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アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議、国会両院で採択

 国会の衆参両議院は6月6日、それぞれ「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」を全員一致で採択しました(衆議院・参議院)。「アイヌ民族の権利確立を考える議員の会」によってまとめられた決議案は、アイヌの人びとが、「法的 には等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされたという歴史的事実を、私たちは厳粛に受け止めなければならない」とし、政府に、「先住民族の 権利に関する国連宣言」を踏まえてアイヌの人びとを独自の言語、宗教、文化をもつ先住民族として認めること、「国連宣言」を参照しながら、有識者の意見を 取り入れ、総合的な施策の確立に取組むことを求めています。
 1996年、内閣官房長官の私的懇談会である「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」が作成した報告は、アイヌの人びとの先住性を認めていました が、格差や差別是正、権利回復に向けた措置はとられず、文化の振興を趣旨とする、アイヌ文化振興法が制定されるにとどまっています。また札幌地裁は 1997年に、二風谷ダム事件において、アイヌの人びとを先住民族にあたると判断しています。
 国連の自由権規約委員会、人種差別撤廃委員会など人権条約機関の報告審議においても、政府はアイヌの人びとを先住民族とは認めていません。01年の人種差別 撤廃委員会における日本の報告審議においても、「先住民族」に関する具体的な国際的な定義がないため、判断することができないと述べています。一 方、人種差別撤廃委員会が、「先住民としてのアイヌの権利を更に促進するための措置を講ずることを勧告する」など、条約機関から、アイヌの人 びとに対する差別の懸念や権利確保のための措置の勧告などが出されています。5月に行われた、人権理事会の定期的普遍的審査においても、複数の国から「国連宣言」実施に向けて政策をとるなどの勧告があげ られています。
 国会両院の決議も、前文で「国連宣言」の採択に言及し、その趣旨に沿って具体的な行動をとることが「国連人権条約監視機関から我が国に求められている」 と述べています。
 「先住民族の権利に関する国連宣言」は、20年以上の起草作業を経て06年6月、第1回人権理事会において採択さ れ、07年9月の国連総会で決議されました。46条から構成され、先住民族の自決権と、それに伴う政治的地位を決定し、自由に経済的、社会的、文化的発展 を追求する権利、強制的な同化や文化の破壊にさらされない権利、自分たちの土地から立ち退きを強いられない権利などを含みます。ほかにも、伝統的に所有、 占有などをしていた土地や資源に対する権利を認め、自由でかつ情報に基づく事前の同意なしに収用、占有などされた場合には、原状回復や公正な補償を得る権 利をも規定しています。人権理事会での採択の際、日本は、集団の権利や財産権に関する規定について解釈を付しながらも賛成しています。
 政府は、国会においても、アイヌの人びとが北海道などに先住していたことを歴史的事実と認めていますが、先住民族かどうかは「答えることができない」と答弁していました。決議を受け、官房長官は6日、「政府としても、アイヌの人々が日本列島北部周辺、とりわけ北海道に先住し、独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先 住民族であるとの認識の下に、『先住民族の権利に関する国際連合宣言』における関連条項を参照しつつ、これまでのアイヌ政策をさらに推進し、総合的な施策 の確立に取り組む所存」と、アイヌの人びとが先住民族であることを認め、施策確立のための有識者懇談会の設置を検討する談話を発表しまし た。(2008年6月12日)

出所:
・ 「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案」(衆議院)
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_gian.htm
・ 「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案」(参議院)
・ Summary Record of the 1444th Meeting, CERD/C/SR.1444 (国連人権高等弁務官事務所)(英語)
http://daccess-ods.un.org/access.nsf/Get?Open&DS=CERD/C/SR.1444&Lang=E
http://tb.ohchr.org/default.aspx?country=jp
・ 人種差別撤廃委員会最終見解 (外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/saishu.html
・ Report of the WG on the Universal Periodic Review on Japan A/HRC/8/44 (国連人権高等弁務官事務所)(英語)
http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrcouncil/8session/reports.htm
・ United Nations Declaration on the Rights of Indigenous Peoples (国連先住民族常設フォーラム)
http://www.un.org/esa/socdev/unpfii/en/declaration.html
・ 2007年9月25日受領答弁第24号(質問答弁・衆議院)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b168024.htm
・ 「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」に関する内閣官房長官談話(首相官邸)
http://www.kantei.go.jp/jp/tyokan/hukuda/2008/0606danwa.html

参考:
「先住民族の権利宣言の採択」ヒューライツ大阪・ニュースインブリーフ(2007年9月)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2007/09/post-8.html
「先住民族権利宣言をめぐる最近の動向」藤岡恵美子「国際人権ひろば」第74号(2007年7月)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section2/2007/07/post-251.html
「アイヌ民族はいま-文化振興法から7年経って」田中 洋一「国際人権ひろば」第56号(2004年7月)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section2/2004/07/-7.html
「『アイヌは先住民族』衆参両院で全会一致の決議採択」読売新聞(2008年6月6日)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080606-OYT1T00276.htm
「アイヌ民族地位向上決議、国会で採択」日本経済新聞(2008年6月6日)
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20080606NT000Y83606062008.html
「日本議会「アイヌは先住民族」中央日報(2008年6月8日)
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=101044&servcode=A00&sectcode=A00

(2008年06月07日 掲載)