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ソウル宣言

  第7回人権の伸長と保護のための国内人権機関国際会議は、紛争下及びテロとの戦いにおける人権の支持をテーマに開催された。この会議は2004年9月14日から17日に国連人権高等弁務官事務所のサポート及び協力、国内人権機関国際調整委員会の議長との協議のもとで、アジア太平洋フォーラムならびにAgence Internationale de la Francophonieにより資金協力を受け、大韓民国の国家人権委員会により組織された。

  国内人権機関は大韓民国の国家人権委員会に謝意を表し会議のすばらしい組織と主要スピーカーの刺激的なプレゼンテーションと実りあるディスカッションそして討議に感謝する。NGOオブザーバーらの会議前のフォーラム及び会議への積極的な参加は価値ある貢献であった。この会議は国連人権高等弁務官事務所並びに大韓民国大統領の参加によってさらに実り多きものとなった。

  ここに第7回国内人権機関国際会議は以下のようにソウル宣言を採択する。

  世界人権宣言、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、市民的及び政治権利に関する国際規約を含む、人権及び基本的自由を守るために諸国家によって合意された普遍的な条約を想起し、そしてそれらの条約が国連憲章や関連する地域的条約とともに国際的平和及び安全へ貢献できることを喚起する。

  それらの条約は諸国家に対して、例外的な性質の脅威からの安全を含む、人々の安全を保障する手段を備え実行を要求することを認めるが、しかしそれは人権の尊重、基本的自由並びに法の支配の枠組み内においてなされるべきである。

  21世紀のこの初期において、紛争、テロリズム及び過剰な対抗手段の脅威によって国際コミュニティ及び各国家並びにその住民らに厳しくそしてかつてないほどに人権という課題が提示されていることを熟考する。

  なかんずく国連ミレニアム宣言、安全保障理事会決議1269(1999年)、1373(2001年)及び1456(2003)、国連総会の国際テロを廃絶する措置に関する宣言(A/RES/49/60)、テロリズムとの対抗における人権及び基本的自由の保護に関する国連総会決議58/187(2003)、人権及びテロリズムに関する国連総会決議58/174(2003)、並びに地域的機関はもとより人権委員会の決議を含む、紛争及びテロリズムの脅威に関連する国連諸機関の多くの関連する決議や宣言を想起する。

  テロに対抗するいかなる措置が国際法、特に国際人権法、難民法並びに人道法における義務に完全に合致することを諸国家に要求するそれら国家機関との連帯を表明する。

  地域的機関及びメカニズムの判決及び決定のみならず、規約人権委員会、特にその緊急事態に関する一般的意見29(2001年)を含む人権条約機関及び特別手続きにより規定されるガイダンス及び判例(jurisprudence)を歓迎する。

  2002年のコペンハーゲン宣言においてジェノサイド、民族浄化または武力紛争に発展する危機的状況への早期の警告に関する規定に表明されているような国内人権機関の特別の役割を強調する。

  国際的な人権基準を国内レベルで適用することにより人権保障の持続可能性を確保する国内人権機関の独自の役割を認識する。

  それ故に国際的な人権システムにおける国内人権機関の役割及び参加の強化を促す。

  パリ原則に合致する独自の法律的根拠及び多元的構成に基づく国内人権機関が、国家レベルでの公権力と市民社会グループとの対話を含む紛争解決に寄与することができることを留意する。

  それゆえにこの国際会議において以下のように宣言する。

  テロリズムはすべての人権、特に生命への権利及び身体の安全への権利に直接かつ破壊的な影響をもたらす。人権の尊重及び法の支配はテロリズムに対抗する最も重要な手段である。国家の安全と個人の権利の保障は相互に依存し関連するとみなすべきである。それ故に国家がテロリズムに対抗する手段は国際人権法、難民法並びに人道法に一致しなければならない。

  国内人権機関はテロリズムとの対抗だけでなく紛争解決においても人権を保障し促進する職務をもつ。特に基本的権利に対する圧力の増加を踏まえてこの職務の効果的な実施を強化する必要がある。

  国内人権機関の間で、地域的及び国際的なレベルにおける協力を強化し情報並びに特別な手段の発展を含む最優良事例を共有する必要がある。

一般原則

国内人権機関はセキュリティ法を人権の側面から審査し意見を述べる非常に重要な役割を担い不公正、不正義、不平等及び不安定を修正し、よってテロリズムや暴力的紛争の可能性を縮小する長期的な手段及び政策を採ることの重要性を強調する。

  国内人権機関は早期の警告メカニズムと関連する運営上のガイドラインを開発するべきである。それは重大な人権侵害を引き起こす国家間及びコミュニティ間の紛争に対応する早期警告と行動メカニズムの導入を国家に促すことに結合すべきである。

  国内人権機関は暴力的な紛争における国家による権利の侵害を検証すべきであり特別審判所や意思決定機関の設立を推奨すべきである。国内人権機関は暴力的な紛争における非国家アクターによる権利の侵害をも検証すべきであり時機を逸せずに適切な方法によって紛争発生の潜在地域を特定すべきである。

  続いて、国内人権機関は紛争当事者に対して人権と人道法に関して助言を提供するべきであり、ないしは別の方法で、仲裁を含む伝統的な紛争解決手段だけでなく代替的手段の利用を促進し手助けするべきである。

  国内人権機関と諸国家はその紛争解決の手段を紛争の平和的かつ交渉による解決のための計画、戦略及びメカニズムに統合すべきである。それらの戦略は真実と和解のプロセスの要素を含むべきであり国内人権機関はこの点において役割を果たすべきである。
被害者のための基金と適切な補償金の支払いに特別の注意が払われるべきである。

  国内人権機関は暴力的紛争を明らかにするだけでなくその背景にある理由にも焦点をあてるために人権の関心事をより広範な社会的文脈におくことによって積極的な役割を担うべきである。

  紛争及びテロとの対抗時において、国内人権機関は人権文化、平等及び多元性を推進する重要な役割を担う。国内人権機関は女性の公正かつ衡平な代表によってそれらの原則を示すべきである。

経済的、社会的及び文化的権利

経済的、社会的及び文化的権利の実現は紛争とテロリズムの予防において重要な役割を担うことができる。それらの権利の正当性を推進しそしてテロリズムに対抗する手段において被害を受けやすいグループの経済的、社会的及び文化的権利に与える影響を監視する必要がある。

  国内人権機関は、経済的、文化的及び社会的権利に関する国際規約における義務に対する国家の尊重をより保証するために能力を強化し、普遍的な人権のすべてのスペクトルにおける不可分の部分として、経済的、社会的及び文化的権利を推進し保護すべきである。

  国内人権機関は人権の享受を危機にさらす汚職について諸国家が適切な注意を払うよう要求するべきである。国内人権機関は、それによってテロリズムや紛争に発展する状況を予防し、食物や住居を含むベーシックニーズの保証を諸国家に奨励すべきである。

  国内人権機関は経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約による義務を果たすよう諸国家に要求するべきである。

市民的及び政治的権利と法の支配

国内人権機関は、諸国家があらゆる形態のテロリズムから住民を保護する責任、そして国際法による義務があることを強調する。

  国内人権機関は紛争前、紛争下及び紛争後において市民的及び政治権権利の効果的保護の強化及び推進において重要な役割を担う。

  紛争が発生する前に、国内人権機関は外国人排斥及び差別並びに人権の不当な制限について特別の注意を払う必要がある。

  紛争下及びテロリズムへの対抗下において、人権の享受に影響を与えるいかなる対策は、必要であるがバランスもとられているべきである。国内人権機関がそのような対策の限定的かつ合法的な適用をモニターすることは重要である。国内人権機関は国家に対してテロリズムに対抗する立法は性急に制定されるものでもなく事前の市民の審査なしに制定されるものでもないことを要求すべきである。さらに、デュー・プロセス、公正な裁判の基本的な要件、人間の尊厳の尊重、拷問及び虐待、並びに恣意的な拘禁からの自由を含む、逸脱不可能な権利の侵害を予防するための適切な手段をとるべきである。

  紛争後の解決において、国内人権機関は人権侵害の調査並びに刑法の遡及適用を防止すると同時に、刑事免責の防止において主要な役割を演じる。

  当局による虐待を避けるために、国内人権機関は法律適合性の原則及びテロリズムに関連する犯罪の正確な法的定義の重要性を強調する。さらに、国内人権機関はテロリズムに対抗する手段において人権の侵害が申立てられた場合、救済と司法審査の必要を強調する。

  国内人権機関はテロリズムの起源、そして司法部、行政及び治安部隊に対する人権教育を含むもっと効果的で、包括的な対応について一般市民の関与と論議、意識向上をリードして予防的活動に携わるべきである。さらに国内人権機関はメディアの表現の自由を強調すべきである。

  国内人権機関は、アカウンタビリティを確保するために、定期的なレビューによってテロリズムとの対抗手段における人権の侵害を、そのマイノリティ・コミュニティや人権活動家への影響を含めてモニターすべきである。

紛争とテロリズム下における移住

移住労働者の保護に関しては国際的な基準がある。言うまでもなく、移住労働者の多数は「すべての移住労働者とその家族の権利保護に関する条約」を批准していない国にいる。

  国内人権機関は移住労働者、難民、避難民、国内避難民及び人身売買の被害者に関する国際的基準の国内実施を推進し確保すべきである。

  国内人権機関は、特に受入国において、「すべての移住労働者とその家族の権利保護に関する条約」の批准を推奨すべきであり、移住労働者に関わる事項、特に女性と子どもに関わる事項を検討する際にはより活発に条約機関のモニタリングプロセスに関わるべきである。国内人権機関は諸国家に対して「武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書」の批准を奨励する。

  国内人権機関は、送出国、中継国及び受入国に対して不正規移民の問題についてよりよく対処するために二国間及び地域的な協力を確立すべきことを勧告する。

  国内人権機関は国連難民高等弁務官事務所及び地域機関並びにNGOとの協力によって、公正なプロセス、警察及び入国管理当局による処置、拘禁の状況、サービスへのアクセス、雇用状況及び家族の再会を含む難民、避難民、移住労働者及び国内避難民の経済的、社会的及び政治的権利を積極的に監視すべきである。

  国内人権機関は移住労働者、難民、避難民、国内避難民及び人身売買の被害者、特に女性の移住者のための人権啓発プログラムと彼らの社会復帰のプログラムを推進すべきである。

紛争下における女性の権利

国内人権機関は、紛争下における女性に対する隠れて認識されない暴力を明るみに出す重要な役割を担うべきである。紛争下における暴力はドメスティック・バイオレンスや性暴力のような、日常的な女性に対する暴力と密接に関連している。国内人権機関は暴力におびえる女性のためにカウンセリングを促進すべきである。

  国内人権機関は教育を提供し女性たちの経済的自立と独立を推進するために女性の権利意識を向上させるべきである。

  国内人権機関は紛争下における女性に対する暴力に関するデータ収集、疑惑の調査そして申立ての受理において重要な役割を担うべきである。

  国内人権機関が難民と国内避難民の女性の権利を保護し促進することは特に必要である。そのために申立てのメカニズム、難民及び国内避難民のキャンプの査察、難民認定される前に他国の拘禁施設に収容されている女性からの申立てのモニタリングにも取り組むべきである。国内人権機関は難民及び国内避難民の女性を人身売買から守るための手段を講じるべきである。国内人権機関は女性が参加する復興とリハビリのプログラムの形成及び実施の拡充に貢献すべきである。

  平和プロセスの一環として設立されたいかなる調査委員会又は真実及び和解委員会は、過去に発生した女性に対する広範囲でかつ組織的な暴力について取り組むべきであり、そこには女性の公正な代表を含むべきである。

  紛争の政治的解決のための交渉において、諸国家は平等とアファーマティブ・アクションの立法規定の制定を確保すべきである。

ソウル・コミットメント

このソウル宣言を実行するために国内人権機関はここに以下の事項を合意する:
  1. 国内レベルで行動をおこす
  2. 国内人権機関の間で、関連する、地域的な協力を推進する
  3. 国連の下に、人権基準によってテロリズムに対抗する手段の遵守をモニターする効果的なメカニズムの設立をサポートするよう各政府に対して奨励する
  4. 2005年4月の国際調整委員会の年次会合において実行した活動について報告する
  5. ソウル宣言を推進する方法の検討を国際調整委員会に要求する

(訳 野澤萌子)