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国際人権ひろば No.48(2003年03月発行号)

特集・アジア各地の平和構築に向けた取り組み Part2

スリランカ平和構築への取り組み-NGOの視点から

小野山 亮 (おのやま りょう) 反差別国際運動(IMADR)国際事務局・事務局次長

■ はじめに


 2003年3月現在、和平交渉が進行中のスリランカ。最大の資金供与国である日本も新たな対応が求められる。また、政府のみならず、市民社会・NGOはどうしていけばよいのか。私たち反差別国際運動(IMADR)の取り組みを紹介しながら考えてみたい。

■ 日本政府の立場


 日本政府の行う政府開発援助(ODA)は平時、もしくは和平成立後に使用されていたが、スリランカにおいては早めのODA投入によって和平を呼び込むモデルケース作りがめざされている。ODAは地元にもたらす環境や人権への影響、地元にもたらす効果が論じられてきた。今回のケースが成功すれば、ODAの重要性を再認識させることができるとともに、外交における日本の存在感も広く内外に示す事が出来る。こうした意向も受け、日本政府は3月に東京近郊で和平交渉の第6回目の会合を、また6月にはスリランカ支援者会合を主催することになっている。
 日本政府は実際に様々な復興活動に資金援助を開始している。これまでの支援はスリランカ政府による破壊活動に利用されただけだとのタミル側の批判に応え、タミル人領域での事業や、スリランカ政府とLTTE(タミル・イーラム解放の虎)の合同の取り組みにも支援を開始している。一方、こうした新たな支援のあり方がLTTEを支持しているとする一部の仏教界の反発にも配慮、事情説明を行うと共に、シンハラ過激派が武装蜂起したこともある発展の遅れた南部の支援にも力を置く方針を表明するなど、民族間の微妙なバランスに配慮した援助を進めようとしている。

■ NGOの立場


 NGOの利点は、生活に基づいた草の根の需要を的確に把握し、迅速に動くことができることにある。ジャフナで活動している欧米のNGOの地雷撤去作業等が報じられているが、日本のNGOの中にも、スリランカにおいて、保健、医療、教育などの分野で長年地道に草の根の援助や交流活動を行っているところが多数ある。
 ただ日本の場合、こうしたNGOの活動が資金的に恵まれているとは言い難い。欧米のNGOの組織自体がしっかりしているだけでなく、ODAをとってみても、その使途に占めるNGOへの支援の割合は日本と欧米ではまだ差がある。
 アフガニスタン支援の際にはNGOの排除が問題になったが、NGOとのパートナーシップは政府も謳うところである。今回に関しては例えば、明石康スリランカ担当政府代表は昨年スリランカを訪問した直後、NGOを招いての報告会を開催している。またNGOへのODA供与もすでに実行されているが、今後、NGOへの支援、パートナーシップがより積極的に進められていくことを期待する。
 具体的に言えば、流動的な状況の中で、市民社会の側からは全体的な動きが見えづらく、まず平和構築に関する政府の指針、ODAのNGO供与に関する枠組み、スケジュール、今後の予定などにつき、顔を合わせた積極的な意見交換の場を設けてもらうことを要請したい。政府側も新しい試みの中で大変な作業が予想されるが、できるだけ早い時期からの政府と市民社会・NGOの対話が、最終的には円滑な復興支援の実務に資すると信ずる。そして何よりも、本当に必要な草の根の需要に応える活動をしているNGOに対する政府からの積極的なODA供与を望む。
 一方、NGOの側でも的確に復興支援を行っていけるよう、政府とも、NGO間でも、効果的に連携していく必要がある。
 また先に見たような現地での微妙な民族バランスに配慮するには、全ての民族を含むスリランカ全体に復興支援努力をしていることが目に見えるよう、政府、それぞれのNGOを含む日本(ひいては国際社会)全体としての連携作業が求められる。そして例えば、和平に向けて外部からの声が必要とされるようなときには、政府のみならず、より多くのNGO、市民社会を取り込んだ共通の声を出していくことも求められる。

■ IMADRの取り組み


 私たちIMADRは、スリランカの草の根グループと連携しながら、内戦で避難民となった女性や、他国に渡る移住労働者女性の権利擁護運動、物資支援活動などを行ってきた。また国際的なネットワーク作りを進めながら、現地の声を国連などの国際的な場に届けてきた。
 以下、休戦を受け、現在予定しているIMADRの現地プロジェクトを紹介したい。民族や地域バランスを考慮し、また、インフラ整備から人権教育にいたるハードとソフトの面を含んだ総合的なプロジェクトを予定している。

1)平和教育・啓発
 今後の政治的解決などにつき、女性グループ、行政、市民団体などを含め、議論する催しを地方にて開催する。また、シンハラ社会を啓発するための活動をモナラーガラ(南東部)、ポロンナルワ(東部)、プッタラム(西部)、マヒヤンガナ(中部)、中部紅茶農園地帯にて行う。
2)ジャフナ、マンナー(北部)
 人種差別撤廃条約ほか人権に関する枠組みの学習、栄養・食物に関する指導、内戦で連れ合いを無くした女性たちのための収入増加プログラム、交流のための女性や青年グループによる訪問促進などを行う。
3)トリンコマリー(東部)
 シンハラ、タミル、ムスリムの再定住プログラム。安全で安定した生活のために、道路や井戸などの生活環境の整備、農業のための井戸やポンプなどの設備整備、自営および収入増加のための資金運用制度の設立、そしてこれら運営のための住民へのトレーニングを行う。
4)平和の促進を図ることを目的とした新聞の編集と発行。

 3月の和平交渉の際にはニマルカ・フェルナンドIMADR理事長がスリランカより来日することになっており、現地の声を届けると共に、政府・NGOも含めた有効なネットワーク作りも行っていく予定である。
 03年1月、IMADRを通じ教育の分野でのスリランカ支援を行っている「SEA21」(住吉スリランカ教育交流協会)の視察団に同行させていただき、ジャフナを訪問した。ジャフナは破壊されたままであり、地雷原の多さもあって、困難な道のりも予想されるが、私たちも復興のために有効な形で動いていければと考えている。

【連絡先】反差別国際運動(IMADR)国際事務局
Tel: 03-3586-7447、Fax: 03-3586-7462、E-mail: imadris@imadr.org、URL: http://www.imadr.org