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国際人権ひろば No.107(2013年01月発行号)

ニュース・イン・ブリーフ

アセアン人権宣言、採択される

 

 採択の経緯

 
 カンボジアで開催された第21回東南アジア諸国連合(アセアン)首脳会議において、11月18日、アセアン人権宣言が採択された1
 この宣言を起草したのは、アジアで初めての地域人権機関として2009年に設立されたアセアン政府間人権委員会(AICHR)である。AICHRは、アセアン加盟国で構成され、加盟国はそれぞれ代表を任命する。AICHRの任務や権限を定めた取決め文書は、人権に関する協力の枠組みとなるアセアン人権宣言をつくることを任務の一つとしてあげており、2010年に作業部会を設立して起草作業を開始し、2012年1月にはAICHRに宣言案が提出され、アセアン外相会議は2012年中に作業終了するよう取り組むことに合意していた。
 しかし、アセアン域内のNGOなどは、宣言案の作成について市民社会との情報共有や協議が行われないことを批判し、域内のNGOなどの共同声明を公表した2。声明は、AICHRに市民が起草過程に参加できるよう宣言案を公表すること、一部の国の委員がそれぞれの国で行っているような国内の協議を他の国でも、また国全体でより定期的に行うこと、宣言案を域内各国言語に翻訳すること、AICHRの会合にNGOや国内人権機関を含む全てのステークホルダーが参加できるようにすることを求めていた。
 AICHRはその後2度宣言案に関して、市民社会との協議を行ったが、1回目ではまだ起草文は配布されておらず、アセアン閣僚会議に提出される予定直前の協議で、そのような短期間では市民社会からの意見が考慮されることは難しく、協議は形式的なものに過ぎないという懸念がNGOから表明され、その後も宣言案の公表や、市民社会との協議を求める声明などが続いた3。また、採択直前にはインドネシアを訪れたピライ国連人権高等弁務官が、市民団体などの懸念や批判に言及し、すべてのステークホルダーが参加して、国際人権基準に十分にそった案をつくるよう起草にもっと時間をかけることを求めていた4。しかし、宣言案は当初の予定であった2012年中に採択されることとなったのである。
 
 

人権宣言の内容- NGO、国際人権基準に達していないと批判

 
 採択された宣言には40条の規定があり、一般原則、市民的・政治的権利、経済的・社会的・文化的権利のほか、開発の権利、平和への権利と人権の伸長・保護における協力の章がある。条約ではなく、宣言なので、法的拘束力はない。
 一般原則では、すべての人が生まれながらにして尊厳と権利において自由と平等であること(1条)、人種、ジェンダー、年齢、言語、宗教、政治的または他の意見、民族的または社会的出身、経済的地位、出生、障害または他の地位などいかなる区別もなく、宣言にあげられる権利や自由をもつこと(2条)、すべての人が法の前に人として認められ、差別なく法の保護を受ける権利があること(3条)などがあげられている。
 具体的な権利では、既存の国際人権諸条約にあげられる権利のほか、法律および国際的な合意に基づき、庇護を求め、受け入れられる権利、子どもや若い人の経済的・社会的搾取の禁止、衣食住のほか、医療や必要な社会サービス、安全な飲料水と衛生、安全で持続可能な環境の権利を含む十分な生活水準の権利、HIV/AIDSを含む感染症に苦しむ人に対する差別されない環境などがあげられている。
 一方、一般原則の章において権利の享有が、他の人、共同体および社会に対する責任を果たすこととバランスしていなければならないとしていること(6条)、人権の実現が異なる政治的、経済的、法的、社会的、文化的、歴史的および宗教的背景を念頭において、地域的および国民的文脈で考慮されなければならないこと(7条)、人権の行使が他の人の権利の保障のみを目的とし、国の安全保障、公的秩序、衛生、公共の安全、公の道徳や民主的社会における人の一般的な福利の公正な要請を満たす、法律による制限に服するとしていること(8条)など、人権の保障が国際的な人権基準よりも狭められる懸念があるとされる規定も含まれている。
 これらの点については、加盟国のそれぞれの政治、宗教などを理由にする恣意的な制限を認め、生まれながらにしてあるはずの人権の享有に条件を付け、人権の普遍性を損ない、国際基準よりも広範囲の制限を認めるなどとして採択前から地域および国際的な市民団体が批判していたが、採択後、61団体が共同で宣言を非難する声明を公表した5。声明では、人権の享有を共同体および社会に対する責任を果たすこととのバランスを条件づけていることや、権利の実現を地域的、国民的文脈によるものとしていることなどこれまで、国際、地域、国内の専門家や草の根団体のあらゆるレベルであげられてきた懸念を無視してアセアンの首脳が宣言を採択したとして、人権宣言の名を借りた、政府権力の宣言であり、宣言を拒否すると非難している。
 
(構成:岡田仁子・ヒューライツ大阪)
 
1:アセアン人権宣言(英語)(ASEAN Intergovernmental Commission on Human Rights) http://aichr.org/?dl_name=ASEAN-Human-Rights-Declaration.pdf
2:4月8日付NGO共同声明 (Forum-Asia) http://www.forum-asia.org/?p=12451
3:9月26日付共同書(Forum-Asia) http://www.forum-asia.org/?p=15461 など。
4:11月7日付人権高等弁務官声明(OHCHR)http://www.ohchr.org/en/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=12752&LangID=E
5:11月19日付NGO共同声明 (Forum-Asia) http://www.forum-asia.org/?p=15609