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国際人権ひろば No.145(2019年05月発行号)

人として♥人とともに

腐敗・汚職としての性的脅迫(セクストーション)

三輪 敦子(みわ あつこ)
ヒューライツ大阪所長

 今年は6月に大阪でG20サミットが開催されます。G20は、元々、財務大臣会合として始まりましたが、2008年のリーマンショックに端を発する国際金融危機を受け、首脳会合として開催されるようになりました。

 近年、G20の開催にあわせ、エンゲージメントグループ(参画/関与グループ)と呼ばれる様々なグループが会合を開き、首脳会合に対し提言を行うようになっています。B20(ビジネス)、C20(市民社会)、L20(労働)、S20(科学)、T20(シンクタンク)、W20(女性)、Y20(ユース)の7つのグループに加え、今回のG20では、U20(都市)が開催されます。市民の声を首脳会合に届けることを目的とするC20は、2013年から毎年、開催されてきています。

 このように様々なグループがG20にあわせて会合を開き、提言を提出するようになった背景には、グローバル化した世界におけるグローバルかつ複雑にからみあった課題に対応するには、政府だけではなく様々なセクターが関わることが必要不可欠との認識があります。2018年のG20ブエノスアイレス首脳宣言が、その付属文書で上記7つのエンゲージメントグループの活動を「価値ある貢献」と表現したように、エンゲージメントグループはG20の議論のプロセスの一環として位置づけられています。

 ヒューライツ大阪は、日本におけるC20の実施主体である「2019 G20サミット市民社会プラットフォーム」に幹事団体、共同代表として参加してきましたが、C20では共同議長を務めることになりました。C20は、4月21日から23日までの3日間、東京で開催されました。

 今回のC20では10のテーマ別ワーキンググループで議論が行われ、それぞれのワーキンググループで提言を作成しました。提言作成には、日本を始めとする世界の400を超えるNGOが参加して議論をおこないました。

 ワーキンググループの一つに「反腐敗(Anti-Cor-ruption)」があります。腐敗や汚職といえば、公共事業の談合に代表される税金の不適切な使用や不透明な会計処理が真っ先に思い浮かぶかもしれません。それらはもちろん、重大な腐敗であり汚職ですが、C20の「反腐敗」ワーキンググループでは、セクストーション(sextortion)という言葉で表現される「ジェンダーに基づく暴力」が重要な課題として取り上げられました。セクストーションは、ゆすり、脅迫、強要を意味するextortionという言葉に性を意味するsexをつけた造語です。ネット上のジェンダーに基づく暴力が問題になるなかで頻繁に使われるようになった言葉ですが、「物理的な力を行使することなく相手に性的な脅迫・強要を行うこと」と定義されていて、ネット環境にとどまらない言葉です。

 2018年のブエノスアイレスG20の際に策定された「G20反腐敗ワーキンググループ」の行動計画には、「ジェンダーと腐敗・汚職の関連性についての理解を深め、可能な行動について協議する」という文言が入りました。2019 C20の「反腐敗ワーキンググループ」の提言では、インフラ等と並び「ジェンダーと腐敗・汚職」についての項目が設けられ、① セクストーションを含む腐敗・汚職が女性に与える影響についてデータを収集し、腐敗や汚職を防止する政策と施策がジェンダー視点に立ったものになること、② 女性が腐敗・汚職を報告できるジェンダーに配慮したメカニズムを構築すること、③ 反腐敗・汚職プログラムへのジェンダー主流化を図り、政策形成・実施・モニタリング・評価に女性が関わること、そして④ セクストーションをジェンダー化された腐敗・汚職と暴力の一形態と認識し対応することが挙げられています。

 腐敗・汚職とジェンダーに基づく性的脅迫は、日本にも無縁な話ではありません。2018年、大きな問題になった財務事務次官による記者への対応は、まさしくセクストーションと呼べる事例でしょう。女性に対する性的脅迫は、それ自体が女性に対する人権侵害であることは言うまでもありませんが、同時に腐敗であり汚職であり、公正かつ透明性が高い社会を脅かす重大な問題です。

 G20は6月28日から29日にかけて開催されますが、その直前の25日と26日には、大阪で「G20大阪市民サミット」が開催される予定です。人権の課題がG20で十分に議論されるためにも、是非、皆様にご参加いただきたいと思います。

 

※2019 G20サミット市民社会プラットフォームのウェブサイト http://www.civil-20.jp/