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国際人権ひろば No.149(2020年01月発行号)

人として♥人とともに

北京+25に向けて

三輪 敦子(みわ あつこ)
ヒューライツ大阪所長

 2020年は、ジェンダー平等にとって節目の年です。1995年に北京で開催された第4回世界女性会議から25年(北京+25)、武力紛争下における女性に対する暴力の問題や平和構築プロセスへの女性の参加を謳った国連安全保障理事会決議1325号「女性と平和・安全保障」から20年、国連の女性関連4機関を統合したUN Women設立から10年にあたります。また、2030年を達成期限とするSDGs(持続可能な開発目標)は実施5年目を迎えます。

 2020年には、5月7日から8日にメキシコシティ、7月7日から10日にパリで、Generation Equality Forum(ジェンダー平等世代フォーラム)が開催されます。これらの会議に向けて、アジア太平洋地域における北京行動綱領採択後25年間の成果と課題を検討する会議が、2019年11月24日から29日にかけ、バンコクで開催されました。24日から26日の3日間が市民社会組織(CSO)によるCSOフォーラム、27日から29日の3日間が政府代表が集まる閣僚会合でした。

 35カ国から300人を超える参加者が集まったCSOフォーラムのテーマは、1日目が「怒り」、2日目が「希望」、3日目が「行動」でした。開会セッションでは、「あなたたちは、何に怒っているの?」との質問に、次々に手が上がり、それぞれの国や地域における怒りを共有しました。4つの全体会議、19のワークショップがおこなわれ、3日目には、反差別国際運動(IMADR)が、在日コリアン、アイヌ、インドのダリットの女性が参加する「マイノリティ女性」に関するワークショップを開催しました。

 CSOフォーラムで存在感を発揮していたのは、障害女性とトランスジェンダーの参加者です。会議では、手話通訳とプロジェクター上の要約筆記が必ず準備されていました。障害女性、トランスジェンダーの参加者は、積極的に発言し、自分たちの課題を投げかけていました。また、フォーラムを「安全な場所」にするための配慮も印象的でした。フォーラム中の写真撮影のルール、フォーラム中にハラスメント行為があった際に相談できるスタッフリストが参加者には配られました。

 障害女性、性的マイノリティ、ダリット女性、マイノリティ女性等、女性が多様な存在であることが常に語られていたのは、この25年間の重要な変化です。女性は一枚岩ではなく、しかも女性であることと他のアイデンティティが複合的、交差的に差別や不平等を生じさせる問題の理解は、ジェンダー平等を語る上でなくてはならないものになっています。

 CSOフォーラムの3日目には、香港における政府に対する抗議行動への支援を示すために、「#Me Too」にならい、右腕に赤い口紅で「#Protest Too」と書き、一斉に右腕を上げて支援を示すというアクションもおこなわれました。香港からの参加者の呼びかけでおこなわれたアクションでしたが、何人かの中国からの参加者が「支援はしないことになっている」「香港の人とは接点をもたないことになっている」と言いながら、黒いマスクを着けてアクションに参加していたことには感銘を受けました。

 閣僚会合では、私たちCSOはオブザーバーという立場での参加だったのですが、CSOフォーラムの運営委員会が閣僚会合の事務局や議長と交渉し、閣僚会合の開会セッションでは、CSOフォーラムの代表が壇上に上り、フォーラムでの議論をまとめた声明を発表しました。2日目のテーマ別会合では、①包摂的開発・ディーセントワーク、②女性に対する暴力、③説明責任・参加、④環境・気候変動の各セッションで、CSOの代表が声明を読み上げました。これらが可能になった背景には、閣僚会合の議長であったフィジーの大臣が、CSOとの関係を重視する人だったことが挙げられます。政府間会合であっても、誰が会議を仕切るかによって、市民の参加のレベルが格段に変わることを感じました。閣僚会合の最終日には「ジェンダー平等と女性のエンパワメントの前進に関するアジア太平洋宣言」が採択されましたが、コンセンサスではなく投票での採択となったのは異例のことでした。賛成37、反対1、反対票を投じたのはアメリカ合州国でした。

 日本と世界の状況を考えても、北京会議後の25年間は、分野によっては後退の危険にさらされた年月でした。しかし、目の前の課題に取り組むなかで、その背後に隠れ「見えていなかった問題」が「見えるようになった25年」でもあります。ヒューライツ大阪では、SDGsの分野横断的課題でもあるジェンダー平等について、2020年の1年を通じて世界の動きと日本の課題を取り上げていきます。


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