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国際人権ひろば No.157(2021年05月発行号)

人として♥人とともに

SDGsを人権の視点で読み解く ~目標10:人や国の不平等をなくそう~

三輪 敦子(みわ あつこ)
ヒューライツ大阪所長

 ドイツの財団であるベルテルスマン財団と、国連が設置した「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が共同で、毎年、公表する「持続可能な開発報告(Sustainable Development Report)」には、各国のSDGs達成に向けた状況がランキングで示されます。2020年の報告では日本は17位でした。同報告は、各目標についての各国の進捗状況についても報告しています。日本について「進展がない」と指摘されている目標には、目標5「ジェンダー平等」、目標13「気候変動」、目標14「海の豊かさ」、データがないとされている目標には目標12「つくる責任 つかう責任」があるのですが、唯一、「後退している」と評価されている目標があります。それが不平等に関する目標10です。

 具体的には、パルマ比率(所得の最上位10%と下位40%の所得比)と高齢者貧困率(65歳以上の人口の相対的貧困率)の悪化が指摘されています。また、所得の不平等さを表すジニ係数については、2008年以降、データがないとされています。パルマ比率については1.32(2015年)であり、2012年の1.25から後退しています。高齢者貧困率については、19.6%(2015年)で、2012年の19.0%から悪化しています。不平等の解消という人権にダイレクトに関連する目標10が後退していることは日本の深刻な課題です。

 目標10には、以下の7つの具体的なターゲットがあります。

  1. 所得下位40%の所得成長率について国内平均を上回る数値を漸進的に達成
  2. 様々な属性にかかわらず全ての人の能力強化と社会的、経済的、政治的包摂を促進
  3. 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃と適切な関連法規、政策の促進を通じ、機会均等を確保し成果の不平等を是正
  4. 税制、賃金、社会保障等の政策により、平等の拡大を漸進的に達成
  5. 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングの改善及び規制強化
  6. 国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加と発言力の拡大を通じた効果的で信用力があり説明責任のある正当な制度の実現
  7. 計画に基づき適切に管理された移民政策の実施を通じた、秩序ある安全で責任ある移住や流動性の促進

 ターゲット3を測る指標は「国際人権法の下で禁止されている差別の理由において、過去12ヵ月間の間に差別または嫌がらせを個人的に感じたと報告した人口の割合」ですが、政府のウェブサイトでは「現在、提供できるデータはありません」と記載されています。

 不平等や差別については、交差性・複合性の問題に目を向けることも重要です。国連のSDGs報告2020 (The Sustainable Development Goals Report 2020)によれば、障害者の30%は差別を受けた経験がありますが、女性障害者だけを取り出すと、その割合は上昇します。

 世界的に懸念されているのがODA(政府開発援助)の減額です。これは「途上国」へのワクチン供給や実施中の様々なプログラムに深刻な影響を及ぼし、そのことで世界の不平等を悪化させます。

 新型コロナウイルス感染症は、元々、脆弱さを抱えていた人たちに、より深刻な影響を及ぼしていることがどんどん明らかになっていますが、そのなかで格差が拡大し、また差別が悪化しています。アメリカで問題になっているアジア系の人たちへのヘイト・クライムも、その一環として理解できるでしょう。これまでの事件からは女性がターゲットになりやすいことも見えてきています。加害者は倒せる相手、反撃しない相手を狙っている傾向が明らかです。まさしく複合性・交差性差別の問題です。

 日本でも、「自粛警察」という言葉で表現されるような他者への攻撃的で差別的な言動が多々報告されています。不安や不満が他者への暴力、差別、排除につながらないように、正確に状況を把握するデータの収集・発信の必要性とあわせ、社会と個人の人権意識が問われています。不安に押しつぶされることなく、「私」の尊厳と他者の尊厳が守られ、世界のあらゆる人がパンデミックから平等かつ公平に回復する社会をつくるために人権意識が鍵になります。


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