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国際人権ひろば No.170(2023年07月発行号)

人として♥人とともに

G7広島サミットで人権と平和の課題はどう語られたか

三輪 敦子(みわ あつこ)
ヒューライツ大阪所長

 2023年5月19日から21日にかけてG7広島サミットが開催され、20日にはG7広島首脳コミュニケが発表されました。首脳コミュニケと参考文書として採択された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」の両方を人権の視点で検証してみます。

 まず、首脳コミュニケは、以下で人権について言及しています。

  1. G7が擁護する国際的な原則及び共通の価値として「普遍的人権、ジェンダー平等及び人間の尊厳」の促進に言及(パラ2)。
  2. 自由で開かれたインド太平洋の重要性について、基本的自由及び人権を守るものであると表明(パラ6)。
  3. グローバル・バリューチェーンにおける国際労働基準及び人権の尊重を確保すること、また権利保有者を引き続き保護することへのコミットメントを表明(パラ36)。
  4. 教育が人権の一つであることに留意することを明記(パラ37)。
  5. 個人データの保護及びジェンダー平等を含む人権の尊重を確保しつつ、デジタル・アクセスを拡大するための他国への支援についてのコミットメントを表明(パラ39)。
  6. 多様性、人権及び尊厳が尊重され、あらゆる人々が性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、暴力や差別を受けることなく生き生きとした人生を享受することができる社会を実現すると明記(パラ42)。
  7. 世界中の女性及び少女並びにLGBTQIA+の人々の人権と基本的自由に対するあらゆる侵害を強く非難すると明記し、国内外において、ジェンダー平等及びあらゆる多様性をもつ女性及び少女の権利を擁護し、前進させ、守ることへのコミットメントを表明(パラ43)。
  8. 世界人権宣言に示された全ての人の人権と尊厳を堅持することへのコミットメントを再確認し、人権侵害に対してしっかりと声を上げると同時に、人権を守り促進しようとする国々及び市民社会団体の声に耳を傾け支援することへのコミットメントを表明。難民及び避難民の人権及び基本的自由の完全な尊重を確保し、性的及びジェンダーに基づく暴力からの自由を含む紛争、危機及び避難により悪化した脆弱な状況に直面する人々や疎外された人々の権利擁護へのコミットメントを再確認。人権及び基本的自由への完全な尊重を確保し、「難民に関するグローバル・コンパクト」並びに国内の政策、法制度及び状況に沿った形で難民の包摂を支援することへのコミットメントを再確認(パラ45)。
  9. オンライン及びオフライン上におけるあらゆる形態のテロリズム及び暴力的過激主義、人身取引、児童の性的虐待等に対し、人権に基づきジェンダーに配慮した方法で取り組むことへの強いコミットメントを改めて表明(パラ48)。
  10. 「地域情勢」のセクションで、中国、北朝鮮、アフガニスタン、イラン、シリアの人権状況や国際人権法違反に懸念を表明(パラ51~59)。

 一方、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」には、残念ながら一度も人権という言葉は出てきません。それだけではなく、核兵器不拡散条約(NPT)、新戦略兵器削減条約(新START)、包括的核実験禁止条約(CTBT)には言及するものの、核兵器禁止条約には全く触れていません。首脳コミュニケ、核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンの双方で使われているのは「全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界の実現に向けた我々のコミットメント」であり、「全ての者にとっての安全が損なわれない形」という表現は核抑止の概念を反映しています。「核兵器を禁止する」という方向性を示す意思はG7にはないことを露わにした首脳サミットであったように思います。

 首脳コミュニケ採択を受けて、市民社会からG7への提言をおこなうC7(Civil7)の核廃絶ワーキンググループが開催した記者会見では、ワーキンググループを率いたピースボートの共同代表である川崎哲さんらとともに、被爆者であり、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)がノーベル平和賞を受賞した際に受賞講演をされたサーロー節子さんが話されました。サーローさんは、広島ビジョンからは原爆資料館を訪れたリーダーが何を感じたかが見えてこない、新しいアイデアもなく、これだけしか書けないのは死者への冒?と発言しました。また、ロシア、中国、北朝鮮、イランを非難しても、核保有国である米英仏の責任は問わない姿勢にも強い疑義を示しました。

 武力紛争・戦争は最大の人権侵害であり、暴力を克服して平和を実現するには、核廃絶、軍縮、そして非暴力の徹底が重要です。生誕130年を迎える市川房枝の「平和なくして平等なく平等なくして平和なし」という言葉も想起し、非暴力に基づいて平和を実現するために人権概念が果たすべき役割を改めて考えています。