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第53会期国連人権理事会が宗教的憎悪の扇動に関する決議などを採択(6/19~7/14)

 第53会期国連人権理事会が6月19日から7月14日にかけて開催され、宗教的憎悪への対応など30の決議を採択し、教育の権利に関する特別報告者や、人権と多国籍企業およびその他の営利事業の問題に関する作業部会など特定の課題に関する特別手続きを延長しました。また、2023年1月に実施された普遍的定期的審査(UPR)の作業部会の報告と、その際に出された勧告に対する日本や韓国、パキスタン、スリランカなどの回答も採択されました。
 今会期の開催初日、テュルク国連人権高等弁務官は世界の人権に関する最新状況として、人権高等弁務官事務所(OHCHR)をはじめ、国連機関が世界の各国と協力して人権状況の改善に取り組んでいることを報告しました。一方、シリアやエリトリアなど、人権理事会の調査委員会や特別報告者との協力を拒否している国や、ミャンマー、ニカラグア、北朝鮮など人権理事会の特別報告者などの入国を認めていない国があると述べました。また、人権条約機関への締約国の定期報告が期限を過ぎても未提出が601本にのぼること、および395本の報告書が審査待ちであることが報告されました。

ミャンマーの人権状況に重大な懸念
 6月21日、人権理事会はミャンマーのロヒンギャおよび他のマイノリティの人権状況に関するパネル・ディスカッションを開催しました。初日に議長から、国連総会においてミャンマー政府の代表がまだ決定しておらず、今会期にミャンマー政府は出席しないとの報告があり、会期内のミャンマーに関する討議は同国の代表の参加がないままで行われることが人権理事会によって認められていました。パネルでは、アル・ナシフ副人権高等弁務官は、2021年の国軍によるクーデター後、ロヒンギャおよび他のマイノリティの人権状況は一層悪化しており、2023年5月のサイクロンが大きな被害を引き起こした後、国軍は人道支援活動に物理的・行政的な規制をかけ、多くの人が食料や医薬品にアクセスすることができていないと述べました。
 また、7月6日、ミャンマーの人権状況に関する報告を提出したトゥルク人権高等弁務官と、ミャンマーの人権状況に関する特別報告者との対話が行われました。報告を紹介するにあたり人権高等弁務官は、クーデター以降3,747人が軍によって殺害され、23,747人が逮捕され、150万人以上が強制的に移住させられたと述べました。また2023年前半は前年の同時期に比べて無差別の空爆が33%増加し、学校、病院、宗教施設などが標的にされていることがあげられました。また、アンドリューズ特別報告者は軍が10億ドル以上分の武器および関連品を輸入していることをあげ、同国にそのような武器・兵器を入手する資金が渡らないよう、国際社会が協調して行動することが不可欠であると述べました。
 人権理事会は、ロヒンギャや他のマイノリティに対する深刻な人権侵害が報告され続けることについて重大な懸念を表明する決議を採択し、ミャンマー政府に対して国内のあらゆる暴力と国際法違反を停止し、国内のすべての人の人権を保障するよう求めました。また、国外に逃れたロヒンギャの人々が自発的に、安全に、尊厳をもって帰国できるような環境をつくるために、国連の特別報告者や人権機関などに対する制限や監視のないアクセスを認めることなどもあげています。また、国際社会に、ロヒンギャ難民に対して支援を提供しているバングラデシュに対して支援継続するよう呼びかけています。

宗教的憎悪の扇動への対応
 会期中の6月28日、スウェーデンでイスラム教の聖典コーランに対する抗議行動としてコーランを燃やすという事件が起こりました。それを受けて人権理事会は7月11日に宗教的憎悪に関する緊急討議を開催することを決めました。テュルク人権高等弁務官は、信仰の象徴はその信者にとって深い意味と信仰の核心を表すものであり、それを汚したり、破壊することは、人々の間に憎悪を招き、暴力に発展しうると述べ、表現の自由に対する制限は原則として例外的でなければならないが、自由権規約20条は、差別、敵意または暴力の扇動になる人種的、宗教的憎悪の唱導を禁止するよう求めていることを指摘しました。
 また、ガネア宗教あるいは信仰の自由に関する特別報告者は、スウェーデンの事件で政府などがコーランを燃やす行為を速やかに非難したことを歓迎し、当局や社会の指導者が、宗教や信仰に基づく憎悪や暴力に対して反対を表明することを強く求めました。討議を受け、人権理事会は翌日、コーラン焼却のような宗教的憎悪の行為や扇動を強く非難し、各国にそのような行為や扇動の防止、および訴追を妨げるような法律や政策の不備がないか確認し、是正することを求める決議を採択しました。

 第53会期ではまた、国内避難民の人権に関する特別報告者の日本訪問に関する報告が提出されました。また、ウクライナに対する人権分野における協力と支援に関する決議が採択され、国連人権高等弁務官に第59会期(2025年6月)まで、毎回ウクライナの人権状況に関して最新状況を報告するよう求めました。

(構成・岡田仁子)

<出典>
Human Rights Council Concludes Fifty-Third Regular Session After Adopting 30 Resolutions and Holding an Urgent Debate on Religious Hatred、2023年7月14日、OHCHR
https://www.ohchr.org/en/news/2023/07/human-rights-council-concludes-fifty-third-regular-session-after-adopting-30?sub-site=HRC


(2023年07月18日 掲載)