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  4. 1.国内人権機関とは
  5. (1)役割

1.国内人権機関とは

(1)役割

  • ①意見を出すこと、提案をすること
    •  第一の役割は、政府や議会などに対して、人権についての意見を出したり、提案をしたりすることです。そのために、政府や国の組織などから、人権に関する法律や制度について、または、人権が踏みにじられていると思われる状況について、事情を聞くこともあります。
       そうして集めた情報から、人権を守るために、すでにある法律や制度で十分なのか、十分でなければ、新しい法律や制度を作る方がよいのか、作るとしたらどういう法律や制度がよいかについて意見を出したり、提案をしたりします。その他に何かよい考えがあれば、その考えを試してみるようアドバイスすることもあります。また、すでにできている法律や制度がだれかの人権を踏みにじっていることがわかったときには、その法律や制度を廃止にしたり、人権を踏みにじっている部分を変えるようアドバイスすることもあります。国内人権機関は、自分たちの意見やアドバイスを発表することができます。
  • ②人権についての国際的な約束事を日本が守るようにすること
    •  国連では、人権に関していくつかの約束事を決めています(一般的に「国連人権条約」と呼ばれています)。日本が「この条約(約束事)を守ります」と宣言したら、政府は、国の法律や制度などがその条約を破っていないようにする必要があります。国の法律や制度などを条約にあわせることで、その条約が日本においてもきちんと守られるようにするわけです。条約が日本国内で守られているかどうかをチェックしたり、守られていなければ、政府などに注意をすることも、国内人権機関の役割です。
       もちろん、日本が「守ります」と宣言していない条約もあります。日本がそうした条約も守るようにする方がいいと思われる場合、国内人権機関は「守ります」と宣言するよう政府にアドバイスすることもあります。
  • ③人権についての報告書を作るときに協力すること
    •  国連で決まった人権条約には、それぞれの人権条約を監視する委員会があります。その委員会は、その条約を守ることを宣言した国で、その条約がどれだけ守られているかをチェックします。たとえば、日本が条約を守ることを宣言したら、その委員会に日本の人権状況について、定期的に報告することが求められます。実際に報告をする責任があるのは政府ですが、国内人権機関は、政府が報告書を作るときに協力したり、報告書について意見を言うことがあります。これも、国内人権機関の役割の一つです。
       また、国連には、人権を守るために活動している組織や、特別の役割を任せられた人などがいます。国内人権機関は、そうした組織や人、また、他の国の国内人権機関と協力することもあります。
  • ④人権について知ってもらうこと
    •  国内人権機関は、政治家や公務員、裁判官といった国の大事な仕事につく人たちや、学校の先生、病院で働く人、会社員、主婦、子どもたちなど、すべての人が人権について学べるようにプログラムを作ったり、そのプログラムを行なったりします。
       新聞、テレビ、ラジオなどの報道機関を通して、人権とはどういうものか、人権を守るためにどういう取り組みが行なわれているかといったことについて、国内人権機関が情報を発信することもあります。また、皮膚の色や出身民族など、人種を理由とした差別など、どのような理由があろうと、差別はしてはいけないことであり、なくしていくためにどうしたらよいかや、差別をなくすためにどういう取り組みがなされているかということについて、多くの人に知ってもらうことも国内人権機関の役割です。
  • ⑤相談を受けること
    •  さまざまな取り組みがなされていても、人権が踏みにじられることがあります。たとえば、学校でのいじめ、外国人に対して大勢で「出ていけ」と叫ぶようなデモ、車椅子を使っている人はお店に入らせないといったことが実際に起きています。そういうことを禁止する法律を作って欲しいと訴えても、法律が作られるまでには時間がかかります。また、訴えたからといって、必ず法律を作ってもらえるわけでもありません。ですが、何もなされないままでは、そうした人権を踏みにじるような行為が繰り返されることになり、状況はよくなりません。
       そこで、人権を踏みにじった人と、踏みにじられた人との間で問題を解決することが必要になります。その解決の手助けをするのも国内人権機関の役割です。
       たとえば、人権を踏みにじられるような経験をした人が、だれから、どのような目にあわされたのか、といったことを国内人権機関に相談します。相談を受けた国内人権機関の担当者が、本当にそういうことが起きたのか、それが人権を踏みにじる行為だったのか、といったことを調べます。調べた結果、人権を踏みにじる行為だったことがわかれば、そのような行為をした人に謝罪させたり、二度とそういうことをしないように学んでもらうなど、踏みにじられた人が満足するような解決策を考えます。

       最初に書いたように、人権は、すべての人が生まれたときから持っている権利です。人権は西洋のものだ、キリスト教の考え方だ、だから日本にはあわない、という人がいます。ですが、仏教でも、イスラム教でも、それ以外の宗教でも、一人ひとりを大事にしなくてはいけない、と言っています。どの宗教でも、どの考え方でも、人権が大事だと言っているということです。
       だれかの人権を奪ってもいい人、だれかの人権を踏みにじっても許される人はいません。国内人権機関は、人権が踏みにじられない社会、人権を大事にする社会にするために、いろいろな取り組みを考えたり、実際に試してみたりする組織です。そうした取り組みについて、国会に報告をしたり、メディアを使って広く知ってもらったりもします。そうすると、人権とはどういう権利なのか、どういうことをしたらだれかの人権を踏みにじることになるのか、といったことを、だんだんと多くの人が理解するようになり、人権を踏みにじるようなことをしなくなります。国内人権機関は、そうやって、日本が人権侵害を許さない社会になるように、取り組む組織なのです。