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国際人権ひろば No.52(2003年11月発行号)

特集 日韓で議論した「人権教育交流ソウルセミナー」 Part1

日韓の共同の努力で、人権文化を根づかせよう! -「男女共同参画社会をめざす日韓人権教育交流ソウルセミナー」の報告

朴 君愛 (パク クネ) ヒューライツ大阪主任研究員

 03年8月26日から30日の日程で「男女共同参画社会をめざす日韓人権教育交流ソウルセミナー」(主催:ヒューライツ大阪、 現地共催:韓国女性民友会、韓神大学教育大学院、協賛:国際交流基金)を開催し、日本から男女平等教育・人権教育に携わる教育関係者など14名が韓国を訪問した。
 この企画は、2002年11月に大阪で開催した「男女共同参画社会をめざす日韓人権教育セミナー」の成果を受けたもので、韓国に場所を移し、女性をめぐる現状と政策や教育活動での相互比較や意見交流を深めることを模索した。
 メインのプログラムは二つのセミナーの開催であった。一つは、韓国女性民友会と共催したセミナーで、女性の全般的な状況と労働の現場での課題や取り組みをテーマにした。もう一つは、京畿道烏山市にある韓神大学の教育大学院と共催したセミナーで、学校における男女平等教育のシステム、実践の推進をテーマにした。
 セミナー以外に、韓国国家人権委員会や女性省を訪問し、性差別を含む人権問題とその解決に向けた韓国政府の取り組みを学んだ。また87年の結成以来女性運動の分野で精力的に活動しているNGO、韓国女性民友会の本部事務所を訪問交流し、ソウル市内の中学校の性平等をテーマにした授業見学も行った。
 短い滞在ではあったが、変革の最前線にいる人たちとともに家父長意識が非常に強い人たちとも席を同じくするという体験をした。
 準備・運営の過程ではコミュニケーション文化の違いもあり、うまく意図が伝わらないこともあったが、人権・男女平等に向かって志を同じくする韓国の人権運動と女性パワーに直に出会い刺激を受けた。以下、韓国側の発表を中心に2つのセミナーを簡単にまとめて報告としたい。

セミナー1:人権の視線でみた日韓の女性の働く現状

 8月27日午後に、韓国国家人権委員会の会議室(NGOや市民の研修などに利用される)にて開催した。共催団体の韓国女性民友会の共同代表、チョン・カンジャさんがコーディネーターを担当し、日韓から4名の発題があった。
 はじめの発題「男女共同参画社会実現に向けた日本の状況」では、女性の政治参加率の低さ【表1参照】、育児と仕事の両立の困難さ、女性に対する暴力の深刻さ、女性の進学率、女性教員の割合の現状などが数字で紹介された。男女共同参画社会基本法の制定以降、さらに法整備が進みつつあるが、それに逆行する動きについて憂慮が示された。これは日本に限らず世界的な傾向であり、今こそ女性たちが現状を的確に把握し、自己決定できる力をもつこと、アジアの女性たちと連帯していくことが大事であると述べた。

【表1】女性の政治参加・国会議員の割合(02年)
日本7.3%(衆院)7.1% 34名、(参院)15.4% 38名
韓国5.9%[6.2%]273名中 16名[17名]
※日-03年夏の男女共同参画白書。(衆院・参院は03年3月現在)
  韓-2000年選挙。[ ]は補欠選挙後の変動

 次に「韓国女性運動の現実と課題」というテーマで、聖公会大学社会文化研究センター研究教授で、女性の政治参加を促進するNGO「女性政治勢力化民主連帯」運営委員のチャン・ミギョンさんが、韓国の女性運動のこれまでの「見取り図」を示し、分野別の運動の実践について分析を行った。
 「現在は、学生運動出身者が担う社会変革運動の性格をもつ女性団体が社会的に影響力をもっている。『女性民友会』や『性暴力相談所』などがその代表例であり、80年代半ば以降、女性解放の意識を明確にして出現し90年代に活発に活動している。最近は、新自由主義やグローバリゼーションの問題と女性問題とを結合させようとする新鋭のグループも出ている。
 分野別では性暴力やセクハラに反対する運動、職場での性差別是正や母性保護・保育対策などを要求する労働運動、民主化・南北統一・反戦平和運動、政治参加促進をめざす運動、戸主制廃止など家族に関連する法律改正運動などが実践としてとりくまれてきた。
 今後の課題として、法律や政策は実現したが、その実効性の確保の問題や文化・意識にせまるアプローチの必要性などがある。また女性運動が力をつけ制度化される中で、運動自身の保守化が懸念されたり、環境・マイノリティ・平和・統一運動などの課題と女性運動をどう結合させるのか、運動理念の転換が求められている」。

 3番目の連合大阪副事務局長の脇本ちよみさんの発題は「日本の働く女性の現状と課題」がテーマで、政府資料をはじめとするデータを示しながら、雇用における日本の女性の現状を紹介した。すなわちM字カーブの女性労働力(結婚や出産でいったん仕事をやめ数年後にまた働く)【表2参照】、賃金格差(所定内給与男女格差 66.5%(02年)【表3参照】)、パート、アルバイト、契約など非正規職の雇用形態の増加などが起こっており、「男女雇用機会均等法」「パート労働法」などの現行の法律もなかなか遵守されない。しかも既存の法律では女性の労働を十分保障できない現実があると指摘した。日本は少子高齢社会が到来しているが、今後の取り組みとして、多様な働き方を自ら選択できるための「均等待遇」を実現していくことが肝要であると述べた。

【表2】女性の労働力率(日/02年,韓/01年)

全体平均25-29歳30-34歳45-49歳
日本49.2%71.8%60.3%72.4%
韓国48.8%57.7%48.8%64.2%
※ 日/総務省統計局、韓/統計庁「経済活動人口年報」(02)

【表3】月給与額と男女間賃金格差(02年)

男性=100女性の賃金男性の賃金
日本66.5%223,600円336,200円
韓国63.2%124.5万ウォン196.9万ウォン
※日/所定内給与額(厚生労働省「賃金構造統計調査」)
  韓/賃金=月給額+年間特別給与1/12(労働省「賃金構造基本統計調査」)

 4番目の韓国女性民友会事務所長、チェ・ミョンスクさんの発題は「韓国の働く女性の現実と女性労働運動の流れ」で、女性民友会がとりくんできた活動にリンクした内容であった。「03年上半期に女性民友会に寄せられた女性の労働相談(292件)のうちセクハラ、性暴力が36%を占めた。また現行の男女雇用平等法は、間接差別(結果としての差別)の禁止条項を設けているが、成立要件があまりにも厳しいため活用が現実的ではない。
 これまで女性に関する労働関連法の改定運動をすすめてきたが、87年制定の男女雇用平等法は4度の改定が加えられ、その度に女性団体と労働組合は様々な働きかけを行ってきた。00年~01年の4次改定時では出産休暇の延長(90日)、育児休職給与の社会化(育休給を雇用保険から支出)が重要な課題となり、経済界の猛反発やポーズだけの政府に対し、国会前のデモなどで男性労働者と家族の参加を引き出し、世論化することができた。
 その他に募集採用時に容姿を女性の採用基準にしていた企業に対する性差別改善運動(95年の男女雇用平等法改定時に容姿制限禁止の条項が新設)、社内の共働き女性の優先解雇反対、職場でのセクハラ問題対応(「セクハラ予防マニュアル」作成、関連労働法にセクハラ条項を新設させる)など多様な取り組みをすすめてきた。02年から"両性平等の企業文化"を作ろうということで、上司の無理強い、家庭無視の会食(宴会)のやり方を変え、セクハラや性差別を許さない『会食文化を変えるキャンペーン』を進めている」。
 報告に続く質疑応答では双方から多くの質問が出たが、韓国の少子高齢化の速度が日本以上に進んでおり、最近の出生率が日本より低いことや離婚率が高いことなどが紹介された。また韓国では女性運動に対するバックラッシュの動きには至らず、ジェンダーとは何かをほとんどの男性が知らないのが現状だという。韓国社会の急激な変化とその中で変革を実現しようとするパワーにふれ、お互いの社会についても理解を深めた。

報告者のふりかえり
共通の課題を再確認し、互いに国際水準をめざそう
脇本ちよみ
(わきもと ちよみ) 連合大阪副事務局長 (政策・男女平等グループ担当)
 世界の中でも特に日本と韓国の働く女性の実態は非常によく似ていると統計上も思っていたが、お互いの報告を聞いて、日本を韓国、韓国を日本と置き換えてもそのまま使えるほど全くよく似た実態であった。
 まず、M字型の女性就労実態。二番目には、大きい男女賃金格差の実態。その原因は昇進・昇格の差、勤続年数の差であり、韓国では女性のほうが先に解雇される実態とその撤回闘争についても報告された。三番目にパートタイム労働など低賃金で不安定雇用のインフォーマルな仕事の多くに女性が就労している実態である。また、セクシュアルハラスメントの被害が依然として多い現実やその実態を支えている企業会食文化など全くよく似た日韓の働く女性のおかれた実態が再確認されたセミナーでもあった。
 韓国では法の改定が重ねられ、「間接差別の禁止」や「企業に対しセクハラの予防と同時にセクハラ加害者の人事措置、被害者へ不利益措置の禁止を義務付ける」ことなども盛り込まれるなど日本よりも一歩進んだ法整備ができている。
 しかし、韓国の課題として「法・政策の制定段階から執行段階へ」「制度的アプローチから文化・意識の段階へ」「女性運動から男女両性平等運動へ」ということが報告されていることからも、法整備が進んでも、その実効性の問題、さらには実施させようという各人の意識-特に男性意識の改革の問題が課題であることを感じた。その意味でも、日本も全く同じ立場にあるといえると思う。
 国際的には「間接差別の禁止」も「女性への性暴力の禁止」も「性別役割分担意識の変革」も、働く女性の人権確立には必須条件であることは極めて当たり前の認識になってきている。国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)が03年7月に日本政府に行った勧告にもそれらが盛り込まれている。国際的には非常に遅れているといわざるを得ない日韓が今後も交流を持ち、お互いの水準を国際的に引き上げる運動を推進していくことが重要であると改めて感じた。
 女性労働の問題はそのまま男性の働き方及び男性を一家の大黒柱として考えてきた両国の家父長制度とその意識のあり方に問題の根幹があり、それら男性の働き方、家族主義のあり方を問い直すこと抜きには根本的な改善はありえないと私は思っている。その意味で、今回のセミナーではもう少し男性も含めた「労働組合」としての取り組みを交流することを期待していたが、女性民友会のみの交流であったこと、またその参加者も限られていたことについては少し残念であった。

コーディネーターのふりかえり
次なる課題は交流の持続と共同のアクション
チョン・カンジャ
 韓国女性民友会共同代表
 この間に、何度かとりくんだ韓日交流のプログラムを通じて感じる点は、両国の女性の処遇の状況があまりにも似ているということだ。提起されている問題や今後の課題は、約束でもしているかのように似ている。韓国で、M字型の就業構造、男女雇用平等法(男女雇用機会均等法)、新人事制度(コース別管理制度)、職場内セクハラ、間接差別などの問題が社会問題となったとき、しばし周囲を見渡すと日本の女性運動に関わる人たちも同じ悩みをもち、制度の改善のために運動していることをしばしば確認する。
 こんな時に、韓日の女性の共同努力の必要性を感じる。こうした脈絡で見ると、今回のような交流は、双方にとって必要であるという評価をしたい。
■ 韓日交流セミナーの意義
 短時間に、両国の全般的な状況を比較・理解し共同実践への方向性を模索するのはたやすいことではない。とはいえ、女性問題同様に西欧から導入された「反差別・平等・人権」の原理は社会のアジェンダとして採択されており、政策化される領域も両国の歴史や発展段階が非常に似ており、相互に及ぼす影響が大きく、交流が切実に求められている。ゆえに、小さな規模の少数の実践であってもその意味は強調しすぎることはない。セミナーは深い討論をするための専門家の懇話会のような少数による参加形式で企画されたが、韓国側の参加率が低いのが残念であった。
■ 発題および討論
 日本側の発表「男女共同参画社会実現に向けた日本の状況」は、女性問題に関して韓日の社会がいかに似通っているかを確認するのに十分な内容であった。北京女性会議の成果に抵抗するバックラッシュに対する憂慮と世界平和のための女性たちの自己決定、広報、アジアの女性同士の連帯が大変重要であるという指摘があった。しかしこれについて十分な討論や韓日の共同のアクションに向けたプログラムを出し合ったり、発展するまでにはいたらなかったことは残念である。これは今後、ぜひ成し遂げなければならない内容だと考えている。
 チャン・ミギョンさんの「韓国女性運動の現実と課題」は日本の参加者の注目をひいた。韓国の女性の現状についての統計とあわせて、韓国の女性運動の概括を理解できる時間となった。今後は韓日の女性運動を比較・分析することも意味のある作業であろう。
 脇本ちよみさんの「働く女性の現状と課題」は労働市場における日本の女性の様子がよく描かれてよい資料であった。日本側の発表だと言わなければ、韓国の話だと思ってしまうほどお互いに現状も課題も似ている。このプログラムが今後継続されれば、内容をもう少し分けて実践の活動とつなげれば完成度の高いものになるだろう。
 チェ・ミョンスクさんの「韓国の働く女性の現実と女性労働運動の流れ」は、韓国女性運動の躍動を確認できる内容であった。このような今後の両国の実践運動にかかわる交流は、女性運動の変化や発展に大きな力となるだろう。
 時間の制約や言葉の壁、逐次通訳という限界ゆえに、火花が散るような討論にはならず、質疑応答が中心になった。3時間という時間の短さは残念であったが、十分な準備をしての発題や参加者の熱のこもった討論で、多くの示唆をえることができたと考えている。さらに言えば、女性運動にとりくむ人たちと匹敵する理解力と経験をもった通訳の存在が取り組みを成功に終わらせる要因にもなった。
■ 今後の課題
 大きく二つに整理することができる。一つは、取り組みをどう持続させていくかということであり、もう一つは提起された問題をより深め、共同のアクション・プログラム(実践)をどう模索するかである。私たちは再びお互いの顔をつき合わさねばならないことが残っている。こうしたわたしたちの努力が、これが「はじめ」でもなければ「終わり」ではないというところに希望があるのではないだろうか!


セミナー2:韓国の日本の男女平等(両性平等)教育

 8月28日夕方に、ソウルから車で南に1時間半ほどのところにある韓神大学の講義室で、同大学の教育大学院と共催でセミナーを開催した。コーディネーターは、02年11月に大阪に招いたゲストでもある教育大学院学部長、カン・スンウォン教授が担当し、日本側と韓国側から1名ずつ発題した。日本側は大阪での実践を中心に報告し、韓国側は教育人的資源省(日本の文科省にあたる)の女性教育政策担当者が発題した。

 韓国政府の立場からのキム・チョンヨンさんの発題では、変貌する韓国社会の一層の発展のために、女性が力を発揮し、それを社会が活用できるシステムや教育環境の整備が肝要であるとし、国家の人的資源開発の柱の一つとして強く推し進めていることが報告された。また性教育やセクハラ防止教育は、男女平等教育の一環として位置づけられており、5章からなるレポートの1章がこのテーマに関するものであった。
 「女性の人的資源開発計画では、3つの柱があり、(1)女性の潜在能力を発揮できる政策の推進、(2)女性教員の地位向上として学校管理職登用や大学教員の採用拡大、(3)女子生徒の進路指導の強化、を打ち出している。
校長・教頭などの女性管理職比率が低く、特に長期勤務の女性教員が多い小学校の管理職は8.9%である。03年6月の法改正で、国公立の一般大学は3年ごとに男女平等雇用計画を作成し履行することになり、優秀な大学は教育人的資源省から行政的・財政的な支援を受けられることになった。
 また文系に偏っている女子学生の進路を改善したり、理数系の科目の男女間の成績格差是正のプログラム開発も行い普及させている。
 次に、男女平等を保障する教育条件については、男女平等教育に関連する法律として、改正教育基本法(2000年)、女性発展基本法(95年)、男女差別禁止及び救済に関わる法律(99年)を整備してきた。教育人的資源省や地方行政レベルで、男女平等の学校文化を定着させるために研究校を指定している。さらに、性差別をテーマにした青少年映像祭や作文大会や男女平等教育に関する優秀な教員や機関の表彰などにとりくんでいる。性教育については学校での活性化をはかるとともに、指針として年間10時間の確保や年間計画を作ることなどを勧奨している。セクハラ・性暴力の予防については、予防のための様々な事業のガイドを提示し、地方の教育委員会レベルでのセクハラ事件への対処機関の設置や予防教育の指導点検などを進めている」。

 発題2の大阪府人権教育研究協議会の山本有美子さんは、大阪府の男女平等教育の推進に向けた行政施策を紹介した後に、大阪府人権教育研究協議会でのこれまでの実践の流れと8月に完成した新しい男女共生教育教材・実践集『自分を生きる21』の中から、次の3つの教材を紹介した。
 (1)「ハロハロ・ワーク相談窓口」...女子の70%が、将来仕事を続けたいと答え、「一生働きつづけたい」が7年前の調査(府教育センター)と比較して3倍(33%)に増えている。このような生き方・働き方を支援するため、法律を子どもたちが活用していけるような質問を作成し、イラストをふんだんに用いた教材。(2)「オリンピックと女子スポーツ」...ワークショップ形式で楽しみながら、スポーツの世界で女性の参加を大きく進めた国際女性年・北京女性会議等、女性の地位向上への取り組みについて学ぶ教材。(3)「いま、どんなきもち?」...今、課題となっている男の子のコミュニケーション力の困難さに対し、さまざまな子どもの表情を描いたポスターを活用し、感情に気づき感情を言葉におきかえて自分の気持ちを表現することを学ぶ教材。
 質疑応答の時間は、日本側への質問よりは、韓国の発題に対する現場の教員の意見がかなりを占めた。発題の中で説明された政策も、現場では年間10時間も性教育に充てる余裕がないという意見があったり、逆に全国教職員労働組合の教員からは、政府が「勧奨」にとどまるため実効性を持たないという意見があった。さらに男性管理職によるセクハラの実態などが問題提起された。日本の参加者からは隠れたカリキュラムについて韓国での現状についての質問や日本の性教育の取り組みの現状について紹介があった。

報告者のふりかえり
韓国に学び、大阪の進取性も見えたセミナー
山本有美子
(やまもと ゆみこ) 大阪府人権教育研究協議会
 ジェンダーに関する意識は、日本においてはこの数年、特に大きく変化し、大阪府人権教育研究協議会(以下大人教)の意識調査(2000年度末実施)でも、子どもたちの意識が大きく変わっていることが明らかになった。そこで、大人教では、子どもたちの実態と課題に即し「生き方・働き方」「自分らしさ」「メディア・リテラシー」「性暴力にNO!」「コミュニケーション」の5つのテーマで府内の実践校から実践を集め、新たな男女共生教育教材・実践集『自分を生きる21』を今夏発刊した。ソウルセミナーでは、その中から、日韓に共通する大きな課題である女性の労働をテーマにした「ハロハロ・ワーク相談窓口」と"スポーツ"や"コミュニケーション"という民族や文化の違いを越え共通の内容としてお互いに理解しやすいテーマの教材を紹介した。
 韓国側の女性政策に関する報告は、学校現場からの報告ではなかったのが残念であったが、女子生徒の進路の現実(人文分野に偏る)を改善するための施策も紹介された。日本においても女子の理数系への進学の道が隠れたカリキュラムによって閉ざされている傾向があり、女子に対する理数科のプログラムの開発という発想は大変参考になった。
 翌日、ソウル市江西区にあるヨンチャム中学校で2年生の両性平等教育のメディア・リテラシーの授業を見学した。建築工学を専攻した技術科の女性教諭が、裁量学習(日本の総合学習)の中で、パワーポイントを駆使し、生徒の興味を引く楽しい授業を行った。よくまとまった効果的な授業で、日本語に翻訳すればすぐにでも日本で使いたい教材であった。しかし、このような授業はどこの学校でも実施されているわけではないそうで、実際の男女共生教育の実践は日本の方(大阪?)がかなり広まり進んでいるようだ。
 また、学校長が『校内で両性平等が進みすぎてかえって不平等になっている』と言った後、学校の主要ポストの教員が紹介されるとほとんどが男性であったということから伺われるように、儒教思想の影響の強い韓国では、学校現場での男女共生教育の実現はこれからであると感じた。

コーディネーターのふりかえり
日韓の相互理解の増進のために
カン・スンウォン
 韓神大学教育大学院学部長
 ひときわ雨が多い夏であったが、大阪からの参加者が韓神大学を訪問したその日だけは快適な天候を贈り物としてもらったようだ。秋の学期が始まっていなかったので、学校は大変静かで、みなさんが到着し夕食会をするころ、教育大学院の学生たち -といっても学生はすべて現職の教員である- がセミナーに関心を持って集まってきた。セミナーには約80名あまりの教員が参加して討議を行った。
 山本先生の具体的な男女共生教育の資料は、韓国側の発表にあった政策を第一にしたものと対照をなしたものであった。日本側のジェンダー意識調査では、「男らしい」「女らしい」に象徴されるジェンダーのイメージやDV(家庭内暴力)、そして未来への女生徒の働く意識に対する意識調査などが含まれて、これらをふまえて具体的に「自分を生きる21」という実践教材が創られている。
その一方、韓国側の発表は、男女平等教育の必要性とそのための制度や仕組みを整えることに論点が集中していたが、特に、発題の教育人的資源省と会場に参加していた韓国全国教職員労働組合との間で微妙な立場の違いが見られた。また男性教員と女性教員の認識の差をそのまま反映するやりとりがあった。
 2時間半の発表と討論の中で、特に男女平等教育の実践のための制度の改善や実質的な支援システムに対する議論が続いた。韓国側の女性教員に対する差別の問題および教育課程の運営の問題は、それぞれの立場によって接点を見つけるのが非常に難しかった。日本側でも生理休暇をはじめとする教育課程の運営の問題については似た状況があるが、問題の解決の方法がまったく違ってみえた。
 日本での実質的な教材開発や持続的な広報、そしてそれに関わる教員の協力など下からの努力が見てとれる反面、韓国側は政治の変化によって女性たちの幅広い要求が政策としてとりくまれているが、上からの改革が持っている限界として現場の学校がなかなか変わらないという現実を見せている。まさに、こうした点が韓日の共同セミナーを通じてくっきりと浮かびあがり、これから共同の努力を通じてお互いが学び直していかなければと確認させられた。
 今後も共同のセミナーをさらに発展させ、お互いが学びあうことで男女平等教育が伸長し、それをもって本当の人権文化が根づくことを望むところである。