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国際人権ひろば No.71(2007年01月発行号)

アジア・太平洋の窓 【Part2】

韓国の働く女性の現状と未来-少子高齢化、非正規職急増の時代を迎えて

報告している崔明淑さん
報告している崔明淑さん

  ヒューライツ大阪が2006年12月11日に主催した「わいわいゼミナール」では、韓国のNGO「韓国女性民友会」共同代表 崔明淑(チェミョンスク)さんを迎え、韓国の働く女性が直面している問題や社会の現状、その解決の方策について話を伺った。韓国女性民友会は、2007年結成20周年を迎える韓国の代表的なNGO団体であるが、この団体が一貫してこだわってきたことは、「生活の中からの課題を」である。参加した人たちは、韓国の現在の働く女性に関する統計や状況が日本と共通している点を発見しつつ、韓国の女性NGOが働く女性たちと道を切り開き、人権擁護のための法制定・改正を実現させてきたことを学んだ。以下、当日の報告の概要を紹介する。

(構成:ヒューライツ大阪 朴君愛)

■統計で見る韓国の女性の現状


  経済的な基準で見ると、韓国の女性の地位は、男性に比べて相当に低い(下記の表参照)。また女性が子育ての時期に仕事を辞め、その後再び働くという、グラフで表すと「M字型」の労働力人口比率になっている点も従来から変わらない。2006年11月に発表された「世界経済フォーラム」(WEF)の国別男女格差では、韓国は、114カ国中92位であった(日本は79位)。女性は高学歴化が進む一方、実際の生活の質は低い状態にある。

女性の労働に関する韓国と日本の比較
  韓国 日本
女性の労働力人口比率 50.1%(男性は74.6%) 48.4%(男性73.3%)
女性の賃金 男性の62.6% 男性の67.1%
年齢別女性の労働力人口比率 20代後半:66.1%
30-34歳:50.2%
20代後半:74.9%
30-34歳:62.7%
女性の就業者中、専門職・管理職 17.5% 18.3%
出典:韓国「統計庁資料」(2006)、日本「総務省『労働力調査(速報)平成17年結果』」

■女性運動のこれまでの歩み


  韓国の女性の人権擁護の運動の歴史で、大きな節目となったのが1987年である。同年6月の「民主化抗争」が軍事独裁政権を終結させることになるが、前後して労働運動が盛りあがり、多くの労働組合が結成された。この時からホワイトカラー層も自分たちが「労働者」であると自覚し、運動に参加することになる。また女性たちも労働組合を作り、そこに参加する中で、労働運動において大きな役割を果たしていく。まず女性をとりまく問題について労働組合を通じて変えようとした。
  当時、女性は結婚・妊娠すると退職せざるをえなかった。それが大きな課題であったが、1987年に「男女雇用平等法」の制定を実現させたことによって、企業側もこの慣行を存続できないと判断し、徐々に改善されていった。その次が待遇や昇進問題であった。男女が異なる給与体系になっていたが、特に金融関係では同一労働で男女給与格差があったため、女性の側が訴訟を起したり、行政に問題提起するなど多様な働きかけを行った。こうした結果、90年代に入って同一労働について給与格差がなくなった。併せて、身長や体重などの容貌を条件にした求人募集や職場のセクハラを禁止するための法整備を求めていった。この間、韓国の人事・雇用に関する法整備は、先行していた日本の法制度を積極的に取り入れていった。一方、企業は男女雇用平等法の適用から巧妙に逃れようとしていた。そこで女性運動側は、間接差別(直接、女性を差別・排除する規定がないが結果として女性が不利な状況に置かれる)に対する規制を求めた。企業側はこうした規制を強化すると経営が成り立たないと反対したが、1999年、男女雇用平等法に間接差別の概念が盛り込まれた。

■女性の非正規職化と「非正規関連法」の制定・改定


  こうした前進にもかかわらず、1990年代後半のアジア通貨危機が韓国を直撃し、女性労働者が大量に解雇されるという事態がおこった。その後のグローバリゼーションや新自由主義の拡がりによって、韓国社会はこの問題に対処できないでいる。正規職(正社員)ではない、非正規職(有期契約職、パート労働、派遣労働)の女性が増えている。韓国労働部(省)の統計(2006年8月)では全体の賃金労働者(1,535万人)の3分の1を非正規職が占め、月平均賃金は、正規職の62.8%である。そして女性の賃金労働者における非正職比率は67.6%に達している。
  こうした正規職と非正規職の格差は深刻であるが、非正規職に関連する法律の制定と改定が、2006年11月30日に行われた。「期間制(契約)及びパート労働者保護等に関する法律」が制定され、派遣勤労者保護等に関する法律改定、労働委員会法改定が国会を通過した。主な内容を挙げると、1)非正規職への不合理な差別待遇を禁止し、労働委員会で差別是正のための制度を整備する。2)契約職の総使用期間を2年に制限し、超えると正規職とみなす。3)パート労働者の超過労働時間を週12時間に制限。4)派遣業務は、現行26職種に限るという限定列挙(ポジティブ)方式を維持するが、現実に合うよう拡大・調整する方向(大統領令で定める)。5)法違反の派遣業務でも2年後に雇用義務が企業に生じる。
  過去2年にわたり、労働界や女性団体は、この法案に反対してきた。問題点は次のとおりである。
1)非正規職を使用する事由を制限しなければ、非正規職の減少や雇用不安の改善につながらない。却って契約職員が2年以内に解雇されたり、短期雇用で人を替え雇用する可能性が高い。
2)2年後の契約職員の雇用義務化は、現行の基本法にある「雇用擬制」制度(法的にすでに雇用契約関係が結ばれたとみなす規定)よりも後退し、かつ義務を履行しない企業は過料で済む。
3)不合理な差別に対する基準が明確でないため、効果が期待できない。そして今回成立した政府案に対し、経営者側は、企業経営に負担になるとして反対している。

■少子(低出産)高齢化時代の女性の生活


  女性のみならず韓国社会全体で「小子化」が問題になっている。また高齢化社会も急速に進んでいる(2005年の65歳以上人口 9.1%、日本は19.5%)。2016年時点で、15歳~64歳の生産可能人口が急激に減少すると予想されている。
  これによって女性の生活がどう変わるのかが議論になっているが、逆に性別役割が強化されるのではないかという憂慮もある。2005年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯平均何人の子どもを産むかの推計)は1.08である(日本は1.26)である。1970年が4.53であるから急激な少子化である。結婚しない女性が増え、子どもがいる家庭も子どもの数は少ない。塾など私的な教育費の負担が世界有数であるという指摘もあるが、一番の問題は、育児と仕事を両立させる社会的インフラの未整備だ。この状況で、女性たちは人生設計において出産を回避しようとしている。韓国でもいくつかの少子化対策が取られているがあまり効果がない。その一例が子どもの数によって税金や住宅取得を有利にするというインセンティブである。
  少子化への根本的な解決は、性別分業の解消、女性の労働参加率引上げのための方策、そして「ディーセント・ワーク」(権利が保護され、充分な収入が得られ、適切な社会保護が与えられた適切な仕事)が実現する就労場所の確保であると考えている。また家事や育児に対する社会の枠組みの変化が必要である。
  韓国では、少子化問題と高齢化問題をひとまとめにして議論されている。出生率を上げることに政策が集中し、高齢化社会への対処をあまり考えていない。高齢者の中の女性の割合は非常に多い。高齢化問題でもジェンダーの視点が入ったアプローチが必要である。また労働現場では若者や男性が中心になっているが、ここに高齢者も女性ももっと参加すべきである。こうしたバランスの取れた社会をどう築くことができるのかが課題である。
  こうした問題に対し、韓国女性民友会では、「労働とは何か」の再定義の必要性を感じている。現代の労働の概念は20世紀に作られたものであり、21世紀にふさわしい概念をどう考えるのか私たちも悩んでいるところだ。既に、少子高齢社会を迎えた日本の経験に学ぶものが多いので、日韓で経験の交流と議論を一層深めたい。

韓国女性民友会
  1987年設立。本部はソウルにあり、全国に11の支部と付属機関として性暴力相談所、メディア活動本部、生活協同組合がある。雇用平等、DV、環境問題、メディア改革をはじめ女性の人権向上をめざした幅広い活動を展開している。