MENU

ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
交流ハブをめざします

  1. TOP
  2. 資料館
  3. 国際人権ひろば
  4. 国際人権ひろば No.42(2002年03月発行号)
  5. CODE(海外災害援助市民センター)の目指すもの

国際人権ひろば サイト内検索

 

Powered by Google


国際人権ひろば Archives


国際人権ひろば No.42(2002年03月発行号)

現代国際人権考

CODE(海外災害援助市民センター)の目指すもの

芹田 健太郎(せりた けんたろう)
CODE代表・神戸大学大学院国際協力研究科教授・ヒューライツ大阪評議員

 私たちCODEは阪神淡路大震災七周年を期してセンターを立ち上げました。「私たちCODE」という表現には違和感があることと思います。英語ではWe are CODE. We are "Citizens towards Overseas Disaster Emergency" と言います。つまり、「私たちは海外災害緊急事態に向かって立ち上がる市民たちです」。と同時に、CODEは一九九五年一月十七日に発生した大震災の被災当事者をはじめとし、その後、復旧・復興・減災に立ち向かう市民・学者・ジャーナリスト・企業・行政・国際機関・NGOなどの幅広い"市民"が集まる核となる場です。一月二十八日の発足式には、井戸敏三兵庫県知事、林同春神戸華僑総会名誉会長が来賓として挨拶に立ちました。CODE副代表には専門の大学教授と神戸YMCA総主事がはいり、ガイドライン・支援プログラム・人材育成・資金調達の各部会長には各NGOから代表が就いています。

 さて、CODEの原点は、痛みの共有です。つまり、他人事ならずの精神です。私たちは阪神淡路大震災の四ヵ月後の五月二十八日に発生したマグニチュード七・六のサハリン大震災を他人事とは思えませんでした。寸断されたJRが三宮までつながり一ヵ月半ばかりたったところでした。それでも、大変な生活の中、誰言うとなく、サハリンの人びとに手を差し伸べることになりました。痛みを私たちはサハリンの人たちと共有していたのです。募金総額は一千万円にも達しました。これを必要な物資に変え、その人たちの手元に届けたのです。翌年には中国雲南省でマグニチュード七の大地震が起きました。募金総額は二千五百万円に達し、物資を届けるとともに、神戸華僑総会の祖国支援をバックアップし、小学校の建設を行いました。小学生を含め、人の行き来があります。こうして私たちの現在までの二十六回の活動が続けられてきたのです。いずれも、その度に、いくつかのNGOが集まって、緊急救援委員会を立ち上げてきました。しかし、私たちは市民の思いを恒常的な形にし、後の世代に受け継いでいきたかったのです。

 行動原則について、一年間をかけた構想検討委員会はこれまでの経験をまとめまて、次のように宣言します。

CODEは、主体的な市民と協働して、海外の災害被災地の生活再建や復興を支援します。

CODEは、被災地の子どもや女性への支援活動を重視します。

CODEは、障害者や高齢者、外国人などが、被災によって弱い立場に置かれ続けないよう、自立を支援します。

CODEは、被災地の人々が取り組む、持続可能なコミュニティづくりを支援します。

CODEは、被災地の人々が描く復興計画や行動計画づくりを支援し、結果だけでなくプロセスを重視します。

CODEは、基本的人権の確立をめざした活動を行います。

CODEは、地球市民として環境を視野に入れ、「防災・減災」に取り組みます。

CODEは、国際社会の中で多様なネットワークを築きます。

 それでは、なぜCODEを創ったのか。思いの一端はすでに触れました。私たちは、「支え合いの大切さ」「一人ひとりの尊さ」「くらしと地域が一体化することの大切さ」「ボランティア精神の貴重さ」「救援者自身をサポートすることの重要さ」に気づきました。また、自分の命や自分のまちを自分たちで守るために、一人ひとりが主体的に防災・減災を自分のこととして考えること、不幸にして災害に襲われたときには、難局に立ち向かう意欲をもって「新しい社会システムを構築する」ことまで視野に入れることの必要も学びました。

 さらに、実に大勢の市民が海外の被災地の人々に対して少しでも役に立ちたいという思いをもっていることも、改めて知りました。そして、救援・復興活動は、専門家のみに委ねるのではなく、幅広い智恵や能力をもつ市民が問題を共有しながら互いに専門家とも協力して取り組むことにより一層の成果をえられることも学びました。こうして、私たちはCODEで活動することにしたのです。

 一人ひとりや、一つのグループではできることも限られます。私たちはCODEという繋がりを通じて、災害救援の実践を続け、問題に立ち向かう力を高めていきます。支え合いや助け合いに国境はありません。私たちは、地球市民の一員として、海外の災害被災地に私たちの経験を伝え、また学ぶことで私たちの責務の一端を果たしていきます。

 「最後の一人」の人権を回復するまで、災害救援では、直接間接に、かかわることが求められます。あの阪神淡路大震災のとき、最後の一人が救出されるまで力を合わせましたし、最後の一人が救出されたとき、皆が幸せをかみしめました。この経験からも、また、一般原則としても、私たちは「最後の一人」にこだわります。私たちは、平時においても、最後の一人の幸せを願います。これは、政治=行政目的の「最大多数の最大幸福」に対峙する考えです。ここに仮に百人いるとしましょう。単純多数は五十一人です。三分の二多数は六十七人です。そして、最大多数は九十九人です。つまり「最後の一人」は「最大多数」の論法では必ず切り捨てられるのです。

 だから、私たちは最後の一人のそばにいます。最も弱い者、小さい者のそばにいます。そこで人権を語ります。これがCODEの目指すものです。