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国際人権ひろば No.64(2005年11月発行号)

現代国際人権考

労働運動の再生と活性化

伊東 文生 (いとう ふみお)
日本労働組合総連合会大阪府連合会(連合大阪)会長・ヒューライツ大阪理事

今日的状況と課題


  21世紀という新世紀を希望を持って迎え、早くも5年が経過しようとしている。しかし、働く者や働く者の組織である労働組合を取り巻く状況は、経済のグローバル化のもと小泉政権下における経済優先の無原則な規制緩和等により、先進国のなかでも急速に格差が拡大し2極化が進んだ日本社会となってしまった。言わば少数の勝ち組と多くの負け組とに分化されるなか、否応なく負け組に組み込まれた人々の生活の安全保障が破壊されつつあるのである。

労働運動と労働組合の課題


  このような状況のなかで、連合大阪は労働運動=人権運動であるとの認識のもと、この21世紀社会において「労働を中心とする福祉型社会」を実現させるという運動ビジョンを掲げ日々の運動推進を行っている。
  だが現実的課題としては、産業構造の変化や規制緩和によりパートタイム労働者、派遣労働者、契約社員、請負業等の不安定雇用労働者が急速に増加するなどの雇用構造の大きな変化により、労働組合の組織率は19.2%に低下し依然として組織率低下に歯止めがかけられない状況となっている。
  第2には、社会変化に合わせた構造改革の必要性が高まるなか、先の第44回衆議院議員選挙を中心に労働組合は改革に反対する抵抗勢力とのネガティブキャンペーンがなされ、極めて正しくないレッテルが貼られてしまったこと。
  第3には日本の労働組合は企業内組合を中心とした運動が、今日の日本経済の発展を始め成果を挙げてきたが、今後は働く者の雇用と生活を守るためには単に企業内での運動だけでは守りきれないという一定の限界が生じていること。
  以上のような運動と組織両面において多くの課題が現出しているのである。

労働運動の再生・活性化の視点


  連合・連合大阪は2005年10月に開催した定期大会において「組合が変わる、社会を変える?つくろう格差のない社会 職場・地域から」をスローガンとした向う2年間の運動方針を決定し、課題に挑戦し労働運動の再生と活性化を図るための力強い運動のスタートをきった。
  運動の柱の第1は、組合づくりである。2極化社会のなかで、中小零細企業で働いている人たちを中心に解雇や労働条件を巡る個別紛争が増加している。
  このような問題を未然に防止するためには、労働組合を作ることが最大のセーフティネットとなる。具体的には大手企業の系列企業、子会社などをターゲットに労働組合がない企業で労働組合をつくる、一人でも入れる労働組合に不安定雇用労働者の加入を促進する、大企業で働いている不安定雇用労働者の組合員化を大手組合が取り組むことなどを攻め口に積極的な組合づくりに取り組むことである。
  第2は、働く者の目線で取り組んでいる労働運動について、多くの国民や府民の理解を得るため、あらゆる手立てによる啓発の拡充を行い、「労働組合は働く者の味方」として運動や組織への世論喚起と糾合を図ることである。
  第3は、高齢者、女性、若者、障害者などの就職や就労に援助を必要とする人たちも含めた雇用対策の強化である。連合大阪は今日まで大阪雇用対策会議(大阪労働局・大阪府・大阪市・関西経営者協会・連合大阪で構成)を軸にした雇用対策の推進を図ってきているが、継続した取り組みの推進を行うことである。

結語


  労働組合が社会のカウンターパワーとして最大の力を発揮することが、働く者が笑顔で暮らせる社会を実現させる最大の近道である。
  日本は、先進国のなかでも労働組合のリーダーの人権が侵されず、労働組合の組織や運動が法律で保障されている恵まれた国である。
  この恵まれた環境を活かし成果を挙げることが、私たちリーダーの責務であることを自覚しなければならないと考えている。