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国際人権ひろば No.47(2003年01月発行号)

国連ウオッチ

アジアのNGOと国連のネットワークを強めた 「アジア市民社会フォーラム2002」

藤本 伸樹 (ふじもと のぶき) ヒューライツ大阪研究員

 アジア地域で人権および持続可能な発展の分野で活動する非政府組織(NGO)と国連機関とのパートナーシップを深め、地域から世界レベルに至る民主的統治を促進していくことを目指して、02年12月9日から13日までタイのバンコクにある国連会議センターで「アジア市民社会フォーラム2002」(ACSF)が開催された。この会議は、ジュネーブを拠点に活動する「国連との協議資格を有するNGO連絡会議」(CONGO)が主催し、「人権と発展のためのフォーラム・エイシャ」などタイの7つのNGOが受け入れを担ったもので、アジアのNGOをはじめ人権高等弁務官事務所、ユネスコ、ユニセフ、アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)などの国連機関、政府機関などにも呼びかけられ、5日間を通して33カ国から500人を超える参加者があった。

多様なアジアでの共通課題-人権・平和・環境


 フォーラムは、大別して全体会とテーマ別ワークショップで構成されていた。全体会では国連システムの説明およびNGOとの関わりや役割、人権や環境をめぐる主要な課題について国連およびNGOサイドから報告などが行われた。
 テーマ別ワークショップは、グローバル化と経済的・社会的・文化的権利、先住民族およびマイノリティの権利、ジェンダー、国内人権機関、企業の社会的責任、人権・持続可能な発展・環境のための教育的アプローチなど多岐に渡るテーマで報告や討論が行われた。
 最終日の全体会では、文化や宗教が多様で、経済規模、政治システムが異なる国々からなるアジア地域においても、このフォーラムを通して人権や平和、環境保護などの目標に向かって、共通の関心事項や願いを確認し、連帯をどう強化するかといった議論を持つことができたと評価するとともに、今後も国連とNGOとの真のパートナーシップの構築などを促す23項目からなる声明を採択した。
 また、フォーラムは、各国政府が人権諸条約を完全批准し実施するよう求めるとともに、2000年の国連ミレニアム総会で採択された「ミレニアム開発目標」(MDG)の具体化のために各国政府、国連、市民社会による民主的統治および参加を呼びかけるアクションのためのガイドラインを提案した。MDGとは、極貧や飢餓に苦しむ人々を半減する、初等教育の完全実現、女性のエンパワーと男女平等の促進など8つの目標を2015年までに実現することをめざして設定されたものである。
 さらに、01年の「国連反人種主義・差別撤廃世界会議」(南アフリカ・ダーバン)、02年の「持続可能な開発のための世界首脳会議」(同・ヨハネスブルグ)での宣言・行動計画など、とりわけ近年の国連会議で合意された採択文書の具体化のために、アジアのすべての政府、国連、市民社会のそれぞれに具体的なアクションを求めている。

東北アジアでのフォローアップ


 この「アジア市民社会フォーラム」は、2000年5月にニューヨークで開催されたNGOミレニアム・フォーラムで合意をみた「アクションのための人々のミレニアム・フォーラム宣言と課題」のなかで「地球市民社会フォーラム」の創設が提唱されているが、その第一歩としてアジア地域で開かれたのであった。
 フォーラムの閉会を前に、今後の活動について東北アジア、東南アジア、南アジアの3つの小地域ごとに意見交換をするためのワークショップが行われた。これを受けて、韓国のNGOグループはフォーラムのフォローアップとして、03年11月をめどにソウルで「東北アジア市民社会フォーラム」(仮)の開催を提案している。
 韓国のNGOは人権や教育および環境分野から40人以上が参加しており、開催地のタイを除けば出身国・地域別では最大グループであった。ちなみに日本からは約10人であった。

草の根と国連をつなぐために


 今回の会議の目的は、(1)国連に対して政策提言を行っているアジア地域のNGO間の協力と連帯を促進する、(2)国連とNGOとのパートナーシップに関してNGO間で対話や議論の場を提供する、(3)国連会議における合意を政府が確実に履行するようNGOが監視し働きかけを行っていく際の戦略開発などであった。
 確かに、目的に即した形で国連諸機関の積極的な協力を得て多くの参加者のもと、活発な議論や情報交換が行われた。とりわけ、01年の「9.11事件」、そして02年10月のバリ島での爆弾事件以降、アジアの多くの政府が「テロ対策」の一環として権利を制限したり、従来から存在じたいが批判の的となってきた「国内治安法」をさらに正当化したり濫用したりするようになったという懸念や批判が高まっているなかだけに、人権の実現に向けたNGOの能力開発やネットワークの強化が図られた意義は大きい。
 しかし、今回のフォーラムを通じて、アジア各地域の草の根で活動する人々と、国連の人権や環境活動との距離をどれだけ近づけることができただろうか。例えば、どこかの地域で「開発」による強制立ち退きに対して居住権を守ろうとする人々が、国連の人権活動や国際人権文書を背景にして闘うには、まだいくつもの理解と行動のためのプロセスが必要なようだ。
 インドネシアのスラムの住民組織からやってきた女性と話すと、「参加しているNGOの多くは、草の根の代表だとの立場で発言しています。その報告は、確かに洗練され学ぶことも多いけれど、ここでの話が実際に私たちの直面する草の根レベルの現実にどう関わってくるのでしょうか。議論の内容に距離を感じます」と感想を語った。
 フォーラムに参加して、草の根と国連の人権活動を具体的につなぐというテーマは、国際人権基準の実施を推進するNGOやNPOにとって不可欠な課題ではないかとあらためて想い起こした。
(参照:アジア市民社会フォーラム http://www.acsf.net/

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