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国際人権ひろば No.67(2006年05月発行号)

アジア・太平洋の窓 Part3

東南アジアにおける「人身売買された子どもの権利保護のためのガイドライン」の策定に向けて

藤本 伸樹 (ふじもと のぶき) ヒューライツ大阪研究員

■ 東南アジアのNGOの取り組み


  東南アジア地域における子どもの人身売買の撤廃をめざして活動しているNGOネットワークの「アジア・アクト」[注1]が、国際NGOのTerre des Hommesオランダおよびドイツ事務所、日本財団の協力のもと、2006年3月20日から24日までタイのバンコクで「人身売買の被害を受けた子どもの権利保護のための東南アジア・ガイドラインに関するセミナー・ワークショップ」を開催した。
  地元のタイをはじめ、インドネシア、フィリピン、カンボジア、ラオス、ベトナム、ビルマ(在タイの難民コミュニティ)において活動しているネットワーク内の中心的なNGOおよび政府関係者、それにオブザーバーとしてバングラデシュ、ネパール、日本、オランダからNGO関係者などを含めて55人が参加した。
  5日間という長丁場のワークショップは、大別して三通りのプログラムで構成されていた。
  一つめは助言者によるあらゆる形態の性的搾取から子どもを保護するために採択された国際文書、および国際的、国際地域的なメカニズムについての解説であった。国際的には、1996年にストックホルムにおいて開催された「児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」で採択された「宣言」[注2]、2001年の横浜での「第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」で採択された「横浜グローバル・コミットメント2001」[注3]、国際組織犯罪防止条約を補完する「人身売買禁止議定書」[注4](2000年)、国連人権高等弁務官が発表した「人権および人身売買に関して奨励される原則および指針」[注5](2002年)などの条約・基準が紹介された。
  一方、東南アジアではまだ地域をカバーする人権機構や基準が存在していないなか、NGOの積極的な働きかけを受けて、東南アジア諸国連合(ASEAN)では徐々に人権保障メカニズムの創設を含むASEAN共同体の構築に向けた話し合いが行われている。2004年11月にラオスのビエンチャンで開催された第10回ASEAN首脳会議において、「とりわけ女性と子どもの人身売買に反対するASEAN宣言」[注6]が採択され地域共通の課題認識となっている。その動向が助言者から報告された。
  このワークショップとほぼ同時期に、関連した国際会議が同じバンコク市内で開かれており、参加者の一部は二つの会議に顔を出していた(本誌p16参照)。

■ 共通の「ガイドライン」づくり


  二つめは、各国の取り組みの報告であった。なかでも、フィリピン、タイ、インドネシア、ベトナムのNGOは、すでに作成している、あるいはその最中の「人身売買の被害を受けた子どもの保護に関する国内ガイドライン」に関する作成プロセスを報告した。これを受けて参加者から内容に関する質問やコメントが出された。
  三つめが東南アジアにおける共通のガイドラインを発展させることであった。この課題が、ワークショップの主目的であった。これは、ユニセフが2003年に策定した「東南ヨーロッパのガイドライン」を参考にして、共同の取り組みとして「東南アジアのガイドライン」の策定に着手した取り組みだ。
  既存の人権基準に基づき、人身売買をされた子どもの権利を保護するために、いかにアプローチをし、保護やケアを行うこと、司法手続きへのアクセス、また被害者の子どもに対するサービス提供者の人材育成や保護のプログラムを具体的に提唱した内容である。
  「アジア・アクト」では2004年以来、このガイドラインの作成に取り組んでいるが、完成するまではもう少し議論を必要とするものの、今回のワークショップでさらなるバージョンアップ版にいたる議論が行われたのである。

■ 求められるASEAN諸国への働きかけ


  「アジア・アクト」は、インドネシア、フィリピン、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、ビルマ(在タイの難民コミュニティ)において子どもの人身売買問題に取り組むNGOの国際地域ネットワークで、事務局をマニラに置いている。活動の目的は、ASEAN諸国に対して、(1)国内法の制定および国際人権条約の批准、(2)子どもの保護とリハビリのための地域的メカニズムを創設すること、(3)被害を受けた子どもの保護・帰国・リハビリのための二国間あるいは国際協力を推進する、(4)貧困削減やコミュニティの啓発活動による予防策の実施、(5)加害者を訴追するための国内および国際的な捜査協力の実行、などを通じて人身売買された子どもの人権保障のために迅速に人権基準を実施することを求めている。
  そうした活動のなかで、東南アジア全域で10,000の村(コミュニティ)を目標に、予防、監視、被害者の救出と回復、社会復帰など子どもを保護するためのアクションを草の根レベルで学ぶためのワークショップを積み重ねているのが特徴である。10,000村は東南アジア全体の5%に過ぎないが、そこでの成果が東南アジア全域に連鎖・拡大していくという考えに基づいている。
  そのような「アジア・アクト」の取り組みが、ASEAN地域の政府関係者をもっと巻き込み、「ASEAN人権保障メカニズムのためのワーキング・グループ」と協働しながら、ASEAN首脳会議への働きかけを強化していくことが今後の課題ではなかろうか。

注1:アジア・アクト Asia Against Child Trafficking (Asia Acts)(英語)
注2:外務省 http://www.mofa.go.jp /mofaj/gaiko/jido/96/
注3:外務省 http://www.mofa.go.jp /mofaj/gaiko/csec01/global_comm.html
注4:外務省 http://www.mofa.go.jp /mofaj/gaiko/treaty/pdfs/treaty162_1a.pdf
注5:反差別国際運動(IMADR) http://www.imadr.org/japan /petw/unhchr.trafficking.040815.pdf
注6:ASEAN事務局 http://www.aseansec.org/16794.htm(英語)

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