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国際人権ひろば No.93(2010年09月発行号)

ヒューライツ大阪からのお知らせ

安全な飲み水と衛生に関する国連独立専門家、7月に訪日調査

 国連人権理事会より任命された「安全な飲み水と衛生へのアクセスに関する人権問題担当国連独立専門家」のカタリーナ・デ・アルブケルケ(Ms. Catarina de Albuquerque)さんが、2010年7月20日~28日に日本を公式訪問し、飲料水と衛生に関する権利を政府がどのように実現しているかなどを調査しました。アルブケルケさんはポルトガル出身の弁護士です。
 ヒューライツ大阪は、国連人権高等弁務官事務所から依頼を受け、7月24日から26日にかけて実施された関西での調査のためのコーディネイトを担いました。独立専門家は大阪府および大阪市の水道、環境、衛生、人権などの担当部署や、大阪市水道労組を訪問するとともに、京都府宇治市のウトロ地区や大阪市内のホームレスの人たちや支援者、水問題に関わる NGO などを訪問し、インタビューや意見交換を行いました。
 飲み水と衛生に関する国連独立専門家が訪日調査を行ったのは初めてのこと。日本国内において、人びとが安全な水にアクセスできているかどうか、購入可能かどうか、汚水処理、水源の環境保護、それらの持続可能性など、水と衛生に関して人びとの権利がいかに保障されているかなどが関心課題でした。また、ホームレスの人々、外国人、受刑者などマイノリティ集団が水と衛生に関して差別されていないかについて関心をいだいていました。さらに、日本が水と衛生分野において世界最大の援助供与国であることから、日本政府および JICA(国際協力機構)との意見交換にも意欲を示していました。
 独立専門家は訪日調査を終えた7月28日、東京で以下の声明(抜粋)を発表しました※。

独立専門家の声明の抜粋
 

 「日本は比較的短期間に、水道と衛生施設の全面普及の確保に向け、長足の進歩を遂げました。政府との会合でも、上下水処理場を訪問した際にも、安全な飲み水を確保し、廃水その他による汚染から環境を守ろうとする決意ははっきりと感じられました。日本ではどこでも、水道の水を飲むことができますが、これは称賛すべき成果です。私は、下水の再生や汚泥の再利用といった重要な取組みについても学びました。また、地震をはじめとする緊急時に備え、水と衛生施設を確保しようとする日本の取組みには、特に感銘を受けました。これらは重要な成果であり、日本はいかなる生活の場面でも、また、いかなる時にも、あらゆる人々が水と衛生設備を安全に利用できるよう、こうした取組みを続けてゆかなくてはなりません。

 私は東京と大阪で、公園に暮らすホームレスの人々や、ホームレス集団の代表者と面会しました。公園で暮らす人々はある程度、公共施設を通じて水や衛生を得ることができます。それだけで他の国々よりもましだとはいえますが、ホームレスの人々が住む公園の公共施設の維持を関係当局が怠っているケースも見られます。政府と地方自治体が密接に連携し、ホームレスの代表も交えて、こうした問題につき国際人権規準に沿った総合的解決策を模索するよう望みます。

 私は京都近郊のウトロ地区も訪れました。ここには朝鮮人の方々が数世代にわたって暮らしています。水と衛生施設の利用状況は長年をかけ、徐々に改善してきたようですが、さらに改善の余地があります。水と衛生の分野で多大な成果をあげてきた国に、依然として水道水を利用できない人々がいることは衝撃的でした。周辺地域にはほとんど下水道があるにもかかわらず、ここには下水道が通っていません。下水も生活排水のはけ口もないことから、1年前のような洪水が起きれば、排泄物などにより環境が汚染され、深刻な衛生上の懸念が生じます。ウトロの住民の中には、年金受給権がないとの理由から、水や衛生になかなか手の届かない人々がいることも気がかりです。

 私が視察した公衆便所に、障害者も利用できるものが多かったことについては、嬉しく思います。しかし、障害者やその権利擁護団体の代表とお会いした際には、障害者のアクセス上のニーズに配慮した住宅への入居に深刻な問題が伴うことを知りました。

 私はまた、自由を奪われた人々の状況についても知りました。一部の刑務所では、受刑者が許可された時のみ洗髪や洗濯を許され、通常それは週2-3回に限られるという点について懸念を覚えます。

 私がお会いした人々の中には、水道・衛生サービスの民営化を懸念する向きもありました。サービス供給方法について、人権は中立であるため、どちらのサービス供給形態が適切か、それともその組合せが適切かは、状況に応じて変わってきます。しかし、官民どちらの運営形態を取るにせよ、国には常に、水と衛生に対する権利をあらゆる次元で保障する義務があります。

 日本を去るにあたり、私は水道や衛生施設の充実だけでなく、これらを安全、衛生的かつ利用可能なものにするために活用されている革新的技術にも、感銘を覚えています。国民の一部についての不安は残るものの、私はこうした問題が早急に解決できるものと確信しています。日本は国内的な成果においても、国際的な援助水準においても、世界のトップクラスにあります。私は政府に対し、こうした部門における今後のあらゆる取組みの中心に人権を据えるよう求めます」。

 独立専門家は、日本での調査結果について国連人権理事会に報告する予定です。

 そうしたなか、国連総会は7月28日、賛成122、反対0、棄権41で、清潔な水と衛生へのアクセスは人権であるという宣言を採択しました。同宣言は、国や国際組織に対して、安全で清潔、アクセスと購入可能な飲料水および衛生をすべての人に提供することができるよう、とりわけ途上国への財政支援や技術移転を要請しています。国連総会は、世界で約8億8,400万人が安全な飲料水にアクセスすることができず、26億人以上が基本的な衛生へのアクセスが十分に満たされていないことを憂慮しています。


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部落解放同盟大阪府連の山本義彦(左端)さんに大阪市内の浅香地区における衛生・環境改善の取り組みの説明を聞くアルブケルケさん(右から2人目)

※声明抜粋は、国連広報センターのウェブサイトに掲載されている翻訳を引用しています。
http://unic.or.jp/unic/press_release

(藤本伸樹・ヒューライツ大阪)
 


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