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国連人種差別撤廃委員会、日本報告審査を開催(8月20日)

 国連人種差別撤廃委員会(CERD)は8月20日、ジュネーブで人種差別撤廃条約の実施状況に関する日本報告審査を2日間の日程で始めました。1995年に締約国になって以来2001年と2010年に次ぎ、今回が3回目の日本審査です。
 在ジュネーブの政府代表を含め日本政府からは、内閣府、法務省、警察庁、厚労省、外務省などで構成する約20人を超える代表団が参加してきています。
 審査は、ジュネーブ時間の午後3時(日本時間午後10時)から始まりましたが、初めに日本政府の代表を務める外務省総合外交政策局審議官の河野章大使が、約30分にわたり全体説明を行いました。河野大使はまず、①アイヌ政策の取り組み、②難民条約を履行するための手続きの改善について、象徴的に説明したうえで、「自分の人権だけでなく他人の人権を理解し責任を自覚して相互に尊重し合う」という考えに基づいて、人権教育・啓発を重視していると述べ、人権教育啓発促進法とそれに基づく基本計画を説明しました。法務省は、外国人に対する人権尊重の人権啓発活動を行うとともに、英語や中国語などの外国語による人権相談を行っていると報告しました。
 委員会は、審査のやりとりでの焦点だと考える多くの課題をリストにして(リスト・オブ・テーマ)、2014年6月に日本政府に送付していましたが、河野大使がそれらの説明を行いました。

委員会からの事前質問

 課題は、①条約実施のための国内法、制度的・政策的な枠り組みの整備について、②マイノリティと先住民族の状況として、(a)部落民への差別に対する効果的な取り組みの進捗状況、(b)琉球/沖縄の人々の経済的、社会的、文化的権利の享有を推進するためにとられた具体的措置、、(c)アイヌの子どもの教育へのアクセスを含むアイヌ民族の生活向上、歴史と文化に関する理解促進のためにとられた愚弟的な計画と行動、③移住者、難民および庇護希求者など日本国籍を持たない人たちに対する差別についてあげられていました。

日本政府代表の報告

 河野大使は、人権救済制度について継続して検討していること、ヘイト(憎悪)行為に対しては表現の自由との関連で慎重に検討すべきであること、市民に対しては人権啓発活動を積み重ねていること、また教員、裁判官、検察官、入国管理職員など公務員に対する人権研修を行っていると説明しました。
 一方、部落問題に関しては、日本政府は、委員会の解釈とは異なり、条約の対象ではないという見解であることに変化はないとくぎを刺したうえで、日本政府は雇用主への就職時の公正採用のための指導や、市民に対する啓発活動を年間通じて行っていると説明しました。

 琉球/沖縄について、日本政府はアイヌ以外に先住民族は存在せず、沖縄は条約の対象とならないと解釈していると前置きをしたうで、沖縄出身者は法の下の平等を享受し、これまでのさまざまな施策を通じて、格差が縮小し産業が発展してきており、権利は保護されていると述べました。
 さらに、アイヌ民族について、2009年の「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」報告書をふまえつつ、教育啓発を行い国民の理解を深めている。報告書で提案された「民族共生の象徴となる空間」の取り組みも進めている。アイヌ民族の子どもの教育支援のため、奨学金事業にも支援している、と述べたほか、以下のように報告しました。

 
移住者について、日本国籍を持たない者についての人権尊重の施策として、法務省は、職業紹介などにおける差別扱いの禁止をしており、文科省は教育、各種学校に通う外国人にも就学支援金を支給している。人身取引は重大な犯罪で人権侵害であるとの認識で、関係省庁連絡会議を定期的に開催し政府一体となって取り組みを進め、被害者保護も図っている。

 
難民について、難民認定申請があれば、仮滞在の許可をしている。認定手続きの間、退去強制事由にあたる場合であっても仮滞在とし、収容を解くことにした。処遇に関する意見を被収容者本人から聴取する。不服がある時は不服申し立てを認める。退去強制時に物理的抵抗をした場合、身体の安全を配慮しつつ、安全確実な護送などを周知させるとともに、過度な制圧行為を防止する措置をとっている。

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報告審議の様子

日本報告担当委員の発言‐多岐にわたる質問とコメント

 河野大使の報告を受けて、18名の委員のなかで、日本報告担当のパキスタン出身のケマル委員は、当時も委員であった2010年の日本政府に対する総括所見であげられた指摘に言及しながら、多岐にわたる質問やコメントの口火を切りました。以下、その概要です。

  • ・日本国憲法第14条に差別禁止規定があるが、人種差別撤廃条約ににある禁止事由をカバーしていない。包括的な差別禁止法を制定する必要がある。
  • ・日本政府報告書には、2010年総括所見で指摘した勧告に対応する情報がほとんど入っていないが理由はなぜなのか。また、日本政府報告書は「前回の報告書参照」という言葉を多用しているため内容がわかりにくい。
  • ・今回は部落民に関連し、条約第1条にいう「世系」について言及がない。社会的差別に関する最新の情報を知りたい。
  • ・日本全体のデータとは別に、マイノリティの状況に関するデータを別にして出してほしい。
  • ・パリ原則に則った人権救済法について、日本政府に法制定の意思があるのは承知しているが、ほとんど歩みが見られない。他の条約に関する委員会も日本政府が適切な立法措置を取るよう求めているのだが。
  • ・条約第4条(a)(b)の留保を撤回するべきである。特定のグループ、例えば朝鮮学校の子どもや部落民を標的とした差別行為が続いている。2013年には360件の差別デモがあったという情報がある。日本政府は具体的にどのような措置をとったのか。ヘイトスピーチをおさえるのにどのように措置をとっているのか。朝鮮学校に対する行動について判決があるというが、もっと詳しい状況を知りたい。
  • ・人権教育をしているのは承知しているが、これまでと同様、公人による差別発言が繰り返されている。これに対して、どのような対応がとられたのか、具体例を知りたい。
  • ・外国籍者が家庭裁判所の調停員になれないことに懸念している。
  • ・帰化を求める者のアイデンティティを尊重し、名前に漢字使用などを強制することを控えるべきだが、それらについて政府の報告書には書かれていない。
  • ・二重の差別(複合差別)に関する措置を知りたい。マイノリティ女性には二重の困難、二重の差別があり、女性差別撤廃委員会や自由権規約委員会からも勧告が出ている。
  • ・戸籍について、部落をはじめとするマイノリティについて、不当で不正な情報収集がなされている。不正取得を防ぐためどういう措置を取ったのか。
  • ・部落差別について、特別措置法の終了後、どうなっているか。
  • ・アイヌ民族に関連し、先住民族権利宣言について、その後進捗が見られない。政府とアイヌ代表との協議が必要だ。依然として格差が残っている。ILO169号条約を批准しない理由は何か。
  • ・日本政府は、琉球人は先住民でないという立場だが、琉球の人はみずからをどう考えているのか。自らをどう定義しているのか、さらに検討が必要である。琉球代表との意見交換をするべきだ。軍事基地、米軍基地問題については、土地の利用に関わる問題がある。
  • ・マイノリティの教育について、アイヌ民族、その他の人々の言語を使用する権利がある。朝鮮語、朝鮮文化を学ぶ環境はあるのか。朝鮮学校は、政府から資金援助を受けられていないではないか。
  • ・難民について、庇護希望者のリスクの度合いがそれぞれ違う。無国籍者を送還しない措置も必要ではないか。
  • ・日本と日本人以外の差別のないことに関して、レストラン、浴場などの入場が、自由権規約委員会によると日本では平等に処遇されていない。公共施設を日本人しか利用できない。こうした差別的慣習を禁止する必要がある。
  • ・人権相談・啓発活動について、メディアの役割が重要であり、さらに継続した努力が必要である。
  • ・移住労働者権利保護条約、雇用に関するILO第111号条約、無国籍条約、ジェノサイド条約の批准の検討を要請したいたが、これらに対する回答がない。どういう対策が取られているのか。
  • ・技能実習は安価な未熟練工を強いられ、搾取されている。長時間勤務と差別があるので、技能研修は廃止したほうがいいのではないか。日本は人口が減っているので、技能研修よりも、移住者を入れる必要があるのではないか。

各委員から鋭い質問が独出

 その後、各委員による質問やコメントに移りました。ほとんどの議員が発言をし、ケマル委員の質問や懸念を補強や豊富化する内容が多く出されました。そのなかで、例外なくといっていいほど委員たちははヘイトスピーチの問題に言及し、表現の自由を保障する日本国憲法と矛盾することなくヘイトスピーチを法的に禁止することができるのではないかといったコメントがたくさん出されました。
 日本審査が始まる直前の1時間、日本のNGOが協力し委員たちに呼びかけて直前ブリーフィング(8月18日に続く情報提供)を開催したところ、10人を超える委員が自発的に参加していました。ブリーフィングには、参議院議員の有田芳生議員と糸数慶子議員も報告しました。その際、在特会の街頭デモにおける恐ろしいヘイトスピーチを英訳した短い動画を提示しました。各委員は衝撃を受けたようで、発言の際にも動画について異口同音に言及していました。たとえば、中国出身のファン委員は、極右による人種排外的なヘイトデモを警察が護衛しているのではないかという疑問を提示しました。

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直前のNGOブリーフィング

 また、個人通報制度を受け入れていないという問題、「慰安婦」の尊厳を傷つける最近の風潮、結婚移住女性の在留資格に関わる不安定な立場の問題、イスラム教徒に対する監視、外国籍の子どもの不就学の問題などについてそれぞれ複数の委員から指摘がありました。
 アイルランド出身のクイックリー委員は、8月6日にピレイ人権高等弁務官が「日本は戦時性奴隷の問題について、包括的で、公平で、永続的な解決を追求してこなかったことに深い遺憾の意を表明」した声明に言及し、「
正義の代わりに、ますます高まる日本の公人による否定と品位を貶める発言」のなか、女性たちが高齢で亡くなっていっている現実への憂慮を語りました。

日本政府からの回答は21日に

 委員たちからの発言に対して、終了時刻である午後5時を前に、外務省の人権人道課の山中修課長が、2点についてのみ答弁しました。①個人通報制度の受け入れについて、条約実施を担保するために注目に値すると考えており、真剣に検討を進めている。②外国人が公務員になれないのは「国家意思の形成や、公権力の行使には日本国民を有するもの」という内閣法制局の見解である「当然の法理」に基づくものであり不合理な差別に当たらない、と返答しました。
 日本政府からの詳しい回答は、審査の2日目である21日に行われます。

<参考>
http://maeda-akira.blogspot.ch/2014/08/blog-post_60.html
 (前田朗Blog ) Wednesday, August 20, 2014  
人種差別撤廃委員会・日本政府報告書審査(3)審査1日目・前半

http://maeda-akira.blogspot.ch/2014/08/blog-post_28.html
  (前田朗Blog ) Wednesday, August 20, 2014
人種差別撤廃委員会・日本政府報告書審査(4)審査1日目・後半 

<参照>
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2014/08/86.html
 (ヒューライツ大阪) 国連人権高等弁務官、「慰安婦」問題への日本の対応に「深い遺憾」を表明(8月6日)

(ジュネーブ・藤本伸樹)


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