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DV被害の移住女性の人権―女性差別撤廃委員会が懸念表明

 国連女性差別撤廃委員会が2016年2月16日に女性差別撤廃条約の実施状況に関する日本報告審査を行い、3月7日に総括所見を発表しましたが、「女性に対する暴力」に関するパラグラフのなかで、「出入国及び難民認定法」(入管法)に規定されている在留資格の取消しについて懸念を表明し、勧告を提示しています。
2012年に改定された入管法は、日本人または永住資格を有する外国人と結婚した移住女性が、「その配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6 月以上行わないで日本に在留している」(正当な理由がある場合を除く)場合、「その在留資格を取り消すことができる」と定めています。
問題は、結婚移住女性がDV被害を受けて夫のもとから避難した際に、夫と同居していないことを理由に、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格が取り消されてしまうという危険性があることです。在留資格が取り消されると、日本に滞在できなくなります。
しかし、結婚移住女性の日本での在留資格は、日本人や永住者の夫に依存せざるをえないという入国管理制度に基づいていることから、夫が被害者である移住女性の在留資格の不安定さにつけ込む深刻な暴力が後を絶たないといった相談が各地のNGOに寄せられています。
このように、結婚移住女性の法的地位が日本人配偶者等に依存している現行の在留資格制度がDVの助長につながるという懸念は、2014年の人種差別撤廃委員会をはじめとする国連諸条約機関の勧告において、繰り返し指摘されてきました。
しかし、法務省入国管理局は、「個々の事情を考慮し、人道的な観点から適切に対応している」として、入管法の問題点を認めようとしていません。そのような政府の認識に対して、DVなどの暴力被害を受けている移住女性が当局への通報・申告に消極的であること、また入管法によって保護されるためには、配偶者としての活動を行わないでいることについて「 正当な理由」の説明が求められていることから、移住女性が在留資格取消を恐れて被害申告をしないという事態があることに懸念を表明しています。
 
<参考>
女性差別撤廃委員会の総括所見(2016 年 3 月 7 日 原文: 英語 先行未編集版 )
女性に対する暴力
22.(略)
委員会は、さらに以下のことを懸念する。(中略)
(c)ドメスティック・バイオレンスを含む暴力被害を受けている移住女性、民族マイノリティ及び その他のマイノリティ、障害女性が当局への通報・申告に消極的であること、入管法によって保護されるためには(訳注・配偶者としての活動を行わないで在留していることにつき)「 正当な理由」が求められているため、特に移住女性が在留資格取消を恐れて被害申告をしないという情報があること。(d)「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(DV 防止法)が、あらゆる家族形態のすべての女性に対して適用できるかについて不明確であること、及び、そのような事案で被害女性を保護する措置の提供に司法が消極的であること。
 
23.女性に対する暴力についての委員会一般勧告第 19 号(1992 年)及び前回の勧告 (CEDAW/C/JPN/CO/6, para. 30)を想起し、委員会は締約国に以下のことを強く要請する。(中略)
(e)女性及び少女に対するあらゆる形態の暴力の被害者、特に移住女性の被害者が、通報・申告ができるよう奨励するとともに、女性に対する暴力の被害者にとってシェルターが、利用可能かつ十分な設備を整えていることを確保すること。(f)指導的立場にいる職員の研修及び、女性及び少女に対する暴力のすべての事案が完全かつ効果的に捜査されること、及び、加害者が起訴され、有罪判決を受けた場合には適切に処罰されること。(g)「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(訳注・DV 防止法)があらゆる家族形態のすべての女性に対して適用できることを確保すること。
 
http://imadr.net/wordpress/wp-content/uploads/2016/03/feb26fb505bc453e288142ef32582eb4.pdf (反差別国際運動のサイトに全文訳)
女性差別撤廃委員会 第7次・第8次日本定期報告に関する総括所見
日本女性差別撤廃条約 NGO ネットワーク(JNNC)暫定訳
 
人種差別撤廃委員会 日本の第7回・第8回・第9回定期報告に関する最終見解
2014年9月26
外国人及びマイノリティ女性への暴力
17.委員会は,外国人,マイノリティ,先住民族の女性に対する持続的な暴力についての情報を懸念する。とりわけ、2012年の改正された出入国管理及び難民認定法の規定の下で、同法第1節第22条の4に規定されるように、外国人女性が「配偶者の身分を有する者としての活動を継続して六月以上行わないで在留している」場合に、当局が、日本人とあるいは永住者の在留資格を持つ外国人と結婚している外国人女性の在留資格を取り消すことができることを、懸念する。これらの規定は,夫からのドメスティック・バイオレンスの被 害者である外国人女性が,虐待関係から離れ,支援を求めることを妨げ得るものである(第2条及び第5条)。
 
人種差別のジェンダー関連の側面に関する一般的勧告25(2000年)及び市民でない者に対する差別に関する一般的勧告30(2004年)に照らし、委員会は、締約国に対し,移民、マイノリティ及び先住民族の女性に対する暴 力の問題に、彼女らに対する暴力の全ての形態を起訴し制裁することによって、 実効的に取り組むため、並びに被害者が救済及び保護の迅速な手段にアクセス できることを確保するための適切な措置をとることを勧告する。締約国はまた、日本人あるいは永住者の在留資格を持つ日本国籍でない者と結婚した外国人女性が、離婚あるいは離縁によって国外追放されないこと、及び法の適用が、実質的に女性が虐待関係のままであることを余儀なくされるような効果を持たないことを確保するため、在留資格に関する法制を見直すべきである
(パラグラフ32では、この最終見解の採択後1年以内に、上記勧告のフォローアップに関する情報を提供することを求めています)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000060749.pdf (外務省のサイトに全文訳)

(2016年04月06日 掲載)