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国際人権ひろば No.95(2011年01月発行号)

ニュースインブリーフ

日本を議長国に東京で 「国際連帯税」 実現に向けて国際会議開催(2010年12月16−17日)

 地球規模の課題、 とりわけ発展途上国の貧困問題を解決する財源として政府開発援助 (ODA) が不可欠です。 しかし、 日本をはじめとする 「先進国」 の ODA が伸び悩んでいることから、 国連が2000年に採択した 「ミレニアム開発目標」 (MDGs) の達成が困難な状況にあります。 MDGs は、 2015年までに 「極度の貧困と飢餓を半減させる」 「男女の区別なく、 すべての子どもの初等教育の普及を達成する」 「HIV/エイズとマラリアなど致死の病気の蔓延を防止し、 減少させる」 など達成すべき8つの目標を設定し、 国際社会で取り組まれています。 
 そのような事態を受けて、 新たな資金調達源として、 国境を超える通貨取引などに課税する 「国際連帯税」 (グローバル・タックス) の導入が、 フランスを中心に世界的に議論されています。 格差社会が地球規模で拡大しているなかで、 グローバルに徴収する税金を再分配するシステムです。
 実際、 すでにフランスなど15ヵ国で、 すべての国際線を対象に課税する 「航空券連帯税」 (支払うのは乗客) がその具体策として実施されています。
 そうした課税のあり方を議論し取り組みをさらに推進する目的で、 2010年12月16日と17日に東京で、 「開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ」 第8回総会が開催されました。 前原誠司外務大臣が議長を務めた総会には、 56ヶ国、 20の国際機関、 18団体の代表が参加し、 保健、 不正な資金の流れ、 教育、 国際金融取引、 気候変動、 貧困・食料安全保障、 移民の送金などに関して議論が行われました。
 総会前日の12月15日には、 「国際連帯税を推進する市民の会」 (アシスト) など NGO や民間企業、 「国際連帯税創設を求める議員連盟」 などが協力して、 フランスの外務省担当者など国内外からスピーカーを招いた国際シンポジウムを開催し、 より包括的で多くの国を巻き込んだ 「国際連帯税」 の実現をめざすための議論や提案が行われました。
 日本における 「航空券連帯税」 に関しては、 前原外相が2010年9月に国連総会に併せて開かれた国際会議で 「新設の検討」 を表明しています。 一方、 日本航空および全日空などの航空業界の反発を受けて、 馬淵澄夫国土交通相が導入に反対しています。
 12月15日の国際シンポジウムのパネリストのひとり上村雄彦さん (横浜市立大学准教授) によると、 「航空券連帯税」 は、 国際線に乗れる 「豊かな」 人たちから徴税し、 貧しい人びとのエイズ、 マラリア、 結核という感染症の治療のためなどに再分配するという考え方のもと、 実施国を離陸するすべての航空会社に課税するシステムであることから、 特定の航空会社に不利になることはないと分析しています。 フランスの場合、 「航空券連帯税」 導入後の2006年、 エール・フランスの売り上げが5.4%増加したといいます。 一方、 日本で実施するならば、 ビジネスクラス以上を5,000円、 エコノミークラスを500円の課税とした場合、 年間に171〜278億円の税収が見込まれるとの試算を紹介しました。
  「航空券連帯税」 を突破口とした 「国際連帯税」 の実現には、 国の政治的意志、 企業の社会貢献、 そして市民一人ひとりのグローバル規模の格差是正に向けた国際連帯への意識が強く求められています。
 (藤本伸樹・ヒューライツ大阪)

参考:
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/
    22/12/1217_04.html
外務省プレスリリース (2010年12月17日付)
http://www.acist.jp/
「国際連帯税を推進する市民の会」 (アシスト)