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国際人権ひろば No.88(2009年11月発行号)

特集:「移住」の視点からみる韓国・済州島スタディツアー Part5

自分の町の「多文化共生」が問われた ―韓国スタディツアー3年目の学び

号外版:「済州島スタディツアー2009」(8月25日~8月28日)の感想文


朴 君 愛
ヒューライツ大阪

「多文化社会」へシフト中の韓国と出会う


 2009年8月の韓国済州島(チェジュド)スタディツアーは、ヒューライツ大阪主催の韓国スタディツアーとして3回目の開催となった。そのプログラムと併せて2007年度より3年間、移住女性・外国人住民の人権をテーマにした日韓のシンポジウムを大阪とソウルなどで開催してきたが、韓国での移住女性、移住労働者をはじめとする外国人住民の急増とそれに対する市民社会、政府・自治体の取り組み(取り組みの不在も含めて)を変化の真っ只中で学んだ。実際、在韓外国人処遇基本法(2007)や多文化家族支援法(2008)などの制定への思いが熱く語られ、それが実現した時期であった。その報告は、ヒューライツ大阪のホームページで、機関誌『国際人権ひろば』の過去の記事として掲載している。
 そして大阪と深い関係がある済州島(チェジュド)の過去と現在を学ぶスタディツアーをもって、多文化共生を考える韓国スタディツアーのプログラムを一旦終わることになった。

何を学んだのか


  日本からのスタディツアーの参加者数は毎回20名前後であったが、NGO活動家や研究者、大学生などこの事業を通じて日韓の人権ネットワーク強化に多少なりとも寄与したと思っている。また、参加者の感想文も毎回いただき、ホームページで紹介してきた。
 日本は、旧植民地出身者としての在日コリアンの存在もあって韓国より外国人住民の人権への関心は早くからあり、人権運動が自治体、草の根レベルで取り組まれてきた。外国人に対する地域社会の偏見や排外意識、移住労働者の処遇における諸問題など外国人の人権にかかわっては、日韓が驚くほど共通の課題を持っていることがわかった。その一方、日本では中央政府による多文化・多民族共生への政策が不在であること、個人や小さな市民団体がコミュニティ・レベルで外国人住民を支えて、問題解決に奔走していることも痛感した。スタディツアーを重ねるほどに、結局は、自分が住んでいる町が「多文化共生」に向って何ができていなくて、どうあるべきかを自分たちが問われることとなった。
 また外国人当事者のエンパワメントこそが重要であること、法制定・政策樹立は、人権保障の根拠になること、マスコミが市民啓発に重要な役割を果たすこと(その反対にもなる)、―今更であるが、議論を通じて日韓の参加者がお互いに確認した。

「移住者」「移住労働者」問題をこれからも発信


  人の国境を越えた移動は、世界的規模で起こっており、居住国の国籍を持たない人たちは、日本・韓国はもとより多くの国々で増加していくと思われる。人権という視点からは、本来、誰であっても(国籍、民族的出身、etc...)、どこにいても、人は、等しく人間の権利を享受できるはずだ。しかし経済不況や社会不安が広がる中で、日系ブラジル人の現状が顕著であるように外国人住民がより経済的・社会的困難に直面しており、社会に対する不満のはけ口として外国人あるいは民族的マイノリティを排斥するという憂慮が高まっている。そしてそれに対処できる法制度や政策が日本には充分備わっていないと考えている。さらにアジア・太平洋地域においても、これは現在進行中の人権課題の一つである。
 併せて、「多文化共生」とは何か、具体的にもっと豊かに議論をつめていく必要がある。例えば、ただ言葉や文化が違うという「差異」を認めるだけではなく、人権という価値をお互いが共有していると確信したとき、はじめて「多文化共生」といえるはずだ。
 3年間の事業実施に、日韓の多くの団体・個人が協力いただいたことに再度感謝を申しあげるとともに、ヒューライツ大阪として移住者・移住労働者の人権に関わって課題の共有、解決に向けての議論を発信していきたい。