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国際人権ひろば No.103(2012年05月発行号)

ヒューライツ大阪の活動

タイ法務省、人権センター設立へ

ジェファーソン・プランティリア(Jefferson R. Plantilla)
ヒューライツ大阪主任研究員

 

タイ法務省は第2次国内人権計画(2009-2013)にそって、権利および自由擁護局の下に人権センターを設置する準備をしている。予定される人権センターの目的は(1)あらゆる種類の人権情報に関するデータベース(電子版)の構築、(2)人権に関心のある人のための知識を管理する(図書館のような)空間の構築、(3)関連するステークホールダーのための人権研修の実施、(4)関連機関からの経験や教訓をまとめること、(5)世界各地で人権に関わる活動をしている人びととの情報、知識および経験の交換などだ。
 既存の人権センターがどのように活動しているのかを理解するため、タイ法務省は2012年3月22から23日の2日間、バンコクにおいて国際セミナーを開催した1。アフリカのタンザニアの「法および人権センター」(LHRC)、湾岸地域の「国連南西アジア・アラブ地域人権研修及びドキュメンテーション・センター」(ドーハ・センター)、欧州の「ノルウェー人権センター」(NCHR)、東南アジアの「人権資料センター」(HRRC)、オーストラリアの「カスタン人権法センター」、タイの「人権および社会開発研究センター」(CHRSD)、フィリピンの「フィリピン人権情報センター」(PhilRights)および「アジア・太平洋人権情報センター」(ヒューライツ大阪)がセミナーに招かれ、経験を共有した。
 
 

既存の人権センターの経験

 
セミナーに参加した人権センターの経験はそれぞれ任務、目的や主な対象が異なり、様々である。これらの人権センターは次のようなモデルに分けられる。
a. 大学のセンター:NCHR、カスタン人権法センター、
             CHRSD、HRRC
b. 非政府センター:LHRC、PhilRights
c. 政府の支援を受けたセンター
  ①自治体の支援:ヒューライツ大阪
  ②政府間組織(国連)の支援:ドーハ・センター
  それぞれの任務も異なっているが、次のうちの1つ以上が含まれている。
a. 対象
 1.周縁化された集団、2.民間労働者、非政府組織、
 3.国内人権機関、4.サブ・リージョン人権機関、
 5.学界、6.政府、7.国連機関、計画および基金
b. 業務
 1.法的支援、2.教育(学校、学校以外)、
 3.研究および文書化、4.情報、5.法改正、
 6.相談事業、7.国際協力
 
 大学のセンターのうち、2つは法学部・ロースクールとつながっている。非政府組織のセンターでは、1つは人権問題もカバーする法的支援および資料センターであり、もう1つは人権組織のネットワークの研究および研修機関である。一方は国内人権機関と人権センターと二重の役割を担っている。
 
 

設立に際しての課題

 
 セミナーでは、各人権センターの代表はいくつかの課題を提起したが、なかでもタイで予定されている政府の支援を受ける人権センターと、既存のタイ国家人権委員会との区別を明確にすべきことを強く求めた。タイ法務省が作成した国内人権行動計画の実施に関する報告では、政府機関および国家人権委員会を含む他の機関との協力が課題のひとつとしてあげられていた2
 また、各人権センターの代表は予定される人権センターには客観的に人権情報や状況の研究および発信を行う能力が必要であることも述べた。これは人権センターの「中立的」な性格ということができるかもしれない。しかし、このことは政府の所持する人権に関連する情報が、政府に対して批判的なものも含めて収集され、公表されることが妨げられないということを意味する。言い換えると、機関の中立性の原則に沿って、政府の批判も、データの分析によって適切に支えられるのであれば、予定される人権センターの業務の一部であるべきである。
 政府のデータを機密事項として扱う方針であるならば、人権センターの状況を客観的に評価する能力を制限することになる。人権センターはそのようなデータへのアクセスが保障され、一般に公表する報告に活用することが認められていなければならない。
 その他にも各人権センターの代表は次のような点をあげた。
a. 既存の資源(情報、資料、経験など)を収集し、人権セン ターの活動に活用する必要。
b.人権センターが司法および法執行に関わる人びと、議員お よびそのスタッフなどのそれぞれの活動に人権基準を適用 する能力の向上を支援する必要。
c. 政府の国際人権に関するコミットメントおよび普遍性の原 則など基本的な人権原則の促進を強調する必要。
 
 タイ法務省権利および自由擁護局のピタヤ・ジナワット局長は報告のまとめを行い、人権センター設立の計画について、他のステークホールダーと一層協議する必要があると述べた。同局が中心となって人権センター設立の準備を担う。
 局長はまた人権センターが人権に関するデータベースを有していなければならず、知識をベースとした資料センターとして、人権政策の策定と実施に有用であり、タイ人およびタイ人でない人の人権を保障できなければならないと述べた。
 予定される人権センターの最終的な性格、任務、権限および機能が明らかになるまで議論されなければならないことは多くあるが、人権に関する限り、センターを設立するという計画は正しい方向への動きであろう。
 
(訳:岡田 仁子・ヒューライツ大阪)
 
 
1:国際人権セミナー「人権センター:可能性と進展」(バンコクのラマ・ガーデンズ・ホテルで開催)
2:Department of Rights and Liberties Protection, Development of the National Human Rights Plans of Thailand (Bangkok, Ministry of Justice, undated). The 2002-2007 Strategic Plan of the NHRCT discusses the relationship between this plan and the National Human Rights Plan (2001-2005), and the National Economic and Social Development Plan (NESD Plan)(2002-2006). See The Strategic Plan of the National Human Rights Commission of Thailand (2002-2007), page 39.

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