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1.国内人権機関とは

(4)国内人権機関をめぐるこれまでの経緯

 国内人権機関を作るという話はどこから出てきたのでしょうか? 世界でどういう流れがあったのか、そして、日本の国内ではどういう流れがあったのかを簡単におさらいしておきましょう。

  • ①世界の流れ
    •  一番最初に国内人権機関について取り上げたのは、1946年に行なわれた国連の経済社会理事会の会議でした。この会議で、国連の人権委員会(現在は人権理事会という組織に変わっています)の活動を活発にするために、国内人権委員会を作ることが提案されました。
       その後、世界共通の人権についての基準を作ろうという動きと、そうした規準を満たすために国内人権機関はどういう役割が果たせるのか、という議論が交わされるようになりました。そうした議論を受けて、国連の人権委員会は1978年に、国内人権機関の構成と役割についてのおおまかなガイドラインを作りました。このガイドラインは国連総会で承認され、国内人権機関のない国に対して、国内人権機関を作るよう呼びかけることが決まりました。実際、1980年代には、たくさんの国で国内人権機関が作られたのです。
       1991年になると、国連の人権委員会が、国内人権機関と国連がどのように協力できるのか、国内人権機関にもっと強い役割を果たしてもらうにはどうしたらよいかを話しあいました。この話しあいには、そのときまでにできていた国内人権機関も参加しました。この話しあいでまとまった結論が、1993年の国連総会で「パリ原則」として認められるガイドラインになります。この「パリ原則」は、国内人権機関にはどういう役割や責任があるかを示したもので、現在でも、すべての国内人権機関が守るべき原則です。
  • ②日本の流れ
    •  1996年にできた「人権擁護施策推進法」という法律によって、法務省に「人権擁護推進審議会」という会ができました。この会では、(a)人権は大事なものであり、守っていくべきものであるということを広く理解してもらうための教育などをどのように進めたらよいか、(b)人権を踏みにじられた人を助けるためにどうしたらよいか、の2つを話しあいました。
       この話しあいの結果、1999年に、人権を理解してもらうための教育についての提案(「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について」)がまとめられ、2001年には、人権を踏みにじられた人を助ける制度についての提案(「人権救済制度の在り方について」)がまとめられ、それぞれ発表されました。
       この発表を受けて、1つめの提案については、2000年に法律(「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」)ができました。2つめの提案については、2002年に法律案(「人権擁護法案」)として国会に提出されましたが、その法律案には大きな問題があると強く反対されたため、法律にはなりませんでした。
       強く批判された点は、家や職場にメディアがおしかけた、メディアにおいかけまわされたなど、いきすぎた取材を受けた人が法案が予定する人権委員会に相談を申し立てた場合、人権委員会が特別に調査を行ない、いきすぎた取材を中止するよう命令できることでした。つまり、こうした命令がなされれば、報道の自由が踏みにじられる、一般市民の知る権利がせばめられる、と批判されたのです。その他にも、人権侵害とはどういうことか、があいまいであるため、なんでもかんでも「それは人権侵害だ」といういいがかりをつけられる、という批判もありました。また、国や国の組織などによる人権をふみにじる行為を人権委員会がきちんと取り上げないようになったこと、特別な調査を行なった人権委員会が、人権を踏みにじったとされた人の名前などを公表することができるとされたことなども、人権委員会の力が強すぎるとして批判されました。
       それから10年が経ち、2012年11月に同じような法律案(「人権委員会設置法案」)が国会に提出されましたが、ほとんど議論されないまま国会の会期が終わってしまいました。
       こうして、現在でも、2つめの提案を実現するための法律はできていません。


      <参考>

      人権擁護推進審議会の動向

      人権擁護法案関連/

      人権擁護法案全文

      人権擁護法案の概要

      パリ原則から見た人権擁護法案の問題点(人権フォーラム21作成)

      人権擁護法案へのNGOの意見

      人権フォーラム21

      JCLU(自由人権協会)

      アムネスティ日本

      部落解放同盟

      民間放送連盟

      日弁連