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ジュネーブで第4回国連「ビジネスと人権フォーラム」開催(11月16日~18日)

2000名を超える過去最大規模の開催

 第4回国連「ビジネスと人権フォーラム」が、2015年11月16日から18日までの3日間、スイスの国連ジュネーブ事務所があるパレデナシオンで開かれました。2012年に第1回フォーラムが開かれた時には約80カ国から約1000人の参加があったそうですが、今回は前回第3回フォーラムの100カ国から約2000人の参加を上回ったのは確かでした。2300人とも2400人とも言われています。「ビジネスと人権」関連の会議では、世界最大の集まりだったそうです。

 「ビジネスと人権フォーラム」の開催を決めたのは人権理事会決議17/4(2011年)でした。そこではフォーラムの目的が、「ビジネスと人権に関する指導原則」の履行がどのように進んでいるか、そしてそこにはどのような難しさや課題があるかを話し合うこととされました。さらにフォーラムでは、異なるステークホルダー間の対話と協調を促し、ビジネスと人権に関して共通の目標を定めるように努めることを求めました。

 フォーラムは広く、政府、企業や企業団体、労働組合団体、国際機関、学界、コンサルタントグループ、市民団体やNGO、法曹団体、国内人権機関、先住民団体や企業による人権侵害被害者団体などからの参加があり、これらの参加者が優劣なく同等の資格を持つマルチ・ステークホルダー・イベントでした。

テーマは「進捗状態の検証と諸政策間の一貫性の確保」

 第4回のフォーラムのテーマは「進捗状態の検証と諸政策間の一貫性の確保」でした。このテーマを6つの分野に分け、常時5つの会合が並行的にもたれました。合計46会合。それに開催始めと終わりの全体会議があり、3日間のフォーラムは、「ビジネスと人権」の課題を網羅する観がありました。ちなみに、上記の6つの分野とは、

  1. 「ビジネスと人権に関する指導原則」の普及、履行とその進捗状況の検証
  2. 通商、投資、持続可能な開発に関する様々な世界的標準に「指導原則」を基にして一貫性を持たせること
  3. 国内の政策とその実施の一貫性の確保、またそのための「国内行動計画」の策定に絡む課題、および国有企業の課題
  4. 企業の人権尊重責任履行の現状、特にデューディリジェンスに焦点を当てた、業種別およびサプライチェーンの課題
  5. 企業が絡む人権侵害の被害者や人権保護活動家(ヒューマンライツ・ディフェンダー)など、リスクにさらされているグループや個々人の保護
  6. 実効性のある救済へのアクセス、その現状分析と強化のための方策

 様々な課題を取り上げた会合の中でも、注目すべきパネルディスカッションがいくつかありましたが、特に次のものに参加者が多く集まったようです。

  • 「指導原則」に沿った企業活動の実態についての議論
  • 企業を対象とする法的拘束力を持つ国際条約作成についての議論
  • 国の「指導原則」履行状況診断と「国内行動計画」作成についての議論
  • 企業による人権侵害の実態についての議論
  • 労働者の権利を護るための「指導原則」に沿ったマルチ・ステークホルダー・エンゲージメントについての議論
  • 実効性のある救済へのアクセスについての議論

注目すべきいくつかの議論

 フォーラムでの議論の全体を通してみると、政府、企業、市民社会団体、その他諸々のステークホルダーの「ビジネスと人権に関する指導原則」についての普及度、理解度は高まっていると感じました。「指導原則」を受け入れ、これに沿って政策や企業方針を打ち出す政府や企業と、遅れをとっている政府や企業の差がはっきりと表れてきているようでもありました。

 政府や企業が「指導原則」を受け入れて実行に移すにあたって、その進捗状況の分析評価をするための指標やベンチマークの工夫や活用、年次報告の作成など、実行確保と成果を確認するための手法やツールにまつわる課題が盛んに議論されました。

 また、政府が国の義務を果たすために、国内の様々なステークホルダーの協力を得て、人権保護目標の達成度を測るために使うことができるような「国内行動計画」を作成する重要性が強調されました。そのための政府の真剣な取り組みを求める意見も出されました。

 法的拘束力を持つ国際条約作成の議論では、エクアドルを中心とする若干の国々の代表といくつかの国際NGOがこれを強く支持する意見を展開しましたが、先進国の代表や企業関係団体が正面切っての反対ではなく、妥協の余地を探るためか「懸念」を表明していたのが印象的でした。

 企業活動の現場からは、人権被害の実態が具体的に報告され、ビジネスと人権に関して高い評価を受けている企業にも問題が全くないというわけではないこと、さらに、いまだに全く変化が見られない劣悪な労働環境、環境破壊からくる被害、先住民の伝統的権利の侵害など、広範囲に起こる深刻な問題が語られました。それとは反対に、企業、地域、労働者、その他のステークホルダーの自主的な協働によって成果を出した好事例も報告されました。

 実効性のある救済へのアクセスについては、司法的及び非司法的制度の課題が議論され、法曹の役割についてその重要性が語られました。

 以上、多岐にわたる課題が議論されたフォ-ラムを網羅的にまとめるということではなく、いくつかの注目すべき議論を紹介しました。

 第4回「ビジネスと人権フォーラム」は、この分野における各国政府及び世界の企業の取り組みの現状を理解するためには絶好の機会でした。日本からも企業、市民社会団体(NGO)、コンサルタントグループ、法曹界などからの参加がありましたが、日本国内では触れることが難しい、先進的な取り組みや議論に触れて刺激を受けたにちがいありません。

(白石 理)

<参考>
http://www.ohchr.org/EN/Issues/Business/Forum/Pages/2015ForumBHR.aspx
(国連「ビジネスと人権フォーラム」ウェブページ)


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