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第23回国連人権理事会が開催

 第23回国連人権理事会が2013年5月27日から6月14日まで開催されました。今会期では、健康に対する権利、シリアの人権問題、人権の促進と保護のための国内人権機関に関することなど26の決議が採択されました。また、人権理事会議長が、2013年1月29日に予定されていたイスラエルのUPRの審査の時に、同国が欠席したことに対して、同国に再び参加するように求めました。

健康に対する権利に関する特別報告者の日本に関する報告

 2012年11月15日から26日まで、健康に対する権利のアナンド・グローバー特別報告者が日本を訪れました。特別報告者は原発事故と健康に対する権利について調査するために、東京、仙台と福島県を視察し、5月27日に日本訪問に関する報告を人権理事会に提出しました。報告書では日本政府が特別報告者の任務の遂行に対して非常に協力的であったことに対して感謝を述べつつも次のように報告しました。「原発事故は、避難者と居住者に対して肉体的、精神的な健康に対する権利、特に妊婦、高齢者や子どもに対して影響を与えた」。そして、「政府が影響を受けた人たちに対して医療施設、医薬品と医療のサービスが受けられるように確保すること」を要請しました。さらに、「原発事故の影響を受けた人びとが政府に対して透明性、説明責任、賠償のためのアクセスを自己決定することは健康に対する権利を保障するために必要なものである」などとしています。このようなことをふまえて、特別報告者は日本政府に対して以下のように勧告しました。
 「原発事故発生時にできる限り速やかに関連した情報を公開すること、放射能によって健康に影響を受けた人たちに対して、長期間で包括的な必要に応じた適切な健康診断を実施すること、より多くの人たちのあらゆる適切な健康診断の調査の回答率を増やすこと、基本的な健康診断は個々の健康状態を考慮して行い、原発事故以外の放射能による身体への影響も考慮すること、子どもに対する健康診断は甲状腺検査に限定せずに、尿検査と血液検査を含む可能な全ての健康診断を実施すること、すべての避難者と居住者、特に高齢者、子ども、妊婦などの社会的弱者に対して精神的な施設、医薬品、サービスを提供すること」などとしています。この報告に対して日本政府は「原発事故の情報の公開は既にしている、被災者の健康について中長期的な対応を行っている、被災者へのケアなどは十分に行ってきている」と勧告された項目についてほとんど既に対応済みであるなどと述べる一方、「特別報告者の科学的基礎の記述が不十分であること、科学的根拠がないことを理由に勧告を受け入れることはできない」と述べました。
 また、2013年5月17日に採択された社会権規約の日本の第3回定期報告に関する総括所見においても、健康に対する権利が保障されるように、アナンド・グローバー特別報告者が行った勧告を実施するように奨励しています。

シリアの人権問題

 シリアの大規模な人権侵害を調査する委員会(COI)の代表が2012年の6月にシリアを訪問した際の報告書を人権理事会第20回で提出していました。報告書では2012年の4月の停戦合意が守られず、状況がさらに悪化していることが伝えられ、民間人、特に子どもに対して行われる人権の侵害を非難しました。第21回の人権理事会ではシリア政府が重火器を使用していることや市民に対して攻撃を行っているなど、大規模かつ体系的で深刻な人権侵害が続いていることに深い懸念を表し、市民に対する攻撃を即時に停止して国際法に則り市民を守ることや調査団に対して協力することなどについて決議を採択しました。
 そして2013年6月4日に調査団はシリアに関する最新の報告書を提出しました。報告書では戦争犯罪と深刻な人権侵害の状況が悪化し続けていることを述べ、政府軍などによる市民への攻撃、拷問、強制失踪、性的暴力などの人道に対する罪が続いていると報告しました。また、反政府組織も処刑、拷問や略奪などの戦争犯罪を犯していると報告しました。さらに化学兵器が使用されている可能性もあるとしています。
 今会期の人権理事会ではシリアに関して2つの決議が採択されました。決議では、シリア政府が調査団に対して非協力的な態度をとっていることを非難し、全面的に協力することを要請しました。また、大規模かつ体系的で深刻な人権侵害が続いていること、基本的自由の侵害、全ての外国人戦闘員の介入について非難しました。さらに、政府側と反政府側に対して人道支援に従事する人たちと国連職員の安全を確保すること、医療に従事している者や医療施設の安全を確保することと、国際法に沿って行動することを強く要請しました。

イスラエルのUPRの審査の欠席について

 イスラエルは2013年の1月29日に予定されていた2回目のUPRの審査を欠席しました。UPRの対象国が審査を欠席するのは初めてのことでした。
 人権理事会議長は同月に「UPR制度における非協力国」に関する報告書を提出しました。議長はUPRの制度の下、全ての国家が平等に扱われることを保障し、イスラエルに再びUPRの審査に参加することを強く訴えました。第1回のUPRでは政治的な利害に偏ることなく、イスラエルを含む全ての加盟国が審査を受け、平等に扱われたと指摘しました。イスラエル代表は、ジュネーブでイスラエルと人権理事会の関係について解決するために人権理事会との建設的な対話を提案し、審査は2013年の10月に行われる予定になりました。

パレスチナ問題について

 パレスチナ占領地域におけるリチャード・フォーク人権特別報告者は報告書の中で「パレスチナ人の自決の権利の保障は全くされていない」と述べました。また、ガザ地区の状況や数千人のパレスチナ人が拘禁されたり、投獄されたりしていることなどを報告し、特別報告者に対する非協力的な態度が続いていることなどを非難しました。これらをふまえて特別報告者は、イスラエルがガザ地区の違法な封鎖を解くこと、国際社会が、イスラエルによって監禁、投獄されているパレスチナ人の状況を共同で調査していくことと、イスラエルに存在する非公表の刑務所において人権侵害にあたる刑罰や尋問が行われないために、協力するように勧告しました。

国内人権機関に関する決議

 公権力や私人間の人権侵害の解決や人権教育の推進などを行う国内人権機関について、人権理事会は、パリ原則に則った人権の促進と保護を行う独立した多元的な国内人権機関の設立の重要性と、人権の促進、保護と基本的自由の重要性をより社会に広めるための役割があると確認しました。そして、パリ原則に沿った国内人権機関の設立をすること、ウィーン宣言及び行動計画に基づいてより多元的で独立した、すべての基本的自由と人権の促進と保護のための組織にすることを要請する決議を採択しました。

その他の決議、声明、決定

 その他、教育を受ける権利、女性に対する差別の解消、女性に対するあらゆる暴力をなくすための努力、移民の人権、人権と国際的な連帯などの決議が採択されました。また、ミャンマーにおけるムスリムの人権状況についての議長声明、全てのステークホルダーにソマリアの人権状況改善の具体案の実施に向けた効果的な政策を第24回で議論することが決まりました。次回の第24回人権理事会は2013年9月9日から27日に開催される予定です。

参考:
国連人権理事会ニュース(2012年6月14日)
http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=13459&LangID=E
第23回国連人権理事会決議草案
http://ap.ohchr.org/Documents/dpage_e.aspx?b=10&se=138&t=4
第23回国連人権理事会レポート(シリア調査団のレポート、パレスチナ占領地域における特別報告者のレポート、日本に対する任務)
http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/RegularSessions/Session23/Pages/ListReports.aspx
ヒューマンライツ・ナウ(グローバー報告に対する日本政府の見解・コメント)
http://hrn.or.jp/activity/topic/post-214/
ARC 平野祐二の子どもの権利・国際情報サイト(社会権規約委員会 第3回総括所見)
http://www26.atwiki.jp/childrights/

(2013年06月24日 掲載)