティで取り組む必要がある。また、国連子どもの権利委員会は子どもたちの参加の重要性を強調している。子どもたちが、校内暴力やいじめをなくしていくための計画・実施に関わるといった取り組みが効果的であるという報告がある。

● サービスとサポート

いじめの被害者には、いじめに関する効果的な報告制度が必要である。また、カウンセリングや支援は、加害者にも受けさせられるようにすべきである。

● データ・監視・評価

正確なデータと政策の監視・評価はいじめ予防・対策に不可欠である。しかし、予算の限られる国では情報収集の優先順位が低いことや、各調査の条件が異なり比較できないなどの問題がある。そこでユニセフは、WHO(世界保健機関)による子どもの健康に関する調査をはじめ145ヵ国を対象とした6つの調査のデータを基に、グローバルないじめデータベースの作成を進めている。

● 取り組みの例

ノルウェーでは「オルヴェウス・いじめ防止プログラム」が2001年以来導入されている。学校、クラス、個人に向けた取り組みや、親およびコミュニティのサポートを確保するための取り組みが行われている。また、決定過程への子どもの参加を確保するとともに、いじめ予防のための能力を身に着けるなど子どもの良い手本となるために大人が果たすべき責任に焦点を当てている。

 レポート本文にはより詳細に、各国の取組みが取り上げられています。また、他の国際機関の動向としては2016年12月の国連総会において「子どものいじめからの保護」(決議71/176)が2014年に続き採択されています。決議では、いじめを含むあらゆる形態の暴力に対して必要な措置をとることを加盟国に要請し、事務総長に問題への取り組みを求めています。

(抄訳・構成:谷口勇士・ヒューライツ大阪インターン)

出典

 

ユネスコ グローバル・ステータス・レポート(英語)http://unesdoc.unesco.org/images/0024/002469/246970e.pdf

ユネスコ ニュース(英語)

http://en.unesco.org/news/new-unesco-report-school-violence-and-bullying-be-released-international-symposium-issue-0

国連総会決議71/176(英語)

http://www.un.org/en/ga/search/view_doc.asp?symbol=A/RES/71/176

 

 

(2017年02月10日 掲載)