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「利益の追求と肥大化する企業の力は、労働者の集会と結社の権利を侵害する」と国連特別報告者が警告

 職場における集会と結社の権利を行使するための状況が世界的に激しく悪化しており、労働条件、社会的保護の悪化や不平等の拡大に繋がっている、と「平和的集会及び結社の自由に関する国連特別報告者マイナ・キアイ(Maina Kiai)氏が2016年10月21日に国連総会へ向けて報告しました。
飽くなき利潤の追求、肥大化する企業の力、雇用関係の変化などが労働条件の悪化の主たる原因であるとキアイ報告者は強調しています。
同報告者は、「何としてでも利益を追求しようとする世界経済秩序が原因で、職場における集会と結社の権利は侵害され続けている」「大企業の増大する力や活動の地理的拡大により、国家はこれらの企業の利益至上主義的な活動に対し規制をしようとしない、または規制できなくなっている」と述べました。
報告書では、政府による権利侵害の事例として以下のようなものを挙げています。
 
・サウジアラビアやアラブ首長国連邦はあらゆる労働組合の結成を禁じており、カタールは公営企業従業員の組合加入や団体交渉・ストライキ参加を禁じるなど幅広い規制をしています。
・フィリピンでは、公営企業を管理する行政命令が団体交渉権を認める一方で、予算行政管理省は制限と予算的制約を課し、公営企業における団体交渉権を阻害しています。
・カンボジアの新しい労働組合法は非正規労働者、公務員や家事労働者をその適用範囲から除外するなど、一部労働者に対し権利保護の義務を負おうとしない国もあります。
・韓国では10万人が参加した抗議集会を追い散らすため2万人の警察官が催涙ガスや高圧放水砲を用い、多数が負傷しました。さらに、585人の全国民主労働組合総連盟(民主労総)のリーダー及びメンバーが刑事訴追されました。特別報告者は平和的集会の参加者たちを刑法上の罪で起訴することは平和的集会の権利の侵害である、と強調しています。
・中国は中華全国総工会に独占的な地位を与えることで労働組合を結成する権利及び組合代表を選ぶ労働者の権利を制限し、労働者の組織化を抑圧しています。
 
特別報告者はまた、脆弱な立場にある人々の労働状況についても言及しています。
移住労働者
ILOは全世界で1億5000万人の移住労働者がいると見積もっています。しかし、法的地位などを理由に、ほとんどの移住労働者が組合加入を禁じられているため、賃金や労働条件の改善を主張することができません。そのため低賃金または無報酬での労働や、危険で不健康な労働環境に置かれることも多々あります。
 
女性労働者
世界で女性の労働者のうち4分の3はインフォーマルセクターで働いており、保護を受けられません。差別や不当な扱いなどにより、男性と比較して労働組合加入や集会及び結社の権利を含む労働関係における権利が保障されていません。それも一因となり、世界的に、女性の雇用は低賃金労働に集中しています。また、2014年のEU諸国での調査によると、75%の管理職・専門職に就く女性、および61%のサービスセクターに勤める女性がセクシャルハラスメントを経験しています。
 
家事労働者
ILOは世界で6,700万人の家事労働者がいると見積もっています。多くの国では家事労働者を法律上の「労働者」として認めていません。およそ90%が効果的な社会的保護を受けられていません。有償家事労働は不安定な仕事であり、英国、カナダ、日本などでは家事労働者を最低賃金規定から除外するなど、法律で他の労働者と区別されることもあります。
 
 以下、報告書の主な結論及び勧告です。
結論
・労働者はその国内での法的地位にかかわらず平和的集会及び結社の権利を有する。
・また、国際人権法上、国家は労働者の権利を侵害しないこと、権利保障のために積極的措置を講ずること、そして第三者による侵害から保護することを含む義務を負う。
・それにもかかわらず、国家は一般的に労働者の権利を犠牲に経済・企業の利益を優先し、貧困と不平等を悪化させる傾向にある。人々が権利を行使し、世界経済システムの実現可能性を確保するためにも、この状況への早急な取り組みが必要である。
 
国家への勧告
・あらゆる差別なしに誰もが職場における平和的集会及び結社の権利を行使することができるよう確保すること。
・この権利の完全な行使を可能にするよう政策の一貫性を確保すること。
・独立した監視メカニズム及び効果的な救済手段を設置・提供すること。
・とりわけ企業などがデュー・ディリジェンス、人権影響評価などを実行することにより国際人権規範・基準を順守するよう確保すること。
 
企業への勧告
・労働者の平和的集会及び結社の権利を尊重する義務を履行すること。
・反組合政策や権利を行使した労働者への報復を控えること。
・グローバル・サプライチェーンにおいて人権に関するデュー・ディリジェンスを実行するなど「ビジネスと人権に関する指導原則」を実施すること。
 
(構成:谷口勇士・ヒューライツ大阪インターン)
出典:
国連人権理事会ニュース(英語)2016年10月21日付
http://www.ohchr.org/FR/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=20720&LangID=E
報告書本文(英語)"Rights to freedom of peaceful assembly and of association" (A/71/385,14 September 2016)
http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=A/71/385&referer=/english/&Lang=E
参考:
ビジネスと人権に関する指導原則(ヒューライツ大阪)
https://www.hurights.or.jp/japan/aside/ruggie-framework/

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