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国際人権ひろば No.58(2004年11月発行号)

Human Interview

FM CO・CO・LOは多民族・多文化」というイメージが定着するような番組を制作し続けたい

冨田 智美 さん (とみた さとみ) FM CO・CO・LO プロデューサー

プロフィール:
京都市出身。FM CO・CO・LO(76.5MHz)に入社して3年。「英語を使う仕事」「社会的に意義のある仕事」という二つのキーワードを秘めて就職活動中にFM CO・CO・LOの求人に遭遇。即応募したところプロデューサーとして採用された。趣味は読書、映画鑑賞など。

聞き手:藤本伸樹(ヒューライツ大阪)


藤本:これまで「国際人権ひろば」では、FM CO・CO・LOで放送されている15言語の番組のDJの方々に、それぞれの番組紹介や出身国、日本での生活などについてお話をうかがってきました。番組で使用されているすべての言語を網羅したわけですが、今回はこの連続シリーズの総括編として、プロデューサーの冨田さんにお話をうかがいます。最初に、番組を制作・放送するにあたって、そもそもプロデューサーの役割とは具体的にどんなものなのか、お聞かせください。

冨田:番組によってけっこうまちまちなのですが、基本的には最初に番組ごとに枠組みを設定しているため、DJ、スタッフ、そしてディレクターが日々の制作業務に携わっています。だから、プロデューサーが制作に細かく立ち入ることはないのですが、枠組みの主旨に沿って番組が制作されているかどうかをみておくのが基本的な役割のひとつです。
  FM CO・CO・LOの言語別番組の場合、DJがあまり日本語を得意としなかったり、リクエストやメッセージなどを日本語以外の言語で送ってくるリスナーもいますので、通訳・翻訳に関わる作業もします。また、番組でゲストを呼ぶときには交渉をしたり、頻繁に連絡をとっている各国の政府観光局などにもプロデューサーが調整を担当することもあります。

藤本:番組の枠組みはどのように設定されるのでしょうか。

冨田:DJのキャラクターにもよるので、一言では説明しにくいですが、関西在住の出身国ごとの滞在者数や状況にもよると思います。たとえば、フィリピン語の番組の場合、在住フィリピン人も多いことから、DJのシンディさんは日本での生活情報に重点を置いています。この場合の枠組みは、各国語放送を始めた最初の主旨に沿ったものです。
  一方、放送していくにつれて日本人のリスナーも増えてくると、同じ出身国の人に向けて放送するだけでなく、日本人に自分の国のことをもっと知ってもらいたいという思いを強くするDJも出てきました。たとえば、オーストラリアなど英語圏出身の人たちは、FM CO・CO・LO以外でも英語で生活情報を得る手段は他にいくつもあるわけですよね。したがって、英語のDJたちは、日本人に故郷のよさを紹介したいという気持ちを強くして、日本語での会話の比率を高めた番組にするというパターンもあります。

藤本:そうすると、日本人リスナーもその国の文化や音楽に徐々に触れていくことができますね。そういえば、中国語番組のシャオ・チェンさんへのインタビューのとき、日本人リスナーのなかには、たとえば香港の人気歌手の新譜情報にすごく詳しい人もいて、FM CO・CO・LOがまだ入手していないCDのリクエストが舞い込むことがある、という話がありました。

冨田:歌のリクエストだけでなく、お気に入りの歌手や俳優の来日予定日と日本での連絡先までも知らせてきて、番組でぜひインタビューをしてくださいといったメッセージを送ってくる人もいるんです。香港だけでなく、中国や、台湾、もちろんいま大ブームの韓国に関しても同様のリスナーがいます。
  たいていの番組では、最新映画情報のコーナーを設けていますが、そうした要望を受けて、芸能ニュースのようなものも取り扱っています。

藤本:FM CO・CO・LOでプロデューサーをするということは、まさに異文化の狭間にいることになるわけですが、仕事を通じて新たな発見はありましたか。

冨田:DJ全員に対する印象なんですが、それぞれ自分の故郷や国について紹介するときの熱心な姿勢に驚いています。愛郷心というのでしょうか。日本の人にもわかってもらいたいという気持ちがとても強いのが感じとれます。

藤本:異文化だらけの職場のなかで、苦労することもあると思いますが。

冨田:最初のころ、時間の感覚の違いにとまどいましたね。提出してもらいたい資料の期限日にきっちり間に合わせる人もいれば、いつまでたっても、催促してもなかなか出してくれないDJもいるのです。結果をみていくと、けっこう出身地ごとに国民性というか共通性のようなものがあるのではないかと思ったりもします。もう慣れたとはいえ、これがいまも続く私の最大の苦労でしょうか。

藤本:ほかに苦労話はありますか。

冨田:こちらの言いたいことをどうやったらうまく伝えることができるか、ということに頭を抱えることがしばしばあります。しかし、突き詰めて考えると、異文化だからコミュニケーションの際に苦労するということではなく、最終的には各々の個性の問題ではないかと思います。「異文化だから理解しあうのが難しい」とよく言われますが、かえって日本人間の相互理解のほうが苦労することが多かったりしますよね(笑)。

藤本:番組制作に関わっていてよかったなという感触を得る瞬間はどんなときですか。

冨田:たとえば、ベトナム語の番組の場合、日本人の関心も高い一方で、在日ベトナム人に対する情報提供に力を入れて制作しているのですが、放送の届かない福島県から「大阪の友達からカセットテープを送ってもらって毎週みんなで聞いています」というようなメッセージが届くこともあります。たぶん、企業への研修生の人たちだと思いますが、そんな連絡をもらうと、やっていてよかったと感じます。また、音楽CDを送ってきて、これを番組でかけてより多くのリスナーに聞かせてあげてくださいという人もいます。

藤本:外国人リスナーからの相談なども舞い込むのではないでしょうか。

冨田:在留資格やビザに関する深刻な相談がけっこう寄せられます。そういうときは、外国人を支援するNPOの多文化共生センターなどを紹介したりします。それにDJが個別に対応することがあるのですが、日本語の得意なDJは相談の通訳ボランティアを引き受けている場合もしばしばあります。

藤本:通訳といえば、各国語放送でDJが話す言葉の詳細について、ディレクターもプロデューサーもほとんど理解できないですよね。内容チェックのしようがないのではないでしょうか。

冨田:これはディレクターから聞いた話ですが、同じDJが担当する番組を半年くらい続けていると、最初はまったくわからなかったのが、徐々に何となく大筋の話がわかってくるそうです。もちろん、細部までは把握できないので、結局のところ番組前の綿密な打ち合わせとDJとの信頼関係を前提に放送しています。

藤本:FM CO・CO・LOの番組は、日本人の国際理解の推進にも大きく役立っているのではないでしょうか。

冨田:これまで外国や外国語に興味がなかったり、言葉がわからないので敬遠してきた人たちが、ちょっとでも楽しさを見つけて関心を持って番組を聞き始めてもらうのが、国際理解の第一歩かなと思います。いま、韓国ブームですが、そこから日本人の韓国理解も広がっていけばいいのではないでしょうか。もっとも、ちまたでは韓国語の学習熱も高まっているため、4人の韓国人のスタッフは韓国語学校の講師も頼まれ大忙しなので、番組制作のスケジュール調整に苦心しています。
  また、2004年は、大阪市と中国の上海市が友好都市となって30周年です。これを記念して10月10日、FM CO・CO・LOは上海人民広播ラジオと連携して、史上初の上海・大阪同時生放送の特別番組を2時間放送しました。2都市のトレンド比較や、上海で活躍する日本人、日本で活躍する上海出身者からのメッセージなどを盛り込んだ番組でした。
  番組中に中国のリスナーからもたくさん温かいメッセージが届きました。「中国では反日感情がしばしば話題になるけれど、市民同士では仲良くやっていきましょう」といったものもありました。

藤本:最後になりますが、これからどんな番組作りをしていきたいですか。

冨田:ラジオ番組に限らず、これまで以上に、多文化を紹介するようなたくさんのイベントを開催してゆきたいです。そして、FM CO・CO・LOイコール多国籍、多民族というイメージが定着していくことを願っています。

(※02年5月発行の「国際人権ひろば」以来、多国籍で構成されるFM CO・CO・LOのスタッフの方々に16回連載でインタビューを行ってきましたが、今回で終了させていただきます。ご愛読ありがとうございました。)