大阪出入国在留管理局(大阪入管)の常勤の医師が、酒に酔ったまま被収容者を診察していたという疑いをめぐり6月2日、立憲民主党の石川大我参議院議員など6人が視察に訪れ、石崎勇一局長と小田切弘明次長と面談し、医師に関する問題について質問しました。
石川議員たちによると、石崎局長らは「2023年1月、医師の呼気検査をしたところ、アルコールが検出されたため、医師を診察業務からはずして調査を開始した」とのことです。この医師は、入管施設の医療強化を目的に2022年7月、常勤医師として新規採用されていました。
大阪入管の視察を終えた2日夜、石川議員たちは大阪の弁護士有志と入管被収容者を支援するNGOと意見交換会を行い、視察の結果を明らかにするとともに、大阪入管の医療体制の問題について情報交換しました。
今回の視察に際して、石川議員は、医師の勤務態度、1月以降医師としての任務を外れた後の業務内容、酒の空き缶の数、被収容者に対する具体的な暴言の内容など11項目の質問を提示していました。
意見交換会で石川議員は、大阪入管は「調査中である」として、ほとんどゼロ回答であったと語りました。そうしたなか明らかになったこととして、医師の現在の業務内容は説明されないものの、雇用は継続し、医師の給与として約70万円が毎月支払われており、夏のボーナスも支給される予定であることなどがわかりました。
さらに、同席の鎌田さゆり衆議院議員は2日の衆院法務委員会で、齋藤健法務大臣に対して事態を知ったのはいつかと質問したところ、法相は「2月下旬に事態を把握し、事実確認を行うよう指示したとの回答であった」と報告しました。
鎌田議員は、「斎藤法相は2月に明らかにすべきだった。入管法改定案が成立するまで隠ぺいしようとしたのではないか。不誠実であり、欺かれたという思いだ。参議院での法案審議も止めるべきである」と話しました。
被収容者への面会などの支援を行っている複数のNGOは、同医師の酒酔い診療に関しては5月30日の報道で知ったとしつつ、以前からこの医師の暴言や不適切な投薬などを問題視していたといいます。「仮放免者の会」は、ある女性は、おなかの痛みを訴えたのに、精神安定剤が過剰に処方され、意識を失い昏倒状態に陥ったという相談を受けています。また、以前から胆石治療を受けていた女性は、右腹部の痛みを訴えると、「右側に胆のうはない」と言ったうえで(胆のうは右側にあることを理解していない)、「胆石はどうでもいい」「あなたの痛みは胆石ではなく卵巣」などと医師から怒鳴られています。
中井雅人弁護士をはじめ大阪の弁護士有志は5月30日の報道を受け、大阪入管局長と出入国在留管理庁長官に対して、情報公開を求め7項目の質問状を送っています。6月5日現在回答はありません。
視察した議員たちは、齋藤大臣の問責決議案提出も視野に入れて責任を追及する方針だと語りました。
右から大椿参議、鎌田衆議、石川参議、福島参議、大石衆議、清水前衆議
(大阪弁護士会館)
<参照>
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2023/05/520.html
大阪で入管法改定案反対の集会とデモ-梅村参議院議員の発言を非難(5/20)
(2023年06月05日 掲載)