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国際人権ひろば No.57(2004年09月発行号)

特集1:ヒューライツ大阪10周年記念事業 Part2

国際人権教材奨励事業アウォード2004選考結果の報告

畑 祥雄 (はた よしお) アウォード2004選考委員長

■ アウォード2004のねらい


  私はヒューライツ大阪では企画運営委員として設立の時からこの活動に参加をさせていただいております。10周年をステップにヒューライツ大阪がアジア・太平洋地域及び世界にどのように貢献していくのか、企画運営委員会でいろいろと意見を語り合い、この国際人権教材奨励事業「アウォード2004」というものを企画しようということに決まりました。
  ヒューライツ大阪の10年というのは、どちらかというと研究者の方たちを中心に国連の人権活動や人権NGOの活動についての情報収集や研究活動を続けていたわけです。その成果は様々な出版物や研究報告書の形で取りまとめられていますが、これらが実際の市民社会の中にきちっと活かされているのだろうかと考えると、大きな課題が横たわっているといえます。「国際人権は、分かりにくく難しい」、「どう教えていいのか分からない」、「身近な問題ではない」などという声も多くあります。優れた研究の成果をいかに次の世代の人たちにも伝えていくかといった時に、やはり教育ということがとても大事だということになります。けれども、教育というのは単に教える人の情熱・熱意それだけで何とかなるものではありません。優れた研究の成果と、そして熱い思いを持った教える人と、この二つが揃ったとしても、もう一つ教材としての工夫がないと、教育や学習活動はうまくいきません。この三つ、すなわち優れた研究成果と、熱い思いをもってそれを伝えていこうとする教える人、そして教える人の道具となるような工夫された教材、そういったものをきちっと揃えることがこれからの私たちヒューライツ大阪の一つの大きな役割なのではないのかなといったことになりました。

■ アウォード2004の応募状況と選考経過


  今回の「アウォード2004」には、日本も含めて、アジア・太平洋地域の11カ国から150以上の作品が集まって来ました。選考委員会は、ここに至るまで3日間かけて約12時間にわたって選考作業をいたしました。選考委員会は、ジェンダーバランスにも配慮して男性が3人、女性が4人の計7名で構成されております。また、国際的な視野で選考するため、フィリピン、韓国、それからタイの方たちにも選考委員に入っていただきました。選考委員会では、ビデオやパワーポイントのスライドショーなどの映像作品や出版物など約150作品を委員7名全員が一緒に鑑賞して意見交換しました。また、なにが国際人権の教材としてふさわしいか、国際的な視野から選ぶ際の基準は何かなどについて議論をして、最終選考作品を10に絞り込み、最終的に4つの作品を選ばせていただき、アウォードを授与することになりました。4つの受賞作品には、順位はありません。4つとも全部同等の値にするものだということになっております。
  アウォードは初めてのことなので、選考基準づくりに苦労しました。まず、既存の研究の翻訳本であるとか、研究者の報告書などは重要な内容がたくさん盛り込まれているが、教材として教室や様々な学習の場で、特に子どもたちにどのように伝える工夫がなされているかといった観点から選考作業を進めました。また、プロとアマでは技術の差がありますが、作品から何が伝わるのかといった観点からも選考しました。技巧的にいかにうまくまとめられていたとしても、それがサラサラッと滑っていくものよりも、つくり方が非常にギクシャクとしていて荒削りであったとしても、それがかえって子どもたちやたくさんの人々の琴線にふれるといったことも考えて、選ばせていただきました。

■ アウォードの今後に期待するもの


  このような「アウォード2004」の1年目での選考結果を踏まえて、この賞が2年目、3年目、そして5年、10年というふうに続いていくといったことが、とても大事なことかなと思います。ヒューライツ大阪の20周年には、このアウォードが10回の受賞者を迎えているわけで、世界、特にアジア地域の中で、国際人権についての理解を深める人権教育の教材としてさまざまな言語に翻訳をされ提供されていく、そういう姿に成長していけたらいいかなと思っております。そのためには、このアウォードをみなさんとともに育てていく必要があります。単に賞を出すということだけではなしに、この賞を取られた作品・教材が世界、とりわけアジアの教室の中で、社会教育活動の中で、教材としていかに使われていくのかが、このアウォードのとても大事な役割だと思っております。

受賞者と受賞作品
◆ HREP ズルフィカール・アリ所長 (Mr. Zulfiqar Ali, Director of HREP)
[作品]Training Programme (Teacher's Manual 5セット)
・作品区分 = 出版物(英語)
・応募者 = HREP(Human Rights Education Programme; パキスタン)
・作品の特徴 = 教育関係者向けのトレーニング・プログラム集。体系的で使いやすい工夫がなされた出来ばえ。

◆ 開発教育協会 岩崎裕保・副代表理事
[作品]「ワークショップ版・世界がもし100人の村だったら」
・作品区分 = 出版物(日本語)
・応募者 = 開発教育協会(DEAR)
・作品の特徴 = ベストセラーとなった『世界がもし100人の村だったら』をベースに、参加体験型のワークショップで学ぶためのプログラム集。

◆ 毎日新聞社 山崎一樹・編集局次長
[作品]「今、子どもたちは...難民教材ビデオ」(ビデオ21分)
・作品区分 = VHSビデオ(日本語)
・応募者 = 毎日新聞社
・作品の特徴 = 毎日新聞の記者が現地取材をもとに学校に出かけ出前講演をする姿と、記者がみたアフリカのシエラレオネとアフガニスタンの難民たちの姿を伝えるドキュメンタリー。

◆ 宇田有三
[作品]「ゴミに暮らす人びと」(スライド・ショー15分)
・作品区分 = パワーポイント作品(日本語キャプション)
・応募者 = 宇田有三(写真家)
・作品の特徴 = 中南米とアジアの各国のごみ捨て場で生きる人々の写真と的確なコメントで構成されたスライドショー。

国際人権教材アウォード2004選考委員会の委員
選考委員長畑 祥雄(関西学院大学総合政策学部教授)
選考委員津田ヨランダ(神戸女学院大学助教授)
チョン・カンジャ(韓国女性民友会共同代表)
畑 律江(毎日新聞大阪本社編集委員)
松尾カニタ(FM CO・CO・LOプログラム・スタッフ)
武者小路公秀(財団法人アジア・太平洋人権情報センター会長)
川島慶雄(財団法人アジア・太平洋人権情報センター所長)