1. TOP
  2. 資料館
  3. 国際人権ひろば
  4. 国際人権ひろば No.51(2003年09月発行号)
  5. 大阪から軍縮・平和を発信 -国連軍縮大阪会議

 
Powered by Google


国際人権ひろば Archives


国際人権ひろば No.51(2003年09月発行号)

国連ウオッチ

大阪から軍縮・平和を発信 -国連軍縮大阪会議

黒沢満 (くろさわ みつる) 大阪大学教授

会議の特徴と内容


 8月19日から22日にかけて、大阪国際交流センターにて国連軍縮会議が開催され、世界の18カ国から55人が参加し、軍縮・平和に関する議論が広く展開された。この国連軍縮会議は、1988年の第3回国連軍縮特別総会で竹下登総理が提案し、その後毎年日本で開催されている会議である。これまで、京都、仙台、広島、長崎、札幌、秋田、金沢で開かれ、今回第15回目の会議が初めて大阪で開催された。
 会議は国連の軍縮局とアジア太平洋平和軍縮センターが主催し、外務省と大阪市が協力している。会議の特徴は、政府の代表だけでなく、国際機関の職員、研究者、平和運動家、ジャーナリストなどが一堂に会して議論を行うところにあり、多彩な人物が軍縮を議論するユニークなフォーラムとなっている。
 今回の会議は、「軍縮とその将来」というテーマの下で、4つの全体会議が開かれた。第1は、「現在の安全保障」であり、国連の役割やテロと大量破壊兵器の問題、さらに核不拡散体制の新しい課題が議論された。第2は「大量破壊兵器の拡散」として、核軍縮の停滞状況、非核兵器地帯の設置、包括的核実験禁止条約の未発効、核不拡散条約と核軍縮の関連、さらに生物化学兵器の実施状況が議論された。第3は、「その他の軍縮問題」として、小型武器など通常兵器について議論がなされ、第4は「暴力の文化から平和の文化へ」として、軍縮・不拡散教育の重要性が議論された。

軍縮の展望


 今回の議論を大きくまとめると以下の2つに集約される。1つは、短期的な展望として、米国ブッシュ政権が誕生し、9.11テロがあり、イラク戦争が行われるといった現状において、軍縮をいかに進めるかという問題である。米国が国際法や国連を重視しないで、軍事力を前面に押し出し、また自国の短期的な利益に従って、単独主義的に行動しているという現在の状況は、軍縮に逆行する方向に進んでいる。
 米国とロシアは戦略攻撃力削減条約(モスクワ条約)を締結し、2012年末までに実戦配備の戦略核弾頭を約3分の2削減することに合意し、米ロの戦略的レベルでは核兵器は削減されていると言える。しかし、米国にとっての新たな脅威であるとする「ならず者国家」やテロリストに対応するために、米国は新たな小型核兵器の開発、そのための核実験の再開などを示唆しており、核兵器が使用される可能性も増大している。
 軍縮分野では、包括的核実験禁止条約の発効、生物兵器の検証議定書などさまざまなところで米国の反対に遭遇して進展が見られない状況となっている。この短期的な逆境状況をどう克服していくかという点に関して、また北朝鮮やイランにどう対応するかなどさまざまな問題が議論された。

軍縮・不拡散教育


 もう1つは、長期的な展望として、軍縮を進めるためには教育が不可欠であるという認識に基づき、それをどう実施していくかという問題である。国連総会決議に基づき、2年間の研究の後、国連事務総長が昨年の国連総会に「軍縮・不拡散教育」に関する報告書を提出した。これは、軍縮・不拡散の進展のために、国連、その他の国際機関、国家、地方自治体、NGOなどが軍縮教育に積極的に取り組むことを勧告しており、今回の会議もそれに応える最初の機会として位置付けられた。
 会議では、国連報告書に参加した3人の専門家からその内容、および日本の取り組みなどが紹介され、また宗教家や長崎での実践も報告された。特筆すべきことは、この会議において、「軍縮教育セミナー」が開催され、約50名の大阪市の小学校・中学校・高等学校の教員が参加し、世界の専門家と質疑応答を通じて、軍縮・不拡散教育についての理解を深めたことである。
 そこでは、軍縮教育と平和教育の関連が議論されるとともに、実際に広島を訪問したり、各学校で実践されている平和教育の実状が報告された。また戦争と平和に関する国際社会の動きを客観的に把握することのむずかしさ、あるいは情報の意図的操作への対応などが提起され、批判的な姿勢の必要性などが強調された。
 このセミナーは、国連、外務省、大阪市の共催であり、それぞれにとって報告書が出された後の最初の試みであり、きわめて有益なものであったと思われる。

平和と人権


 この国連軍縮大阪会議の関連事業として、8月17日にピースおおさかにて「平和と人権-大阪からの発信」が開催された。これは、ピースおおさか、リバティおおさか、ヒューライツ大阪の3館の主催によるもので、3館主催は初めての試みである。武者小路公秀先生の「軍縮と人間の安全保障」の講演があり、反テロ戦争下で核兵器が使用される可能性があり、非核兵器地帯など人間の安全保障の側面から核廃絶を進めるとともに、武力不行使の原則に基づき人権・人間の発展を目指すこと、平和的生存権を推進することなどが主張された。
 その後、武者小路先生と3館の館長・所長とのトークがあり、「共同アピール」が採択された。大阪で平和と人権に関わる組織が共同でこのような機会を設けられたことは、画期的なことであり、大阪の人々の平和や人権に関する意識を高めると共に、大阪から世界に向けて発信していくことが、今後とも重要な課題となるであろう。

むすび


 戦争が起これば、さまざまな側面で人権が大きく侵害され、また環境も破壊される。また軍事力を背景として政治を行うようになると、人々の自由は制限され、社会的に弱い者に対してさまざまな不利益が降りかかる。軍縮の問題は単に軍備を縮小し、撤廃するということではなく、軍事力によらないで平和を維持することを目指している。それは「力の支配」ではなく「法の支配」であり、人間の安全保障を促進することでもある。
 この会議から直接出てくる今後の課題は、「軍縮・不拡散教育」を大阪においてどのように推進していくかという課題であり、さらに一般化して言うならば、軍縮、人権など平和的生存権を基礎として、世界平和を追求する努力をいっそう強める必要があるということである。
 今回、国連軍縮会議が大阪で開催されたこと、またそれを契機に大阪の平和・人権に関する3館が共同で主催するフォーラムを開催したことは、大阪の平和・人権運動の中で画期的なものであったと考えられる。3館の共同事業をさらに推進すること、国連軍縮会議を5年先にもう一度大阪に誘致することが必要である。

→平和と人権-大阪からの発信 8.17 共同アピール

To the page top