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パブコメ1/31まで! 妊娠不安から女性を守る緊急避妊薬の薬局での入手を可能にするために

ヒューライツ大阪 嘱託研究員
              #なんでないのプロジェクト
                       福田 和子

 厚生労働省は、2021年6月より議論を続けていた緊急避妊薬のOTC化(Over the Counterの略。処方箋の必要なく薬局で入手できるようになること)に関し、1月31日までパブリックコメントを募集している。

 緊急避妊薬とは、避妊に失敗した時(コンドームの破損やピルの飲み忘れを含む)や性暴力被害にあったとき、なるべく早く、遅くとも72時間以内に服用することで高い確率で妊娠を防げる薬だ。アフターピルとも呼ばれる。妊娠を防ぐ薬であり、中絶薬とは異なる。この緊急避妊薬の成分レボノルゲストレルは、世界で30年以上前から広く様々な薬剤に使用され、研究も重ねられており、重大な副作用はなく、思春期の女子を含め誰でも安全に服用できることがわかっている。WHOも「安全で効果的、そして高品質」な「必須医薬品」に指定していて、「意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性および少女には、緊急避妊にアクセスする権利がある」とも述べている。

 しかしこの緊急避妊薬は、日本では非常にアクセスが難しい。日本ではいまだに処方箋が必要で、保険が適用されないために自費診療となり、6000円〜1万5000円前後の費用がかかる。ハードルは他にもあり、週末や祝日に必要になった際の入手の遅れ、地方在住者にとっての医療機関へのアクセス、また、特に若い女性は産婦人科に行きづらいといった心理的ハードルもある。

 それを変えるのが、OTC化だ。処方箋の必要なく、全国に6万カ所ある薬局で入手可能になれば、アクセスは段違いに良くなり、女性たちは自分のからだをより守りやすくなる。しかし、これにはOTC化の検討会に参考人として出席した産婦人科医会が反対の意を唱えており、その結果、OTC化されてもアクセスを非常に限定することになる条件付けなども話し合われている。

 特に気になるのは、「悪用・濫用」や「安易な使用」の恐れについての議論である。この議論からは、妊娠不安の辛さについての無理解と、女性を信頼していないという現実が垣間見える。その中には、悪用濫用を防ぐため、薬剤師の面前での服用とその後の産婦人科受診を必須条件にしようという動きもある。しかし、厚労省が行った海外調査では、面前内服を求める国はなかった。むしろWHOは、全ての事例に関するフォローアップ受診要請を始めとする緊急避妊薬の提供に際し女性にとって負担になる不必要な手順を避けること、また、将来必要となった場合により早く確実に服用するため、多めに渡しておくことや事前提供することさえ推奨している。

 この面前内服に関しては、プライバシー確保のため、個室を有する健康サポート薬局のような条件を満たした薬局でのみ緊急避妊薬を取り扱うべきという議論もある。しかし、健康サポート薬局は2022年時点で全国に3433カ所しかない。沖縄県には5カ所、佐賀県には8カ所にとどまっており、これではOTC化の効果は非常に限定的になる。全国6万カ所の薬局の強みを生かすOTC化の実現が重要だろう。他にも、年齢制限や未成年に対し本人確認を求める案が出ているが、WHOは、思春期の女性ふくめすべての女性が安全に服用できる薬としている。このように、妊娠不安の辛さを経験した当事者不在の中で、科学的根拠が明らかではなく、国際的な文書では否定されている、漠然とした懸念を並べるばかりの検討が、2021年6月から繰り返し行われてきたという現状がある。

 こういう状況に一石を投じられるのが、現在募集されているパブリック・コメント、通称パブコメになる。パブコメでは、こういった議論についての、私たちの意見を直接届けることができる。匿名、箇条書きで構わないし、たとえば「緊急避妊薬のOTC化に全面的に賛成です。心の負担になるので、面前内服の条件はつけないでください」など短くても良い。厚労省は届いた件数の公表は明言しており、私たちからの一件一件のコメントが、世の中の関心、そして問題の重大さと切実さを示すために重要な意味を持つ。

 海外にいれば容易に入手できるのに、日本では簡単に手に入らず、妊娠不安や望まない妊娠に向き合わざるを得ない、そんな不条理を終わらせ、女性と少女の「性と生殖に関する健康と権利」を保障するための重要なパブコメになる。

 パブコメ記入サイトへのリンクや、参考になる様々な資料は「#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」としてこちらにまとめられている。1月31日(火)が締め切り。個人、団体を問わず、誰でも提出できる。
https://lit.link/kinkyuhinin


(2023年01月30日 掲載)