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ダーバン会議の準備会議と本会議

反人種主義・差別撤廃世界会議(WCAR)・アジア地域準備会議およびNGOフォーラム報告

2001年2月17日~18日(NGOフォーラム)
19日~21日(政府間会議)
イラン・テヘラン

反人種主義・差別撤廃世界会議の目的

 1997年、国連総会は人種主義に反対する世界会議を2001年8月に南アフリカで開催することを 決定した。その背景には「民族浄化」やグローバル化、インターネットによる差別煽動など新たな問題、複雑化する問題に、21世紀のスタートにあたり世界が 再び一致協力して闘う必要性があるとの認識がある。また、今日的形態の人種差別を幅広く扱うため、正式名は「人種主義、人種差別、外国人排斥、関連する不 寛容に反対する世界会議」としている。

 世界会議の目的には、過去の人種主義への闘いの成果と今後の障害を見直し、人種差別と闘うための基 準・条約をいかに適用し実施するかを検討し、人種差別の弊害をよりよく知らせ、国連メカニズムの効果を上げる具体的勧告を作成し、人種主義につながる政治 的、歴史的、経済的、社会的、文化的要素を見直し、国、地域、国際レベルのさらなる行動指向の措置についての具体的勧告を作成することなどがあげられてい る。

 目的にもあるように、この世界会議では宣言と行動計画が作成されることになっており、その後は加盟 国の措置実施状況が定期的にモニタリングされることになる。したがって、この世界会議は単に会議の開催で終わるものではなくその後の、またはその前のプロ セスが重視されるべきものといえる。

テヘランでのプロセス

 世界会議にむけたプロセスとして、2000年5月に第一回準備会議がもたれ、具体的な議題の検討な どが行われた。また、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、アメリカの各地域において具体的なテーマを地域的特徴に基づいて深めるために専門家セミナーが開催さ れている。ちなみにアジア地域の専門家セミナーは、「特に女性と子どもに関しての移住労働と人身売買」をテーマに2000年9月にバンコクにおいて行われ ている。今回のテヘランの会議はアジア地域の準備会議として位置づけられる。これらの会議・セミナーは基本的には国連加盟国政府間の会議であるが、手続き を踏めば、NGO(非政府組織)にも参加の機会(手続きを踏んでの発言、傍聴)が与えられている。これは国連としてもNGOの協力なしにはやっていけない という認識の現れであり、世界会議の事務局長であるメアリー・ロビンソン人権高等弁務官のNGOの参画を重視する意向も反映している。国連からはNGOへ の参加資金援助も行われている。

 NGOの側は、世界会議のプロセスに人種差別の被害者の声をとどけ、NGO全体の力を結集し、政府が約束事として合意して作成する宣言、行動計画の作成プロセスに影響をあたえようと懸命である。

 今回のテヘランでの会議はアジア地域の準備会議であり、アジアの28の加盟国の代表が集まり、アジ ア地域の実情に応じた議題を討議し、さらには宣言と行動計画を作成する。NGOの側は、この政府間会議の前に二日間にわたるNGOフォーラムを設定した。 NGO間のネットワーク、情報の交換を促進、当事者、被害者の声を届けること、国連プロセスへの参画、ロビーイング(影響を与えること)、NGOの視点の 反映などを目的として行われた。フォーラムを踏まえてNGOの宣言と勧告を作成しそれを政府間会議にぶつけるという手順になる。

NGOフォーラム

 NGOフォーラムは昨年10月、スリランカ・コロンボで構成されたアジア地域のNGO調整委員会 (約20団体)のイニシアティブのもと開催された。NGOによってはイラン入国のビザが直前までとれず遅れて到着したり、結局参加できなかった人もいて、 NGOに対する嫌がらせではとの不満の声も多く聞かれた。イラン政府によれば、数の多さからくる事務手続きの時間不足とのことであった。フォーラムは6つ のテーマ(ジェンダーと人種主義、移住と人身売買、カースト、国内マイノリティ [民族/宗教マイノリティ]、先住民族、グローバル化と人種主義)のグループに分かれてのワークショップをメインに進められた。各ワークショップではそれ ぞれのテーマのキーとなる問題を討議し、あわせて勧告としての声明文書をつくることとした。フォーラムの二日目にワークショップの報告が全体会で行われ た。カーストのテーマについてはインド政府の意向を反映したグループが、カースト問題は世界会議の議題に含むべきではないという主張が出され、それに対す る反発意見も出て激しい討論となった。また、上記のテーマでカバーしきれていない問題として、難民やパレスチナの問題も含むべきであるとの意見が出され た。また、今回の会議で特別に議論された問題は女性参加者への服装規定であった。イスラムの慣習であり、イラン国内法にも定められた女性の頭部へのスカー フの着用義務について、人権の観点から受け入れ難いとの女性参加者と現地イランの団体の女性との意見の対立が政府間会議を含めて最後まで見られた。


アジア地域準備会議(政府間会議)

 アジア地域準備会議(政府間会議)はNGOフォーラムとは別の場所で開催された。参加者は、アジア 地域の国連加盟国代表、そしてオブザーバーとして他地域の加盟国、専門機関代表、国連機関、国連人権条約機関、特別報告者、政府間機関、国内人権機関、そ の他組織、NGOを含めて約400人である。

 政府間会議は第一日目の開会セレモニーと第三日目の最終全体会を除くと、主な時間は一般的討議 (general debate)に費やされた。しかし、討議といっても実際は各国政府の代表またはオブザーバー機関による報告(レポート)の読み上げのみで、それらに対し ての反応や議論は傍聴した範囲では全くなかった。一般的討議と並行して政府代表の選出メンバーで構成される宣言、行動計画のための草案委員会は一般討議と 並行して行われた。NGOの発言機会は第二日目の午後、1時間に限定して与えられた。この時議場には草案委員会のメンバーも立ち会った。NGO全体ではこ の発言機会の戦略を考える集会を前日にもった。NGOの発言が重視されないのであれば退場による抗議行動も検討されたが、議論の末、一時間を有効に使い、 全体声明文と各ワークショップでまとめたテーマごとの文書をつかってアピールした。途中、進行が遅れたため議長から発言時間を短縮することが再三促され た。結局は一時間程度で終了したが、その後、予定していた一般討議が早く終了し三日目の予定時間までが短縮され、NGOの限られた発言時間との違いを際だ たせるものとなった。

 政府間会議の最終全体会で宣言と行動計画が採択された。会議前に準備されたいた草案はほとんどその まま採択された形となる。この意味をどう解釈すべきか。分析が必要だろう。また、NGOの影響も同様に反映されていない。NGO全体では政府間会議の終了 後、振り返りの集まりをもったが、今回のNGOのロビーイングは失敗ではなかったかという批判が出た。併せて、NGO調整委員会の調整、事務局作業、意志 決定、メンバー構成の透明性、情報発信の不足など多くの点でも批判があった。これらの意見を受けて、調整委員会はメンバーの再編や調整作業の改善をめざし ている。

今後のプロセス

 アジア地域準備会議を終えて、全地域の準備会議が終わったこととなる。その後、地域会議や専門家セ ミナーの結果、NGOによる文書などがまとめられ検討されるセッション間会議が3月初旬にジュネーブで行われた。すでに世界会議の宣言と行動計画の草案が できており、本会議まで検討され修正が加えられていく。また、5月には第二回準備会議が同じくジュネーブで2週間にわたって行われ世界会議の具体的な事柄 が決められる。

 アジアのNGOはこの準備会議への影響を与えるべく4月の下旬にNGO会議をカトマンズ(ネパー ル)で計画している。冒頭に述べたように世界会議までのプロセスをよりよいもの、つまり人種主義、人種差別、外国人排斥、関連する不寛容の被害を受けてい る当事者の声が届けられ人権が保障され改善されるためである。

国内での動き

 日本国内の動きでは、これまで反差別国際運動(IMADR-JC)が中心的な呼びかけ団体となって 世界会議にむけた運動が組織されてきた。そして1月24日には、反人種主義世界会議実行委員会(ダーバン2001)が立ち上げられた。反差別国際運動の情 報によれば、実行委員会は、1、世界会議の意義や日本の人種差別の状況を日本社会に知らせること、2、世界会議に積極的に取り組むこと、3、財源づくりに 協力して取り組むこと、4、世界会議後のフォローアップ活動の中で、次の共通の獲得目標を掲げて取り組むこと(反差別法制定、国内人権機関設置、国連・個 人通報制度実現)を活動目標として掲げている。

(文/ヒューライツ大阪・川本)