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国際人権ひろば No.124(2015年11月発行号)

人種差別撤廃条約日本加入20年

ヘイトスピーチと私たちの町 人種差別撤廃条約日本加入20周年記念連続セミナー 第3回報告

 10月3日、セミナー「ヘイトスピーチと私たちの町」がクレオ大阪中央にて開催された。2014年夏に2つの国連人権条約機関から日本のヘイトスピーチに対する厳しい勧告が立て続けに出たことと、12月10日に京都朝鮮学校襲撃事件の高裁判決が最高裁で確定したこともあり、この問題をめぐる国内法制定および自治体条例制定に向けた動きが活発化してきた。セミナーではNGOとしてこの問題に取り組んでいる3人の方々がそれぞれの立場から現状と課題を報告した。セミナーは人種差別撤廃NGOネットワークおよびヒューライツ大阪、そして同ネットに参加する関西のNGOが共催した。

 最初の発題者の師岡康子さん(弁護士・外国人人権法連絡会)は、2015年5月に民主党、社民党などの野党議員が共同で参議院に提出した「人種差別撤廃施策推進法案」の国会審議を中心に報告した。野党の法案が人種差別撤廃のための基本方針を示したことに対し、与党はヘイトスピーチ規制の是非に議論の照準をあわせ、まず実態調査が必要であるという意見を固持した。そのため、法案は参議院法務委員会で審議されたものの成立には至らず、2016年の通常国会での継続審議となった。NGOは、人種差別禁止法が不在の日本においてはヘイトスピーチ規制の前に差別撤廃の基本法が必要であると唱えてきた。また、師岡さんは、東京弁護士会が9月に発表した「地方公共団体に対して人種差別を目的とする公共施設の利用許可申請に対する適切な措置を講ずることを求める意見書」の意義を示した。

 さらに、インターネット上で差別扇動の情報が流布されても、被害者自身が削除要請することが困難であるという実情を受け、法務局が助言や被害救済に関する人権相談窓口を設けていることを紹介し、活用を提唱した。

 金尚均さん(龍谷大学教授)は、京都府・市に対して、「ヘイトスピーチを許さない」宣言の採択とヘイトスピーチをはじめとする人種差別行為を規制する条例制定を求める運動が市民レベルで始まっていることを報告した。2009年から2010年にかけて起きた在特会などによる京都第二朝鮮初級学校襲撃事件の民事裁判は、2014年12月、最高裁が被告の上告を棄却し大阪高裁の判決を支持することで終結した。またそれにより、被告らの人種差別行為に対する原告への高額の損害賠償が確定した。しかし、最高裁判決後も京都市内では被告を含むレイシストによるヘイトスピーチの集会やデモが繰り返されており、そのため市民による条例制定を求めるあらたな取り組みが始まった。

 また、金尚均さんは、在特会メンバーによる徳島県教職員組合事務所への乱入事件の裁判についても報告を行った。2010年に起きたこの事件について、徳島地裁は乱入行為の違法性は認めたものの、「人種差別に基づく行為」とは認めなかったため、それを争点に原告の徳島教組が控訴している。

 文公輝さん(多民族共生人権教育センター)は、同センターが中心になって実施した大阪市生野区在住・在勤の在日コリアン100人を対象とした「ヘイトスピーチ被害の実態調査」の結果を報告した。また生野区では、多くの在日コリアンの子どもたちもヘイトスピーチに遭遇しており、恐怖や不安感を抱くなどトラウマにつながる被害が発生していることも述べた。

 6月の大阪市会で継続審議となった「大阪市ヘイトスピーチへの対策に関する条例案」が10月に審議されることを踏まえ、条例制定を求めた大阪市会に対する弁護団とNGOによるこれまでの働きかけを報告した。特に、大阪市会の各議員団を訪問して、ヘイトスピーチの実態について説明をし、条例制定は喫緊の課題であると訴えた。実現すれば全国の自治体の先駆けとなるため、大阪市は大きな期待を背負っている。市民社会が注視していることを市議会が常に意識するよう、今後も働きかけを続けたいと文さんは述べた。

 最後に法制定および条例制定に向けた市民社会の声が今後ますます重要になることが確認された。

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