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シネマと人権16:強制送還を前にした子どもたちと料理を創るー「ウイ、シェフ!」

小山 帥人(こやま おさひと)
ジャーナリスト、ヒューライツ大阪理事

 フランス映画で料理に関するものがあると、それだけで見たくなる。美味しそうな料理がたくさん出てくるかなと。
 主人公のカティは高級レストランの副料理長で、さまざまなメニューを考案してきた自信家である。だが彼女が作った料理は、メディアで人気の料理長に変更されてしまう。上司の料理長は、味よりも見た目を大切にするタイプなのだ。カティは抵抗するが、「あなたの代わりはいくらでもいる」と言われ、売り言葉に買い言葉、「三文タレントのくせに」と上司に悪態をつき、辞職するハメになる。
 失業したカティは新しい料理人の募集を探すのだが、なかなか見つからない。ようやくシェフの募集を見つけて行ってみると、そこは移民の若者のための施設だった。

料理チームをサッカーチームになぞらえて

 レストランの厨房と全く違う調理室の乱雑さと用具不足の現状にカティは呆れる。「私は寮母ではない」と断ろうとするが、1日1人分8ユーロ(約1,100円)の予算で、やりくりしている現状を知って、子どもたちを助手にして料理を創り始める。料理が好きな子どももいるが、「故郷では男は料理をしない」と言い張る若者もいる。
 みんなサッカーが大好きだから、サッカーの話になると盛り上がる。カティは料理チームをサッカーチームになぞらえ、それぞれに役割を分担させる。調理チームは団結力が強まり、母親が作ってくれたエスニックな料理をカティに教えてくれる少年もいる。

年齢を確かめるための骨検査

 フランスでは、滞在許可を持たない子どもたちは、18歳の時点で、学校に入るか、就職するかしないと、強制退去させられる。年齢を確かめるために骨や歯の検査がある。その検査で18歳以上とされれば、フランスに留まることができない。子どもたちを強制退去に追い込みたくない施設長は、施設の中に調理人の職業訓練コースを作ることを試みる。
 興味深いのは、テレビで紹介されるレストラン・コンテストだ。予選を経て、カティのレストランは決戦にまで勝ち残る。優勝すれば賞金が貰え、カティの念願であった自分のレストランを開く資金が手に入る。
 コンテストはテレビの生放送で行われる。マイクを持った司会者がカティのレストランを訪ねるが、レストランの中は移民の若者ばかり。「なんだ、こいつらは!」とテレビ局スタッフからは差別的な声が上がる。室内の壁には、強制送還が近い移民の子どもたちの写真と訴えで埋め尽くされている。「調理コースで移民を救え」などのアピール文もある。生放送のカメラはそれらの文や写真を写し出し、送還の危機にある少年たちの現状がテレビでアピールされる。子どもたちが自分達で考案したメニューを司会者に口上すると、視聴者からは、あんな若者を雇いたいと電話が入る。カティの子どもたちへの特訓が成果を出したのだ。

スパイスが効いた料理のような

 実は、カティも家庭の事情により施設で育った人間だった。喧嘩早く、突っ張って生きてきたカティも、移民の子どもたちと交わる中でひとつのチームとして共に育っていく。
 美味しそうな料理のカットは少なかったが、社会の苦さと、人の交わりの甘さ、それぞれの子どもたちの個性がスパイスとなって、素敵な料理を味わったような気分になる映画だ。


img_20230426_料理人カティ.jpg

料理人カティ(中央)と移民の若者たち

<ウイ、シェフ!>
監督:ルイ=ジュリア・プティ
2022年/ フランス映画 / 1時間37分
配給:アルバトロス・フィルム
5月5日より全国で上映
https://ouichef-movie.com/


(2023年04月26日 掲載)