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ベトナムへの原発輸出をめぐる問題点

安倍晋三首相が2013年1月に東南アジア3カ国歴訪した際、最初の訪問国ベトナムのハノイでグエン・タン・ズン首相と会談し、原発建設とレアアース(希土類)開発などで密接に協力することで合意しています。
 日本からベトナムへの原発輸出は、2000年にベトナム原子力委員会と日本原子力産業協会が「原発導入に関する協力覚書」を締結した頃から準備が始まっていますが、民主党政権下の10年10月に行われた日越首脳会談(菅直人首相)で日本の受注が決まっていましたが、安倍首相も、原発輸出の路線を受け継ぎ推進しています。経済成長が続くベトナムは2030年までに原発14基をつくる計画です。日本が受注したのは、ニントゥアン省にあるニントゥアン第2原子力発電所の2基で、第1原発はロシアが受注しています。
福島原発事故の被害の全容も明らかになっていない状態で、日本が他国へ原発輸出することについて、国内外の環境NGOをはじめとする市民団体が疑問や懸念を表明しています。
 そうした事態を踏まえ、「ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン」は、この問題に詳しい京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授の伊藤正子さんを講師に6月9日に大阪で学習会を開催しました。
 伊藤さんの報告の概要は以下の通りです。
 
たれながされる安全神話
日本は経済成長戦略の一環として官民一体で原子炉建設、運転・保守、燃料確保、低利融資のセットによる「丸ごと輸出」を進めている。
予定地は、ヌイチュア国家公園に隣接しており、絶滅危惧種のアオウミガメの産卵地になっている。農漁業で生計を営んでいる600世帯の住民は立ち退くことになるが、再定住区として決まったのは、原発予定地から2キロ以内のところ。
美しいビーチはあるが、リゾート地を擁する隣接する南北の省と異なり、「開発」は進んでおらず、現金収入に乏しく、周辺より「遅れている」地域である。そうしたなか、建設に伴う「原発マネー」の話にニントゥアン省も承諾したのであろう。
ベトナムにおいて、福島原発事故について発生直後はテレビ報道されていたものの、11年4月下旬から報道がなくなった。一方で、日本の原発のプロモーション・ビデオがベトナム語の字幕付きで放映され、「安全神話」が流されている。
12年5月15日、日本政府に抗議するために国立ハンノム研究所所属(古典音楽家)で、人気ブロガーとして知られるグエン・スアン・ジェンさんがブログで署名集めをしたところ、18日に暴漢が押し入り、削除を強要された。自国政府に直接反対することは許されないので、「日本が原発輸出を止めてくれ」という形をとっていた。しかし、ジェンさんは逮捕され、ハノイ市情報メディア局による行政処分を受け、750万ドンの罰金を命じられた。
原発輸出に物申すのは、ベトナムに対する内政干渉だ、という批判を受けることがある。しかし、原発は、周囲・環境への大きな影響から一国にとどまる問題ではないだけに、内政干渉にはならないと考える。ベトナムで原発事故が起きれば、カンボジア、ラオス、タイなどに及ぶのである。セシウムを含んだ魚がメコン川を泳ぐことになる。実際、タイのNGOなどは強い懸念を示している。
ベトナム側で待ったをかける取り組みをしてほしい。しかし、ベトナムにおいて市民活動に対してとても強い制約があることから、日本側から輸出を再考・断念させるための世論を盛り上げる必要があろう。
日本政府は、約20億円(うち5億円は東日本大震災の復興資金を流用)を支出し、日本原子力発電(原電)がニントゥアン省第2サイトの実施可能性調査(FS)を実施した。13年3月までにベトナム電力公社(EVN)に結果報告を報告しているものとみられる。しかし、6月現在、日本では国会にも報告されないまま非公開の状態である。情報開示を求めていきたい。
<参考>
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/ito/n-power.html
・伊藤正子研究室-ベトナム原発輸出関連
http://www18.ocn.ne.jp/~nnaf/
・ノーニュークス・アジアフォーラム ジャパン
http://www.mekongwatch.org/report/vietnam/npp.html
・ベトナムの原発開発計画と日本の原発輸出(メコン・ウォッチ)

(2013年06月10日 掲載)