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国際人権ひろば No.61(2005年05月発行号)

現代国際人権考

戦後60年で思うこと-日本の宗教界の歩み

佐々木 兼俊 (ささき けんしゅん)
『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議議長・ヒューライツ大阪理事

  2005年は、人権の歴史にとってさまざまな意味で節目の年である。
  まず、第2次世界大戦が終結し、60年にあたる。この戦争を深く反省するなかで、1948年12月10日、第3回国連総会で世界人権宣言が採択された。この宣言の基本精神は、「差別を撤廃し、人権を確立することが恒久平和を実現することに通じる」ということにある。この基本精神こそ、21世紀において、人類が受け継ぎ実現していかなければならないものである。
  日本における人権運動の要である部落解放運動にとっても2005年は、節目の年にあたる。
  敗戦直後の1946年2月、部落解放運動は、部落解放全国委員会として再建された。その後、運動の拡大を受けて、1955年8月、部落解放同盟と名称を変更し、国策樹立を求める運動を開始してから50年にあたる。1965年8月、同和対策審議会答申が出され、「同和問題の早急な解決の責務は国にあり、同時に国民的な課題である」ことが明らかにされた。これを受けて1969年7月、同和対策事業特別措置法が制定され、本格的に同和対策事業が実施されることになったが、その答申から40年近くになる。
  1979年8月、アメリカのプリンストンにおいて第3回世界宗教者平和会議が開催された。この会議において、日本からの参加者、全日本仏教会理事長が、日本における部落差別の事実を否定し、部落解放運動を誹謗する重大な内容の差別発言を行った。この差別発言により、1979年12月に、差別発言の当事者を除く同会議への出席者に対し、部落解放同盟の事実確認がなされ、さらに続いて1980年11月に差別発言糾弾会が行われた。差別発言の当事者およびその所属する教団は、全日本仏教会とともに、1981年1月第1回の確認・糾弾をうけたのを初めとし、以後4回にわたる糾弾をうけるところとなった。
  第3回世界宗教者平和会議における差別発言は、わが国のすべての宗教教団にとって、永久に忘却しがたい深く重大な影響をもたらせるものとなった。そしてこの発言は、われわれ宗教者および宗教教団が、その歩んできた道のいかに誤れるかを反省し、新たに歩むべき道のいかにあるべきかに、深く思いをいたす契機となった。われわれ宗教者および宗教教団は、他の痛みを自らの痛みとし、あらゆる苦悩から人間を解放し、真の幸福を実現せしめ、おのおのの生を全うすることを宗教的願いとしている。
  しかるに、その長い歴史の過程にあって、多くの過誤を犯すところとなった。即ち人の上に人を置き、人の下に人を置くことを許すような社会の形成をわれわれは自らの手で支えてきた。しかも、熱と光を願求礼讃する「いのち」の叫びも、差別によってしいられた苦悩も、わがものとしなかった。1980年11月糾弾会が終了した後、若干の教団代表者が相集い、宗教者懇談会を開き、この会合において、宗教者と宗教教団による部落差別解消への取り組みについて、宗教者はおのおのの教義のちがいを認めつつ連帯をする以外にその方途のないことが確認された。この会合での確認をふまえ、1980年12月に同和問題にとりくむ全国宗教者結集集会を開催するための第1回の会議が開かれた。その後、数回にわたる会議を重ねるとともに、さらに多くの教団を加えた実行委員会が結成された。
  1981年2月の会議では、同年3月に東京において同和問題にとりくむ全国宗教者結集集会を開催することにし、代表4教団の連名によるよびかけ文を確定し、全国の宗教教団へ送られることが決定された。
  このことにより、1981年3月、東京都内の砂防会館を会場に仏教、神道、キリスト教等55教団・3連合体から989名の出席を得て、同和問題にとりくむ全国宗教者結集集会が開催された。
  この集会において、われわれ宗教者・およびわれわれ宗教教団は、結集を求めるよびかけ文の精神、すなわちわれわれは、深き反省の上に立ち、教えの根源にたちかえり、同和問題解決への取り組みなくしては、もはや宗教者たりえないことを厳粛な事実として、深く認識するにいたった。また、同和問題解決への取り組みにあたっては、広く宗教者および宗教教団が連帯し、ともに歩む以外にその方途のないことも、あわせて確認した。さらにこの集会に結集した宗教者は、同和問題解決への取り組みについて、自らの姿勢を律するための宣言を行った。この宣言において、おのおのの教義の基本精神へたちかえることを誓い、もって部落差別をはじめとする一切の差別を許さない宗教者および宗教教団となることを決意した。また、同和対策事業特別措置法の強化改正を求める決議を行うことにより、姿勢の一端を表明した。1981年6月京都、真言大谷派宗務所において、同年3月の同和間題にとりくむ全国宗教者結集集会のよびかけと宣言、および決議をもって連帯の基本理念とする、「『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議」を結成し、この会議の結成理念を掲げる前文と規約を決定した。
  「『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議」は、さらなる発展を期するため、1987年4月に開催した総会において、新たな前文と規約を決定した。以来、われわれは差別撤廃をめざして地道に活動を継続している。(2005年4月1日 記)