1. TOP
  2. 資料館
  3. 国際人権ひろば
  4. 国際人権ひろば No.134(2017年07月発行号)
  5. バングラデシュ:少女の家事使用人問題の現状と支援

 
Powered by Google


国際人権ひろば Archives


国際人権ひろば No.134(2017年07月発行号)

特集 世界の働く子どもたち

バングラデシュ:少女の家事使用人問題の現状と支援

マフザ・パルビン(Mahfuza Parvin)
シャプラニール ダッカ事務所 プログラム・オフィサー

 バングラデシュ憲法はすべての子どもに教育の権利を保障している。しかし現実は異なり、40パーセントの子どもたちが初等教育を中途でやめている。バングラデシュの2013年児童労働調査によれば、約170万人の子どもたちが労働に従事しており、その内、95万人が男児で75万人が女児である。2006年の労働法(2013年に改正)では14歳以下の児童の就労を禁じている。

バングラデシュの少女家事使用人

 ILO2007年報告は、バングラデシュに約421,000人の児童家事使用人がいて、その内の約80パーセントは少女であると報じている。バングラデシュ統計局が2013年に実施した児童労働の調査によれば、国内には約20万人の少女の家事使用人がいる。児童家事使用人は隠された奴隷と言ってもよい。少女たちはフルタイム(全日)かパートタイムのいずれかで雇われている。フルタイムの場合は雇い主の家に住み込み、完全に雇い主の管理下にある。そのため、少女たちは、教育、健康、遊び、安全、保護、平等な機会、参加あるいは発達の権利などの子どもの権利を奪われている。さらに、雇い主の大多数は家事使用人を自分たちの子どもと同じようには捉えていない。少女たちにも感情があり、夢があるというふうには見ていない。雇い主の大多数は、少女の家事使用人は安価な労働力であり、わずかな賃金で済むと考えている。さらに少女たちは少ししか食べないし、寝る場所もとらない、雇い主が命じたことは何でもさっさとする。雇い主は、少女の家事使用人はどの家事使用人よりも長い期間、住み込みで働いてくれると考えている。これら理由により、人びとは少女の家事使用人を雇いたがる。

親が娘を家事使用人として出す理由

 バングラデシュの農村では大半の家族が大所帯である。親には家族を養えるほどの稼ぎがない。娘は結婚したら相手の家の人間になってしまうので、それほど教育を受けさせる必要はないというのが社会通念である。バングラデシュ社会のもう一つの否定的側面は、娘が結婚するとき、村の親たちはダウリ―として相手の家に最低限の金額を支払わなくてはならない。親はその重圧から逃れたいと考える。そのため、自分たちの娘を働かせて、ダウリ―のためにお金を稼がせようとする。親は娘の意思だとか、少女としての思いだとか、子どもらしい感情については考えない。時にはブローカーから説き伏せられる親もいる。家に娘が2人以上いる場合、親はそのうちの1人あるいは2人を口減らしのために家事使用人として送る。

雇い主の家で

 大半の雇い主は、『少女は貧しい家の子であり、親はできるだけ長い間娘を働かせたいと思っている、だから少女は雇い主の望むことは何でもする』、そのように考えている。さらに、親たちは娘たちが雇い主の家でどのように働いているのか監視する術をもたない。そのため、雇い主は自分たちの思うままに家事使用人を使う。また雇い主は、少女は働くために生まれてきたと考えている。少女たちには娯楽の時間はまったくない。朝早くから夜遅くまで働く。休憩時間もない。失敗をしたら殴られることもある。少女たちは自分とあまり年の変わらない子どもたちのために働く。雇い主の子どもの荷物運びをし、服を着せる。家事使用人は家人の食事時間に食事はとれないし、食べたい物を食べることはできない。少女たちは時には危険と隣り合わせで働いている。台所には鋭利な包丁や煮え立つ湯があり、家の中にはアイロンなどの電気製品、浴槽の掃除には漂白剤がある。そして何よりも、少女たちは呼び出されたら24時間、いつでも応じなくてはならない。

12歳の住み込み家事使用人“スミ”の日課
5時30分 起床
6時~7時 家人の朝食準備
7時~8時 ベッドメーキングと掃除
8時~10時 皿洗いと台所の片付け
10時~10時30分 朝食
10時30分~12時30分 昼食準備
12時30分~1時30分 すべての部屋と台所の掃除
1時30分~2時30分 洗濯
2時30分~3時 シャワーと昼食
3時~5時 米に混じった異物(小石など)を取り除く
5時~7時 乾いた洗濯物の片付けと再び
部屋の掃除
7時~8時30分 雇い主と一緒に夕食の準備
8時30分~9時30分 雇い主の家族と一緒に夕食
9時30分~10時30分 皿洗いと台所の片付け
10時30分~11時 ベッドの周りに蚊帳を吊る
11時30分 就寝

家事使用人への暴力

 児童家事使用人は頻繁に、言葉、身体的そして性的暴力を受ける。多くの少女は雇い主の家の男性による性的嫌がらせの標的にされる。家人の男性が少女に性的関係を迫り、少女が妊娠した場合、家族に発覚しないよう少女への暴力が始まる。この3年間、少女家事使用人が受けた暴力の件数を以下のように示す。

暴力のタイプ 2014 2015 2016
身体的暴力 9 20 22
強姦 3 11 6
殺害 7 9 8
自殺/理由不明 0 13 13
合計 12 53 49

 

<情報源> バングラデシュShinshu Odhikarフォーラム(BSAF)の新聞記事分析レポート

 2017年の1月から3月まで、少なくとも、4人の8歳から14歳までの少女家事使用人が殺された。

<情報源> 少女家事使用人の声キャンペーンのフェイスブックに紹介された新聞記事切り抜き

少女家事使用人支援プロジェクトの開始

 シャプラニールはPhulki(フルキ。ベンガル語で“きらめく”という意味)という団体と、2005年11月から12月にかけて ダッカ市内の少女家事使用人の現状を明らかにする調査を行った。この調査をもとに、フルキは2006年6月から2008年3月にかけて、少女家事使用人のためのプロジェクトに取り組んだ。これは2カ所のヘルプセンターを開いて、少女家事使用人の状況と問題を把握し、必要なニーズにこたえる試験的なプロジェクトであった。15か月の試験期間を経て、少女家事使用人の雇い主の態度に肯定的な変化が起きたことが分かり、プロジェクトが重要な役割を果たしたことが確認された。その結果、試験的プロジェクトは2008年4月から2011年3月までの間、中心的な段階へと移行した。その後、フルキは2016年から第3段階に入り、アラムバーグとショバンバーグにある公務員住宅に、さらに2つの新しいセンターを開いた。シャプラニールによる少女家事使用人支援の主要な活動は以下の通りである。

― 最小限の教育

 フルキは少女家事使用人にベンガル語と英語の簡単な読み書き算数など、最小限のことを教えている。18か月のコースが終われば試験を受け、合格すれば修了証書をもらえる。これは公立小学校の2年生と同レベルの知識を得たことを示す。

― 気づきのためのアクティビティ

 少女家事使用人、とりわけ住み込みで働いている少女たちは、センターで音楽を聴いたり、絵を描いたり、その他の遊びを楽しむ。少女たちは他の子どもたちと同じように運動会や学芸会に参加できる。少女家事使用人は男性の受け入れてよい行動と受け入れてはいけない行動(すなわち、いいタッチと悪いタッチ-体に触れること)、思春期の身体の変化、月経、月経時に清潔にしておくことの重要さ、性的嫌がらせや性的虐待からいかに自己防衛するかなどについて理解するようになる。気づきのアクティビティは、定期的な家庭訪問やミーティングおよびワークショップを通して、雇い主と家事使用人の両者に対して行われ、性的、身体的そして精神的嫌がらせが起きないことを目指す。

― スキル・トレーニング

 少女たちは遊び道具、アクセサリー、積み木、小物作りを習う。バングラデシュでは裁縫はとても人気のある仕事である。そのため、少女たちは裁縫ができるようになりたいと強く望んでいる。このトレーニングは、少女たちに別の収入の手段を身につけさせることにある。

― 地域管理委員会との協力

 バングラデシュでは現在、どのコミュニティにも地域福祉のための管理委員会がある。このプロジェクトは、地域管理委員会が、地域で働く少女家事使用人を自分たちの家族の一員のように大事に扱うようにすることにある。

p8-9_ヘルプセンターのようす1.jpg

ヘルプセンターの様子
「(特活)シャプラニール=市民による海外協力の会」提供

シャプラニールの提言活動

 シャプラニールは少女家事使用人に関してパートナーNGOと協力し、ようやく1万人の家事使用人に行きつくことができた。しかし、ILOのレポートによれば、バングラデシュには42万人の少女家事使用人がいる。そのため、シャプラニールは考えを一にする団体に向けた提言キャンペーンを開始した。2013年と2014年のキャン

ペーンで他の団体につながることができた。その次に、シャプラニールは“家事使用人の権利ネットワーク”が

起草した政策の採択を目指した。2015年、政府は政策を採用し、家事使用人の総合的な福利の保障を目指し、家事を“労働”として認めた。今、シャプラニールは、政策が適切に実施されるよう提言活動をしている。

 私たちの国では雇い主は政策に従わず、自分たちの都合からものを考える。子どもとしての権利をすべて否定され、村に夢を残したまま、雇い主の家で働く年端のいかないこれら少女たちのために、私たちは何かをしなくてはならない。

 (翻訳 小森 恵)


To the page top