人として♥人とともに
新しい年、どのように迎えられたでしょうか。希望より危機に目が向く状況が続きますが、2026年が、どこで暮らすどんな人にとっても、少しでも希望や夢を感じられる年になるよう心から願いたいと思います。
そのためにも、私たちを取り巻く危機そして人権の現在地を考えることは重要かもしれません。2026年1月号の本コラムでは、南アフリカのCIVICUS (シヴィカス)というNGOが出した報告書から民主主義と人権の現在地を考えます。
シヴィカスは、2017年以来、毎年、全世界の20を超える市民社会組織と協力してCIVICUS Monitorという報告書を発行し、各国の市民社会組織が享受する集会・結社および表現の自由度を「開かれている(open)」「狭まっている(narrowed)」 「妨害されている(obstructed)」「抑圧されている (repressed)」「閉ざされている(closed)」の5段階に分類し公表してきました。2025年版では 「開かれている」と評価された国は、198カ国中39カ国でした(1。日本はここに含まれています。ちなみに米国は「妨害されている」、ロシア、中国は「閉ざされている」と評価されています。
さらに今回の報告書では、前回より「改善した国」と「後退した国」を挙げ、前者にガボン、モーリタニア、セネガル、後者にスイス、米国、フランス、イタリア、イスラエルを含む15カ国を挙げています。スイスは 「狭まっている」、米仏伊は「妨害されている」、イスラエルは「抑圧されている」に分類されています。
人口で考えると、世界の全人口の73%が、集会・結社および表現の自由が制限された状態に置かれ、31%の人々は、そうした自由が完全に閉ざされた状態で生活しています。「開かれている」「狭まっている」状況下で暮らしている人は全人口の7.2%に過ぎず、前年の7.5%から0.3ポイント低下しました。市民的自由を享受できる人が非常に限られていることが理解できます。
市民的自由の侵害の最たるものとして報告書が挙げているのが、82カ国から報告されている「抗議活動家の拘束」であり、「ジャーナリストの拘束」「人権活動家の拘束」が続きます。また、特定の地域や課題に関する市民的自由への制限としては、気候危機への対応、不正選挙への抗議、パレスチナへの連帯を訴える行動の排除や逮捕が挙げられています。トランプ政権は、政権を批判するテレビ局と新聞社に対し、考えられないような攻撃を繰り返しています。このような公権力による自由の抑圧は、集会・結社および表現の自由の行使を萎縮させ、民主主義の弱体化を招きます。
シヴィカス報告書が述べるように、民主主義が危機に陥れば、民主主義下で守られるべき自由への攻撃が始まり、市民は声を上げることができなくなります。そうした状況下で攻撃の対象になりがちなのは、女性、性的マイノリティ、外国籍者、移民を始め周縁化されてきた人たちの自由です。
今回、取り上げたシヴィカスの報告書では、集会・結社および表現の自由に関し、日本は「開かれた」状態と評価されていますが、日本でも、様々な運動において、抗議の声を上げた人たちが公務執行妨害等の容疑で拘束されてきた歴史があります。2025年は治安維持法100周年でもありましたが、この法律下では自由な言論は制限され、政府に批判的な意見は「非国民」とのレッテルを貼られ、場合によっては命を奪われる弾圧の対象になりました。
現政権はスパイ防止法の制定に積極的と伝えられています。2025年の参院選で「極端な思想の人たちを洗い出すのがスパイ防止法」と主張した政党もあります。他国との関係悪化といった状況を危機と表現し、私たちの自由が制限され始めれば、現時点では「開かれている」と評価されている日本の集会・結社および表現の自由には、どんな未来が待っているでしょう。
2026年の年頭にあたり、歴史に学び、「国家の危機」という主張が、「国家としての安心、安全、秩序」とセットになり、「言いたいことが言える」市民的自由を切り崩すことがないように肝に銘じたいと思います。
<脚注>
1)
オーストリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、アイルランド、日本、リトアニア、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、スロベニア、スウェーデン、台湾、ウルグアイ等が含まれる。
<参考>