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ギルモア国連人権副高等弁務官、人権理事会でマイノリティ女性の複合差別に関してスピーチ(2017年9月)

 ケイト・ギルモア(Kate Gilmore)国連人権副高等弁務官が、人権理事会第36回会期中の2017年9月25日に開催された「人種主義、人種差別、外国人嫌悪及び関連する不寛容の文脈における複合的及び交差的形態の差別・暴力が、女性及び少女によるすべての人権の完全な享受に与える影響に関するパネルディスカッション」においてスピーチを行いました。以下、その全文訳を紹介します。
 
司会者様、皆様、同僚の皆様そして友人たちへ
 差別が私たちの機会や進歩にもたらす弊害は、私たちのアイデンティティの一つの側面のみに影響を及ぼすわけではありません。差別的行為により影響を受ける人々のほとんどにとって、権利の享受を妨げ、蝕み、圧迫するなどの権利の剥奪や否定という複雑な関係を作り出すのが、複合的及び交差的な形態の差別です。この卑しむべき力学関係において、特定の集団に属する女性と少女が最も深く影響を受けています。
 
 女性の人権の実現の進捗を示すデータは、全体としては重要な進歩を示していますが、その喜ばしい成果を他の重要な側面-人種的または民族的出身、国籍または移民としての地位、障害、マイノリティとしての地位-に関してより綿密に調べると、深い不平等が浮かび上がってきます。
 
 これらの不平等は複合的な形態の差別と絡み合い、世界中の何百万人もの女性や少女の足を縛り、口を封じています。マイノリティ集団出身の女性は他の女性と比べると、貧困の中で生活している割合が高いです。マイノリティ女性で貧しい状況にあるという理由で、彼女たちの社会的・経済的地位は日常生活のすべての側面-保健サービスへのアクセス、教育や居住の権利、恐怖を感じることなく生活する権利、自分たちのコミュニティへの参加-に影響を与えているのです。
 
 こういった深刻で非常に不公平な結果は、交差的で多様な形態の差別によるものです。そしてそれは、地域を越えて見られます。
・アメリカ合衆国では、アフリカ系の女性が出産時に亡くなる確率は3倍高くなっています。
・ベトナムでは、民族的マイノリティの女性が出産する場合、60%が産前ケアを受けていません。この割合は、マジョリティ女性の2倍です。
・EUの11の加盟国で行われたロマ女性の生活状況の調査において、ロマ男性と他のマジョリティ女性は32%が16歳以降にも学校に通っているのに対して、ロマの若い女性の場合は23%しか16歳以降に学校に通っていないことが明らかになっています。
・グアテマラでは、先住民族の女性の64%が無給の家事労働者であり、土地やクレジット、他の生産的な資源に単独でアクセスすることがほとんどできないか、もしくは全くできません。
 
 周縁化されたコミュニティに属する女性や少女に対する複合的かつ多様な形態の差別はまた、権利を弱体化させる固定観念に結びつきます。結果として、雇用へのアクセスが困難になり、さらには、暴力にさらされる確率がより高くなります。
 
・フランスでの実験によると、フランス人風の名前の女性は22.6%が就職時の面接に呼ばれる一方、セネガル人風の名前をもつ女性は、8.4%しか面接に呼ばれません。
 
・欧州基本権機関が行った調査によると、ムスリムだと思われる容姿の女性に対する攻撃が多くのヨーロッパ諸国で報告されています。2015年に起こったイスラム嫌悪の行動の多数は女性をターゲットとしたものでした。フランスでは74%、オランダでは90%が女性をターゲットにしていました。
 
 警察や刑事司法分野をはじめとする国家公務員の間にある、権利を弱体化させる固定観念と偏見は、結果としてマイノリティの女性や少女の、法の下で平等に扱われる権利や公正な裁判を受ける権利、そして救済へのアクセスの権利を侵害しています。
 
 紛争時及び移住の過程において、民族的・宗教的マイノリティもしくは先住民族の集団に属している女性や少女は、例えば、強制的な妊娠、人身売買、組織的レイプ、性的虐待、性奴隷といった、さらに深刻な人権侵害に直面します。それは、彼女たちの属性が原因となっているとみられます。紛争時において、マイノリティを特定の標的とするこのパターンが非常に著しいことから、民族もしくは人種に基づく女性に対する暴力は戦争時の武器として認識され、ルワンダ国際刑事裁判所や旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所の両方で起訴されてきています。イラクでヤジディの女性が証言している人権侵害の経験や、ミャンマーでロヒンギャの女性に対する深刻な人権侵害の証拠が山積していることが示唆しているように、これらの戦争時の武器は近年の紛争においてでさえいまだに、頻繁にそして激しい方法で使用されていることが明らかです。
 
皆様、
 頑迷な偏見、外国人嫌悪そして差別は酷いものです。それらはさらに、国際社会を繋ぐ最も高度な原則に明確に反しています。これは規範や先例においても、締約国が何十年にもわたって、共有された意思を述べるために集まってきた数えきれない会議の決定によっても、十分確立されている事柄です。
 
 「持続可能な開発目標のための2030アジェンダ」は、機会の平等を確保し、愚かな差別を終わらせることを繰り返し要請している、近年で最も権威のある呼びかけの一つです。このアジェンダの最も深く包括的な約束は、「誰も取り残さないこと」です。この約束が意味することの詳細は明らかです。つまり、「ジェンダー平等を促進すること(目標5)」と「国内かつ国家間の不平等を削減すること(目標10)」です。そして、このアジェンダが成功するかどうかは、最も周縁化され、排除され拒絶されたコミュニティに属する女性や少女を対象としてこのアジェンダがどこまで実現されたかによって、評価されるでしょう。
 
 マイノリティのコミュニティ出身の女性や少女に影響を与える政策や実践が、確かな証拠に基づき、当局もまたアジェンダの実施に責任を負うことができるように、良質で十分かつ適切なデータが収集され、国際法のもとで禁止されているあらゆる形態の差別事由によって分類され、分析されなければなりません。
 
 すべての複合的で交差的な形態における差別を終わらせるためには、データの収集は不可欠ですが、それだけでは不十分です。データの不足部分を補い、誰も取り残さないようにするための一つの方法は、国家による伝統的なデータ収集の補完として、差別されている女性や少女自身がコミュニティベースのモニタリングに参加することです。
 
 確かに、単なる皮膚の色、性、服装を原因とする絶えず繰り返される排除のパターンを変えるためには、女性と少女の声をより伝えなければならないし、彼女たちは公的生活や自身に関する意思決定に参加する有意義な機会を与えられなければなりません。
 
 「誰も取り残さない」という約束はゴールや最終目標より大きなものです。発展の果実が全ての人々ではなく一部の人々によってしか享受されないならば、また、その国の社会的・経済的システムが、努力や貢献や業績によってではなく、生まれた場所や外見、属性によって階層化された社会を再生産するならば、発展は持続可能なものではなくなるというのが、国連加盟国の共通認識です。
 
2030アジェンダが人権を土台としているのには、もっともな理由があります。周縁化と排除の悪循環を引き起こす人権侵害は、平和と繁栄の地球では存在し得ないのです。
 
 私たちは、肌の色、生まれた場所、宗教的信念という偶然によって女性や少女の人生が前もって決定されるのは不可避であるということを受け入れることをしてはなりません。それゆえ、彼女たちに対する差別をなくす効果的な方法を考案することは、実際に彼女たちの人権-基本的な人間の尊厳に対する権利-を擁護することのみならず、彼女たちがどのような分野や場においても、自身の能力を最大限に発揮し、スキルを最大限に向上させ、リーダーシップを最大限に発揮しようとする際に、彼女たちの前に立ちふさがる嫌悪や無知といった障害を取り除くことも含みます。
ご清聴ありがとうございました。
 
(翻訳:稻田亜梨沙・ヒューライツ大阪インターン)
 
<出典>
http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=22151&LangID=E (国連人権高等弁務官事務所 英語)
Panel discussion on the impact of multiple and intersecting forms of discrimination and violence in the context of racism, racial discrimination, xenophobia and related forms of intolerance on the full enjoyment of all human rights by women and girls

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