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国際人権ひろば No.98(2011年07月発行号)

ヒューライツ大阪からのお知らせ

韓国光州市で開催された世界人権都市フォーラム(2011年5月16-17日)に参加して

白石 理(しらいし おさむ)
ヒューライツ大阪所長

 「下からの人権グローバル化を求めて:21世紀の人権都市の課題」と題する2011年世界人権都市フォーラムに招待された。光州(クァンジュ)は、1980年5月18日に始まる民衆蜂起があり、その後の軍事政権に対する抵抗と民主化運動の拠点でもあったところである。このフォーラムは、光州市と5・18記念財団が主催し、韓国外務通商省、法務省,国家人権委員会、ユネスコ国際理解教育アジア太平洋センター(APCEIU)、国連人権高等弁務官そして国連事務総長の協賛があった。アジアを中心に、北アメリカ、メキシコ、ヨーロッパなどから100名以上が参加したフォーラムは、個々の都市の経験を分かち合い、協力しながら、「人権都市」をめざし推進するための方策と課題を話し合い、学びあうということを目指した。
 フォーラムは、限られた時間であったが、各地の都市からの参加者がそれぞれの都市での人権政策と実践とを語り合った。さらに、国際的に認められた人権基準を実現することを目指して、今の都市が直面する政治的、社会的そして経済的課題―失業、高齢化、暴力、移住労働者や外国籍の人に対する差別、スラム、都市部での生活格差など―に取り組むことを求めた。そのために、都市とその行政責任者、市民団体がどのような役割を果たせるのか、また、「人権都市」が普遍的人権の実現を「グラスルーツ・レベル」で、すなわち下から推進することによって、中央政府や国連の人権機関と協働することが可能となるのか、について意見が交わされた。
 日本からは広島市と堺市からの参加があった。大阪市は、招待されたものの参加しなかった。筆者は、個人の資格であったが、「大阪市人権尊重の社会づくり条例」と「大阪市人権行政推進計画~人権ナビゲーション」を紹介した。
 フォーラムは最後に「人権都市に関する光州宣言」を採択した。宣言では、人権都市とは人権を基本的価値、指導原理とする都市であるとする。そこでは、人権基準と規範に則り、行政、議会、市民団体、企業などが、協力し合って、すべての住民のために生活の質の向上に努めるとされている。
 宣言は、すべての住民、なかんずく、少数者グループや社会的に弱い立場にある人たちに、市政参加の道が開かれるべきであり、差別禁止、法の支配、参加、エンパワメント、透明性、責任明示などの人権原則が取り入れられるべきであるとする。さらに宣言は、市民と行政担当者の人権理解促進のために人権教育、研修、学習が極めて大切であること、またこれに関して各都市が効果的実践の経験を分かち合うべきであるとする。
 宣言は、人権都市の基礎として、人権条例や人権憲章等の法的枠組み、人権委員会や人権部局の創設をあげる。人権施策策定とともにその効果的な実施をするには、まず有能で透明性の備わった行政の決意と強いリーダーシップが求められ、施策実施を担当する職員の人権教育が不可欠であるとする。
 人権都市には、民主主義の原則である市民参加と利害関係者等の意見表明の機会を保障する制度が整っているはずであり、特に社会的、経済的に弱い立場におかれている個人やグループに十分な配慮がされなければならない。また責任の所在を明らかにし、行政施策の実施進捗を監視する制度も設けられていることが大切である。
 宣言は、都市間のネットワークを国内でそして国際的に広げ強化することをめざし、そのために国連人権理事会、国連高等弁務官事務所等の協力を求めるとしている。また国連とOECDにたいしては、開発協力事業の中に「人権都市」の構想を組み入れることを求めている。
 宣言は最後に、 人権都市に関わる上述の理念の実現に向けて働くことを誓い、光州市が今後も世界人権都市フォーラムを続けることを勧める。
 フォーラムの翌日5月18日には、光州民衆蜂起の記念式典が、光州市郊外の国立墓地であった。さらに5・18記念財団で2011年度光州人権賞授与式があった。インドの小児科医であり、公衆衛生、民衆のための医療に献身的な働きを続ける,ビナヤク・セン氏に賞が授与され、特別賞には、子どもを武力闘争の中で失った、パレスティナ‐イスラエルの親たちが集まるグループ(The Parents Circle Families Forum)が選ばれた。この式典では、ビルマのアウンサンスーチーさんの感銘深いメッセージがビデオで放映されたり、光州市長が出席して式典を盛り上げていたのが印象的であった。