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国際人権ひろば No.64(2005年11月発行号)

特集 真の友情を築く市民交流のための韓国スタディツアー Part3  - 参加者の感想より -

一人ひとりが連帯を創り出すきっかけに

原田 博司 (はらだ ひろし) 科学技術学園高等学校(広域通信制)

「韓日市民フォーラム」で充実の時を過ごす


  スタディツアーでは、解放60周年の記念すべき行事が盛り込まれていて、参加者にとっては非常に充実した内容に溢れていた。私の報告はその一つ、韓日市民社会の交流と協力のための「韓日市民フォーラム」について報告したい。
  真剣な会議、張り詰めた空気。私にとっては、心地よい緊張感で疲れも吹っ飛んだ。日本の憲法についての発表と意見交換については、韓国の青年から「第9条の問題もあるが、第1条から第8条の天皇についての条項が問題、日本ではどういう議論となっているのか」というような意見が出された。天皇の戦争責任を含め、日本人にとってまさに戦争責任本質の提議であった。突然の質問に、参加した日本人に即答できることは難しい。参与連帯平和軍縮センターのイ・キョンジュさんが答えた。「日本は敗戦後平和憲法を遵守し、平和主義を貫いている。天皇制については日本自身が考える問題だ」というような答えではなかったか。
  私は思わず手を挙げた。「日本は敗戦後、平和憲法を貫いているとは考えていない。朝鮮(韓国)戦争・ベトナム戦争...。日本からの軍需物資補給で可能になった朝鮮戦争、沖縄(琉球)から離陸する北爆のB52。アメリカの覇権主義の傘の中、経済発展の見返りに協力を強要された日本に平和憲法を貫いたと本当にいえるのか」。
  日本統治を知る男性から流暢な日本語で話しかけられた。「日本は確実に軍国主義化している。戦争に参加したいと思っている。知らないのは日本の人たちだけ」。日本やアジアの将来を気遣う言葉であった。
  フォーラム終了後の夕食会でも、参加者の会話で満ちていて、あっという間に終了時間となった。そこでは様々な話題に及んだ。日本や韓国の青少年の実態について、軍事政権時代の韓国について、日韓の学生運動や、労働運動についてなど。戦争や植民地支配の被害者は国家ではなく、一般庶民なのだと。
  フォーラムでも発題されたコリアNGOセンターの代表理事、鄭甲寿さんはその著書「〈ワンコリア〉風雲録」でこう述べている。「私は、日本の若い人たちにアジアに関心をもち、友人を作ってほしいと願っています。彼らには『脱亜入欧』を乗り越え、アジアの仲間とともに人権と民主主義が尊重されるアジアを築いてほしい、そして『アジア共同体』を一緒に作ってほしいと思います。そうして世界の平和と発展に貢献し、世界の人々から心から尊敬できる日本にしてほしいと願っています」。なんと日本への愛情溢れる言葉であろうか。

参与連帯の活動


 参与連帯の活動内容が緻密でかつダイナミックな行動力によって支えられている点にまず圧倒された。参与連帯の「基本精神」のなかで、「国民が名実ともに国の主人になるためには、日々、国家権力を厳しく監視する番人でなければならない」と主張している。力溢れることばである。国政のあらゆる分野を監視し、具体的な行動を、市民の力を結集する。特に経済分野における監視活動では、経済構造の問題点を厳しく分析し、企業支配構造の改善をターゲットにした法律制定あるいは改正を視野に入れながらさまざまな活動を展開している点に輝きがある。大いに賛同したい。
  フォーラムでは日韓双方から合計4つの発題がなされ、いずれも戦後60年間における東北アジアの情勢分析と課題についての提議であった。その内容は?東北アジア戦後秩序の分析と今後の課題、?日米安保条約と平和憲法、?歴史の清算と「日・韓・在日」市民の未来、?日本の歴史教科書問題について、であった。それぞれが過去の正確な分析と未来志向の話となり、予定していた時間があっという間にすぎてしまった。

人権問題は経済問題


  人権尊重教育を展開する際、その障害となるものは多いが、私は経済的要因が大きいと考えている。人権学習は、その前提として経済インフラの整備、経済構造の改革が行われないと学校に対する信頼は得られない。学校を卒業してもそれを活かす仕事のない社会では、人権尊重教育はパワーを持たない。税制改革による、法的に保障された所得の再分配が重要である。市民レベルの監視活動と司法や行政機関への強い働きかけが欠かせない。ここに参与連帯が権力監視を続けている大きな意義がある。

スタディツアーに参加して


  今回のスタディツアーでも多くの出会いがあった。市民レベルの連帯とは出会いの数である。ヒューライツ大阪のスタディツアーに3回参加したが、人権というテーマで集う人々が今後様々な分野でこれらの経験や学習を生かすだろう。このツアーでの出会いが新たな交流やネットワークを広げる。その中にこそ一人ひとりが市民レベルの連帯を創り出すと私は思う。