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国際人権ひろば No.67(2006年05月発行号)

ヒューライツ大阪事務局の新体制

ヒューライツ大阪では、2006年4月から5月にかけた異動によって事務局体制がかわりました。
[退任] 所長の川島慶雄(理事として留任)、事務局長の笠原純一(大阪市から出向)、長澤 光(教育研修生)の3名が退職しました。
[新任] 所長の白石 理(元国際連合人権高等弁務官事務所人権担当官)、事務局長の大橋敏弘(大阪府から出向)、米田彰男(教育研修生)の3名が新たに加わりました。

新スタッフの自己紹介


白石 理 (しらいし おさむ) 所長
  この5月よりヒューライツ大阪の所長を務めさせていただくことになりました。これまで二十数年の間国際連合の人権分野で働いてきた後の新たな挑戦です。
  これまで国際社会では、人権にかかわる議論や活動がともすれば欧米中心、主導で展開されてきたことは否めません。1993年の世界人権会議を契機として、近年になってようやく世界の様々な地域の視点から人権に取り組む動きが出始めました。ヒューライツ大阪の設立された1994年は、奇しくもこのような時期と重なり合います。
  アジア・太平洋地域を対象とし、また基盤として位置づける人権議論や人権活動の重要性は、これまで以上に増しています。アジア・太平洋地域の人権のために、そしてこの地域からの貢献によって人権が真の普遍性を獲得するために、ヒューライツ大阪の果たすべき役割は大きいといえます。その設立当初の目的は、12年たった今なお変わらず生きています。この目的は、言葉を変えていえば、多様な社会の中に普遍的人権を実現していくことであり、それはすなわち、「だれでも、どこでも、いつでも、一人ひとりが、みな平等で尊い存在である」という人権の原点に帰ることでもあります。
  人権は、人が生きる場で実現されるべきものです。国際人権という用語は、人権が国際と国内で異なるものと受け取られかねませんが、実は護られるべき人権の国際的規準を指しているのです。あくまでも地域社会で生活する人々のためのものなのです。その意味で、人権が日常生活のことばとして社会に根付くことを求めたいと思います。
  以上のような考えと期待を持って、及ばずながら尽力し、この責務を果たしたいと考えています。皆様のご指導とご鞭撻をお願いいたします。

大橋 敏弘 (おおはし としひろ) 事務局長
  2006年4月1日付で大阪府から派遣され事務局長に着任いたしました。その前は、大阪府教育委員会施設課で府立の高等学校などの施設整備や、市町村立小中学校に対する国の施設整備補助金などを担当していました。少し前になりますが、女性政策課で大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)の設立に関わる仕事をしていたこともあり、この経験が今回の仕事の一部にでも役立てばと思っています。国際的な人権の伸長、アジア・太平洋地域における人権尊重、人権情報の受発信や国際機関、NGO・NPOの方々との関係など、戸惑うこともたくさんありますが、新しいことを学び、体験していくことは自分自身にとっても大切なことだと考えていますので、頑張っていきたいと思います。

米田 彰男 (よねだ てるお) 研究員
  はじめまして、この4月からお世話になっています。32年間の教師生活で、どっぷり学校文化に浸ってきたので若干戸惑っています。高等学校での人権教育の推進に向けて部落解放教育や在日外国人教育や障害児教育等の条件整備に取り組んできました。国際交流では、韓国と大阪の高校生の交流拡大に関わってきました。
  個人の活動として1995年からミャンマー(ビルマ)での教育支援を行っていますが、最近仕事が忙しくて取り組みが低調になっています。ヒューライツ大阪での仕事をきっかけに取り組みを強める決意です。よろしくお願いします。


共催セミナー「ヨーロッパの歴史和解で市民社会が果たした役割
~東アジアの和解実現に示唆するもの」を開催(4月4日)の報告

  ヒューライツ大阪は06年4月4日、ドイツをはじめとするヨーロッパにおいて、過去の責任を克服するために活動している市民社会団体の役割に関して研究している米国のジョンズ・ホプキンズ大学・上級研究員のリリィ・ガードナー・フェルドマンさん(Lily Gardner Feldman)の来日を機に、フリードリヒ・エーベルト財団、東京経済大学国際和解研究所、スタンフォード日本センターの協力を得て、大阪市立弁天町市民学習センターでセミナーを開催しました。
  フェルドマンさんは、ドイツの市民社会における和解に向けた最初の努力は第2次世界大戦直後に遡ると振り返り、同国による歴史和解をめざした外交において、市民社会が果たした重要な役割をフランス、イスラエル、チェコ、ポーランドの4カ国との関係に絞って以下のように報告しました。

過去に向き合い、合意と対立を認識する
  「和解」とは二国間(政府および市民社会)において、かつての敵国同士が長期的な平和構築に取り組む過程を指したもので、それらを通して信頼、共感、寛容が育まれること、そのためには互いの協調によって対立解消に取り組む姿勢が求められるのである。政府同士の関係にもたらす国境を越えた市民社会の活動の重要性に着目しながら、市民社会団体の活動を「先駆け」、「補完者」、「パイプ役」、「対抗者」としての4つの役割から上記4カ国について述べる。
  4カ国に共通する「先駆け」の役割を積極的に果たしたのはカトリック、プロテスタント、ユダヤ教などの宗教団体で、ドイツとの友好条約締結への先導役となった。
  政府の活動を「補完」、またはそれと並行する形で活動する市民社会団体の活動として特筆すべきことは、1950年代に設立された仏独教科書委員会や、70年代のドイツ・ポーランド教科書委員会、90年代のドイツ・チェコ歴史委員会。そうした教科書・歴史委員会のめざしたものは、冷静なアプローチで歴史や地理の研究に取り組むことを通じて、「人畜無害」の歴史観を共有することではなく、過去に向き合い、合意が得られる部分と対立する部分を認識することにあった。
  「パイプ役」の主要な担い手は、ドイツの場合、たとえばフリードリヒ・エーベルト財団など主要政党を母体とする独立したNGOとしての政党財団である。そうした財団はそれぞれの国に事務所を設置して、駐在国の与党や野党との関係構築に務めている。
  市民社会団体があからさまな「対抗者」として活動した場合、ときとして二国間に困難な論争を引き起こす可能性があるものの、和解関係が築かれていれば議論や対話を通じて敵対的な雰囲気を解消することができるのである。
  ドイツの歴史和解は、市民社会のアクターがいだく道義的動機とともに実利的動機に基づいて行われてきた。ときには同じアクターのなかにその二つの動機が存在している場合もあった。4カ国の事例のいずれにおいても基本的には宗教、学術、労働組合、青年、メディア、自治体の姉妹都市、交易などの交流はすでに制度化されている。なかでも宗教団体、政党財団、友好協会などがとりわけ活発に活動してきたのである。

  セミナーでは、フェルドマンさんの講演に先立って、東京経済大学・国際歴史和解研究所の客員研究員アンドリュー・ホルバート(Andrew Horvat)さんが、ヨーロッパの脈絡を知るための背景説明を行いました。また、講演を受けて、長年にわたり韓国・朝鮮、および中国との歴史和解の問題に取り組んでいる神戸学生青年センター・館長の飛田雄一さんから、日本の市民活動の立場からコメントをしていただきました。

ライブラリー・コーナー

ヒューライツ大阪が所蔵するアジア・太平洋や国連をはじめとする人権に関する資料は、開館時間内(平日の9:30~17:00)なら、どなたでも資料を閲覧できます。会員の方には貸出サービスをしています。詳しい利用案内は、https://www.hurights.or.jp/archives/を参照。ホームページ内の「所蔵資料検索」から「在日外国人」のキーワードで2005年~2006年発行を検索すると21件ヒットしました。その内のおすすめ数点を紹介します。
  • 『日本における外国人・民族的マイノリティ人権白書』(2006年) 外国人人権法連絡会編 / 外国人人権法連絡会, 2006.3
  • 『ちがうことこそすばらしい! 子ども作文集』 全関西在日外国人教育ネットワーク, 2006.2 [届け! 私の思い 2]
  • 『多民族共生教育フォーラム : 資料集 : 外国人・民族的少数者の教育権を実現しよう』(2005) 林 同春編 / 多民族共生教育フォーラム2005実行委員会, 2005.9
  • 『「外国人の司法への参画を考える」シンポジウム報告書』近畿弁護士会連合会人権擁護委員会 :「外国人の司法への参画を考える」シンポジウム 実行委員会, [2005]