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国際人権ひろば No.141(2018年09月発行号)

特集 「誰一人取り残さない社会は可能か」-持続可能な開発目標(SDGs)実現への取り組み

つづかない世界をつづく世界に変えたいというみんなの願いとしてのSDGs

新田 英理子(にった えりこ)
SDGs市民社会ネットワーク 事務局長代行

 「2030年。あなたは何才になっていますか?」「あなたにとって、2030年は何色ですか?」

 上記の二つの問いは、地域でSDGsに関する講演に呼ばれた時に、参加者に投げかけている問いである。読者の皆様も誌面を読み進める前に、2分。想像してみてほしい。

SDGsとは

 急速にSDGsが日本国内にも広がってきている。ここで、改めて「SDGsとは何か」について、SDGs市民社会ネットワーク(以下、SDGsジャパン)の立場から解説したい。国連や国、自治体や企業という立場ではなくNPO・NGOの立場からのSDGsの解説となることをあらかじめお断りしておきたい。

 SDGsは、(えす・でぃー・じぃーず)と発音し、日本語に直訳すると「持続可能な開発目標」。Sustainable Development Goalsの単語頭文字3文字と、複数形「s」で、SDGsだ。2015年9月25日の国連総会で全加盟国(193ヵ国)が全会一致で採択し、ニューヨークにある国連本部のビルがSDGsの17ゴールのロゴでプロジェクション・マッピングされた。「環境問題」や「開発問題」、「人権問題」、「経済発展」が統合された新目標として高揚感を持って採択された。

 日本では、大企業が熱心にSDGsに取り組んでいる側面がクローズアップされがちであるが、SDGsジャパンの前身団体「動く→動かす」では、2013年からSDGs策定のための多国間交渉に日本の市民の声を反映させるために、「ポスト2015 NGOプラットフォーム」を設立し、外務省と日本の市民社会との対話の窓口を担ってきた。

 SDGsの策定過程には、少数民族のグループ、女性のグループ、若者のグループ、産業界のグループなど、国家以外にもそれぞれ異なる8つのグループが関わり、バージョンアップを重ねて策定された。わたしたちSDGsジャパンも微力ながら策定過程に関わってきた自負があり、SDGsは国連が定めた遠いものではなく、さまざまな関係者が策定過程に参加し議論を積み上げてできあがったものだと認識している。

宣言文も読むと理解が深まる

 カラフルな17の目標のロゴと、その目標を達成するための具体的な169のターゲットと、その目標の達成度合いを測るための230の指標からなる目標群だけが、SDGsなのではなく、国連で採択された文書の正式名称は、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development)だ。① 前文、② 宣言(全91パラグラフ)で構成されており、宣言の中に、理念や背景、他の国際条約との関係性、どのように実施してフォローアップを行うか、などが記載されている。SDGsジャパンでは、目標とターゲットのみならず、理念や背景が重要であると考えており、「2030アジェンダ」の外務省仮訳に、SDGsジャパンのメンバーが専門的見地から一部修正した日本語訳を冊子にまとめ、販売している(注

なぜ「誰一人取り残さない」が一番大切な理念なのか

 ここで、みなさんと共有しておきたいのは、以下5つのポイントだ。一つは、そもそも持続不可能性(限界)が近づいている地球や地域を持続可能な地球や地域に変革するための目標であること(わざわざ国連で持続可能性に言及しなくても、社会全体が持続可能性にあふれていれば、このような目標自体を作る必要が無かったといえるのではないか。それほど、世界や地域の限界が近づいていることを表す事柄が増大しているのではないか)。

 二つ目は、その変革の方法は、「誰一人取り残さない」(Leave No One Behind)であり、もっとも困難に直面している人や事から手をつけていく決意が謳われていること。三つ目に、経済・社会・環境の三側面が統合された開発であることが、目標達成のために必要であると明確に打ち出されていること。四つ目に、課題間のつながりを重視していること。例えば、ゴール1の「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を無くす」という目標を達成するためには、保健や衛生・ジェンダー・経済・環境・まちづくりなど様々な要素の課題も絡み合っていることが容易に想像できるとおり、SDGsの各ゴールは完全に独立したものと見なすのではなく、他のゴールの視点も同時に持つことが重要であること。そして、5つ目のポイントとして、193ヵ国が合意したという普遍性。そのことは、SDGsが、行政にとっても企業にとってもNPO・NGOにとっても、あらゆる組織や人に「共通言語」になる可能性があるということだ。

SDGsジャパンを例に、具体的には?

 SDGsジャパンは、「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現に取り組むNPO・NGOを中心とした市民社会のネットワークであり、2017年2月に法人化し、現在は様々な分野に関わる100ほどの加盟団体と共に、以下の4つの活動を展開している。

  1. SDGs達成のための政策提言
  2. SDGsの広報・普及啓発
  3. 市民社会と民間企業、政府、研究機関、国際機関などとの連携の強化や問題解決策の提示
  4. SDGs達成のための調査・研究

 11ある活動ユニット(1.国内貧困・格差分野、2.開発・国際協力分野、3.保健医療分野、4.教育分野、5.ジェンダー分野、6.障害分野、7.地方創生・地域課題分野、8.防災・減災分野、9.社会的責任分野、10.環境分野、11.ユース分野)で事業を推進している。各ユニットの活動がさらに活性化され、より多くの方々が参加出来るような組み立てを行うことが今後重要になってくると考えている。

SDGsの達成に向けて-ユースユニットの動きから

 SDGsの目標の達成を図るために、国連では年に1度7月に進捗共有を行っている。SDGsジャパンのユースユニットで活躍しているJYPS(Japan Youth Platform for Sustainability)は、2018年も10数名でニューヨークの国連本部からハイレベル政治フォーラムの様子を日本にレポートすると同時に、「国連子どもと若者のメジャーグループ」の一員として本会議やサイドイベントにて若者として提言を行ってきた。2017年には日本がVNR(自発的国別レビュー)を行ったので、SDGsジャパン全体でオルタナティブレポートとして、『SDGsに関する日本の現状と政策・実施メカニズムの在り方』を日・英で作成し、当日配布すると同時にSDGsジャパンのホームページで発表を行った。

 残念ながら現在の日本政府のSDGs推進の方向性は、経済効果の大きなビジネス部門に手厚い傾向があるのではないかと考えており、取り残される人権や、環境問題、格差の問題を議論の場に戻すように、国連レベルでも、国政レベルでも、地域レベルでも活動を行う必要があると考えている。

市民社会によるボトムアップ・アクションプランの作成へ

 日本政府は2018年のSDGsの実施指針を「アクションプラン2018」としてまとめたが、SDGsジャパンではオルタナティブな「ボトムアップ・アクションプラン」を作成中である。政府のプランには市民社会の視点が不在で、貧困問題も子どもの貧困に限定されていることなどから、ネットワークに参加しているNPO・NGOのみなさんと議論を重ね、SDGsの達成により寄与するためのアクションプランを作成している。7月27日には、フォーラム「SDGs2018年ハイレベル政治フォーラム報告とNPO・NGOがさらに向き合う社会課題についての新しい視座について考える」を開催した。テーマを「情報公開の課題」、「セクハラの問題」、「原子力の問題」、「移民政策の問題」とし、それぞれについて活動しているNPO・NGOメンバーとSDGsの推進について話し合った。

 SDGs達成のための取り組みはまだまだ途についたばかりだ。遅い、早いではなく、持続可能な社会のために多くのステークホルダーが本来のグローバルパートナーシップを進め、次世代により豊かで活力のある地球を引き継ぐ責任を果たしていくための活動ができればと考えている。ぜひ、みなさまの参加をお待ちしています。

 

注:ホームページ(https://www.sdgs-japan.net/)の「ツールキット」からお申し込みいただけます。


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