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国際人権ひろば No.39(2001年09月発行号)

ヒューマン・インタビュー

崔毅八(チェ ウイパル)さん

韓国・外国人労働者対策協議会会長、キリスト教牧師

 8月11日~12日に大阪で開かれた「移住労働者と連帯する全国フォーラム・関西2001」に、韓国で外国人の人権擁護の活動を行うNGOのネットワーク「外国人労働者対策協議会」(外労協)の崔毅八会長がゲスト・スピーカーとして呼ばれた。外労協は、外国人移住労働者支援の活動をする約200あるNGOのなかで、とりわけ外国人の権利保護のための法律の整備を求めて30ほどのNGOによって1996年に組織されたもの。フォーラムや打ち合わせの合間をぬってインタビューさせていただいた。

 韓国には約35万人の外国人が働いていると推定される。在留資格別の内訳は、22万人が超過滞在状態の未登録労働者で、8万人が研修生、残りが他の合法的な資格を有している人たちだ。1980年代後半から未登録労働者が増加してきたが、当初はほとんどが男性であった。91年頃から研修生という形の労働者が増えてきた。中国からの朝鮮族を除けば、東南アジアや南アジア出身者が多いが、最近はロシアやウズベキスタンなど中央アジアからの労働者も増えている。女性も急増し、現在約4割を占めているのではなかろうか。

 未登録労働者の多くは、建設労働など「きつい」、「汚い」、「危険」といったいわゆる3Kの現場で働いている。女性の場合は売春に従事させられている場合がある。以前はフィリピン人女性のケースがよくあったが、最近はロシア人女性のケースが目立ってきた。

 企業の研修生の在留資格で働いている外国人の労働条件は劣悪だ。実際は普通に働かされているにもかかわらず、労働者とはみなされないため非常に低い手当しか支給されてこなかった。多くのNGOの働きかけにより、現在では何とか法定最低賃金や残業手当などを受け取れるようになった。

 未登録労働者の場合は、確かに研修生よりは手取りが多い。そのため、借金をして高額の仲介料を支払ってやってきた研修生のなかには、派遣先の企業を抜け出して超過滞在を選ぶ人たちもいる。しかし、そうなると在留資格がないため、いつ強制送還されるかわからない不安定な状態に置かれるのである。

 労働問題以外に医療や結婚、子どもの教育など新たな問題が生じている。外国人の滞在が長期化するにつれて、こうした問題は増え続け、深刻化している。

 例えば私が代表を務めるNGO「ソウル移住労働者センター」では、労働法に関する教育活動、相談業務、シェルターの運営、医療共済組合の運営、パソコン教室、外国人コミュニティのリーダーシップ・トレーニングといった日常活動を通して、外国人のニーズに応えようと努めている。

 外労協は、外国人当事者による法的保障の要求に触発されて、96年に組織された。外労協は、外国人労働者保護法案を作成し、多数の署名とともに国会に提出した。しかし残念なことに、この法案は審議されないまま埋もれてしまった。法制定は実現できなかったものの、与党や野党も同趣旨の法案を出していたことから、これらをきっかけに議論が高まったのである。その結果、従来は対象外だった外国人研修生の医療保険への加入や労働災害の適用が認められるようになったのである。

 昨年、大統領の支持により外国人労働者の雇用許可制の導入の動きがあったため、外労協でも法案づくりに協力したが、これも見送られてしまった。その最大の理由は、野放し状態の研修制度から利益を得ている人たちの反対が強かったためだ。私たちにとっては大きな挫折だった。

 それでも、私たちは、再び労働者保護法制定に向けて取り組んでいる。問題だらけの研修生制度を撤廃し、外国人が低い労働条件で企業に縛られるのではなく、労働許可を得ることで自らが企業を選択できる許可制度を確立することが必要だと考えているのだ。このため、外労協はソウルで毎日のように街頭キャンペーンを行っている。

 今回、大阪での「全国フォーラム」に参加して、たくさんの参加者が熱心に聞いていたことに驚いた。日本における超過滞在者や研修生など外国人の状況が、韓国と共通していることをあらためて実感した。日本のNGOが、法律の整備を含む総合的な見地から移住労働者の権利を保護しようとしている姿勢にとても共感する。

 移住労働の問題は、一国に限定された問題ではないことから、今後さらに台湾や香港も含む東北アジアにおいて共同で取り組む課題だと思う。実際、日本のNGOとの緊密な情報交換や経験交流の重要性を痛感する。法整備に向けては韓国が進んでいる一方で、私たちは行政交渉の場において、日本のある自治体では外国人に対してこんな措置を認めた、と日本の事例を引き合いに出すことで、有利に交渉を進めたこともある。

 韓国社会ではいろんなところで外国人に対する差別が存在すると思う。華僑の人々への差別は過去からずっとあり、韓国はチャイナ・タウンの存在しない世界唯一の国ではなかろうか。身近なところでは、私の属する教会で、外国人支援のカンパ活動をすると、「働きに来ている外国人のために募金する必要はない」「外国人が増えれば、韓国人の失業者が増える」と反対する信者もいる。外国人が増えているなかで、共に生きていくための法制度や文化を社会につくりだしていきたい。

(構成:藤本伸樹)