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女性差別撤廃委員会 日本審査の総括所見を発表 - 包括的差別禁止法の制定を促す

条約の完全実施を求める強い勧告で始まる総括所見
 2016年3月7日、女性差別撤廃委員会は女性差別撤廃条約の実施に関する第7・8回日本政府報告書審査(2月16日にスイス、ジュネーブの国連本部で実施)の総括所見を発表しました。約25の課題に対する懸念と勧告は、社会のさまざまな領域に存在する女性差別の問題を網羅しています。
 まずとりあげられた課題は、条約実施の責任主体の一つである国会に、その責任の自覚を強く促す勧告(パラ7)です。1985年に同条約を締結した日本は、これまで3回、同委員会による審査を受けてきましたが、そのたびに、条約に沿った国内法整備を求められてきたものの、未だ大きな進展がみられません。具体的には、女性差別の法的定義の不在(パラ11)、女性の再婚待機期間の短縮や女性の法定婚姻年齢の引き上げ、あるいは夫婦別姓や婚外子に対する法律上の差別的扱いなど、女性差別を助長するような法律の存在(パラ13)と、女性を差別から守る法的保護の不在(パラ13)などの勧告が今回も繰り返されています。

包括的差別禁止法の制定と国内人権委員会の設置
 特に、2013年頃より顕著になったヘイトスピーチを含むマイノリティに対する差別について、今回、女性差別撤廃委員会も包括的な差別禁止法の制定(パラ13のe)と、人権促進と差別撤廃に大きな役割を果たす独立した国内人権委員会の設置(パラ15)について、2014年の自由権規約委員会の審査および人種差別撤廃委員会の審査に続く厳しい勧告を出しました。差別禁止法については、とくに、マイノリティの女性が置かれている差別の交差性(女性としてそしてマイノリティとして)がもたらす効果について強い懸念を示しています(パラ13のe)。

性差別と人種優越を唱える性差別的スピーチを禁止する法律の制定
 女性のステレオタイプ化と差別を固定化させる慣行について、委員会は社会規範や因習的な慣行、ポルノグラフの放置、教科書の記述の改訂などについて具体的な措置を求めています(パラ21)。その中でも、性差別とマイノリティ差別が複合的に絡み合って行われる性差別的スピーチ(ヘイトスピーチ)に関して、それを禁止して処罰する法律の制定を求めました(パラ21 d)。そしてアイヌ、部落、在日コリアンの女性や移住女性に対する差別的な固定観念と偏見をなくすために適切な措置をとり、独立した機関が定期的にモニターするよう勧告しています(パラ21 e)。 
 ヘイトスピーチの処罰化と複合差別をなくす措置及びそのモニターを求める上記の勧告(パラ21 d, e)は、特に監視を要する課題であるとして、2年後に勧告実施のフォローアップ情報を委員会に提供するよう求められています(パラ55)。

差別の交差性に向けられた委員会の大きな懸念
 今回の総括所見で、委員会はマイノリティ女性がおかれている複合差別/差別の交差性に関して、さまざまな課題のなかで懸念を表明しています。上記以外に、政治や公的空間におけるマイノリティ女性の参加の欠如(パラ30)、教育において特に高齢の部落女性やアイヌ女性における非識字率の高さ(パラ32)、移住女性や障害女性の教育の現状に関するデータの不足(パラ32)、雇用におけるアイヌ、部落、在日コリアン、沖縄女性に対する複合差別的な雇用慣行(パラ34)に関して懸念を表しています。そして、不利益を被る女性集団というタイトルのもと、異なる分野におけるマイノリティ女性に対する複合差別を撤廃するために、積極的な措置をとるよう強く促しています(パラ35)。
 なお、総括所見にあるマイノリティ女性に関連する懸念と勧告を抜粋して仮訳をしました。ご参照ください(CEDAW勧告 マイノリティ女性のみ 仮訳.pdf)。

強く求められる国際人権に基づいた“慰安婦”問題への対応
 “慰安婦”問題に関して、委員会は日本政府が国際人権法に基づいた“慰安婦”被害女性への対応を怠っていることに引き続き深い懸念を表明しました(パラ28)。そして、大臣や官僚がこの問題に対する国の責任を軽視するような発言を止め、被害者を中心に据えた補償を行うよう促しました(パラ29)。

<参照>
女性差別撤廃委員会 日本政府報告書審査の総括所見(英語)
http://tbinternet.ohchr.org/Treaties/CEDAW/Shared%20Documents/JPN/
CEDAW_C_JPN_CO_7-8_21666_E.pdf

(2016年03月08日 掲載)