戴睿(だい るい)
大阪大学人間科学部3年、ヒューライツ大阪インターン
「こどもひろば」は、外国ルーツを持つ子どもたちの学習支援を行うボランティア団体である。2005年に、外国ルーツの子どもの支援者養成講座の参加者十数人によって設立され、2010年より公益財団法人大阪国際交流センターとの共催となった。2026年4月から、同センターで行われる教室活動の名称は、「こどもひろば」から「ことばのひろば」に変更されたが、団体名が「こどもひろば」のままであることから、本稿では「こどもひろば」を用いる。
「こどもひろば」は現在、小学校3年生から高校生まで、合計で約20人の子どもが参加している。その中でも特に、「ダイレクト」と呼ばれる子どもたちの高校進学支援に力を入れている。「ダイレクト」とは、「高校に直接入学してくる」生徒を指す。彼らは学齢を過ぎて来日し、中学校への編入ができないため、本来中学校が行う高校の入試手続きを自ら行う必要がある。「ダイレクト」の子どもたちはどこにも所属できず、日本の学校制度にも馴染みがない中で、自ら受験に臨むことは容易ではない。そのため、「こどもひろば」は、居場所を提供すると同時に、進学・学習サポートをしている。英語、数学、日本語の学習に加え、親と子どもと「こどもひろば」の三者面談や進路指導、進路ガイダンスや学校説明会への同行、受験資格審査や出願手続きなど、進学に関わる幅広い支援を行っている。
現在、通常は10数人のボランティアスタッフ、2、3人の外国ルーツを持つ当事者スタッフ、そして5人ほどの大学生インターンが支援に携わっている。ボランティアスタッフの中には、教員免許や日本語教師免許を所持する人や、海外駐在経験や外国語学習経験を持つなど日本語以外の言語ができる人もいるが、そうでない人も「こどもひろば」でたくさん活躍している。当事者スタッフは、自身の経験や語学力を活かして支援するだけではなく、「今苦しくても、きっと大丈夫」と示すロールモデルの役割も果たしている。それぞれの得意分野を生かしながら、子どもたちにとって安心できる、家と学校以外の「第三の場所」づくりに努めている。

学習支援をする筆者(右)
私は2025年4月から、「こどもひろば」でボランティアをしている。その理由は、もともとボランティア活動が好きだったことに加え、私自身が外国ルーツを持つ子どもとして高校進学に悩んだ経験があるからだ。
私は中学3年の時に中国から来日し、以来、中学3年生の1年間と高校の3年間を含め、大阪で過ごしている。日本に来る前に日本語を5ヶ月ほど勉強していたことや、学校の先生や友人に恵まれたこともあり、日本での学校生活にはほとんど困難を感じなかった。しかし、高校進学では大きくつまずいた。
私は来日前から、両親と日本の学校や高校進学について相談していた。2月に来日する予定だった私は、学齢上では中3に編入できたが、編入して1ヶ月も経たないうちに高校受験を迎えることになるため、中2に編入して、中3をやり直して日本語や日本での生活に慣れてから高校受験に臨むことにした。それほど私は、高校進学を真剣に考えていた。編入後、高校受験に内申点が必要だと知り、すぐに中国の成績を取り寄せた。しかし、中国の成績自体は認められたものの、実際の成績が反映されずに、日本の5段階評価ですべて「1」とつけられた。中国でも勉強を頑張ってきた私にとって、なぜ海外の成績は適切に評価されず、一律に「1」とされるのかは大きな疑問だった。そのため、一般入試では自分の学力に合った高校に合格することが難しく、一般入試を諦めざるを得なかった。
一方、親から大阪には海外から来た子どもが比較的受けやすい入試があると聞いていたため、当初はそれほど焦っていなかった。しかし、実際に調べてみると、その特別選抜の実施校は限られており、私の学力に合い、希望する大学への進学実績がある学校は見つからなかった。来日前から進路を考え、中3をやり直してまで高校受験に備えてきたにもかかわらず、自分の努力や学力とは別のところで選択肢が狭められ、「もう行ける高校がない」と進路懇談で大号泣した。
そんな時、担任の先生が千里高校の帰国生枠を紹介してくれた。外国ルーツを持つ生徒向けの特別選抜には、「日本語枠」と呼ばれる「日本語指導が必要な帰国生徒・外国人生徒入学者選抜」と、「帰国生枠」と呼ばれる「海外から帰国した生徒の入学者選抜」がある。私は当初、外国籍では受験できないと思い込んで、帰国生枠を断念していたが、先生が実際は国籍に制限がなく、私でも受験できることを教えてくれた。結果として、私は「帰国生枠」で千里高校に進学し、熱心な先生や先輩、友人に出会い、充実した高校生活を送ることができ、第一志望の大阪大学にも合格することができた。
振り返ってみると、私が高校・大学受験を成功させることができたのは、自分自身の努力だけではない。来日前に、両親は来日時期を学年末に合わせたり、日本語を事前に学ばせてくれたり、高校受験について情報収集をしてくれたりした。そのような準備に加え、来日後は進路について親身になって一緒に考えてくれる先生や先輩、友人がいたからである。特に外国ルーツを持つ子どもにとって、日本の学校制度や受験を経験していない、あるいは日本語で十分に情報を得ることが難しいなどの理由から、進路について親に相談することが難しい場合がある。そのため、親以外に進路について相談でき、自分の状況を理解して一緒に考えてくれる人がいることは、とても大きな支えになる。私自身もそのような経験をしたからこそ、大学進学後は、今まで支えてもらっていた私が、今度誰かの支えになりたいと思うようになった。そして、自身の高校受験の経験を活かせる「こどもひろば」で活動を始めた。
私は当事者スタッフとして、学習支援と通訳を中心に活動している。当事者スタッフは、前述した日本語枠や帰国生枠の受験を経験したことのあるスタッフのことを指す。私は毎週夕方から行われる月曜日の活動に参加し、大学の長期休みには木曜日の高校受験生向けの補習にも参加している。子どもに合わせて、中国語、日本語、英語を使い分けて、時にはスマホの翻訳機能も利用しながら、受験に必要な英語や数学、日本語を1対1で教えている。また、中国語を母語とする子どもが多いため、普段の教室活動での通訳だけではなく、面談や学校説明会、進路ガイダンス、そしてスタッフと子ども、保護者のグループチャットなどでも通訳・翻訳を行っている。そのほか、学校説明会への同行、面接対策、出願する時に高校に提出する「自己申告書」の添削や翻訳、悩み相談などにも関わっている。

学習支援のようす
活動を始めてまず気づいたのは、私自身は外国ルーツを持つ子どもの中では、かなりうまくいったケースだったことだ。私は漢字圏出身で、漢字の知識があるため、日本語学習には有利だった。また、勉強が比較的得意で、日本語や英語を話すことに全く抵抗がなく、新しい環境に適応しやすい性格である。さらに、前述したように、家族が来日前から日本語や学校について準備をしてくれていたため、学校での意思疎通や学習には全く問題がなかった。これまで私は、自分自身や身近な人の経験を基準に、「外国ルーツを持つ子どもでも、ある程度日本語や勉強ができれば、学校生活に適応できる」と考えていた。しかし、「こどもひろば」で活動する中で、それが決して当たり前ではないことに気づいた。日本語を学ぶこと一つをとっても、母語や文化によって必要な労力は大きく異なる。学校の勉強についても、母国と日本とでは教育内容や教育スタイルが異なるため、単純に「努力すれば追いつける」とはいえない。また、不登校やメンタルヘルスなど、学習以前に支援を必要とする子どももいる。そのため、支援者にまず求められるのは、「勉強をさせること」だけを優先することではなく、学校や「こどもひろば」を安心して過ごせる場所だと感じてもらうことなのかもしれない。
そのことを強く感じたのは、子どものスマートフォンの使用についてだった。私は当初、学習時間中にスマートフォンを使う子どもには注意すべきだと思っていた。しかし、「こどもひろば」事務局長の鵜飼聖子さんから、スマートフォンは子どもにとって単なる遊びではなく、言葉の通じない環境で疲れた時に、自分の国や自分の言葉につながれる息抜きになることもあると聞いた。確かに、子どもたちは常に言葉が通じないことからくるストレスに満ち溢れた環境に置かれている。そのような環境の中で、スマートフォンを使う時だけは言葉が通じる「場所」に一時的に「避難」することができるのだ。それまでの私は、子どもの行動を「勉強をしているか、していないか」という自分の価値観から見ていた。しかし、支援者に必要なのは、自分の「当たり前」を子どもに押しつけるのではなく、その行動の背景に何があるのかを考えることなのだと痛感した。
また、私は中学生の頃、近くの公立のセンター校の「日本語教室」に通っていた。センター校とは、日本語指導が必要な子どもを対象に教育支援を行う学校を指し、「日本語教室」では、日本語指導が必要な生徒を集め、初級日本語の指導を行っている。私は来日前から日本語を勉強していたため、数日で卒業できたが、その教室制度には不満を持っていた。日本語教室は学校の授業についていくために必要な場であるにもかかわらず、そこに参加するためには通常の授業を離れなければならない。日本語の習得と学校の授業への参加のどちらも必要なのに、一方を得るためにもう一方を犠牲にせざるを得ないことに、私はジレンマを感じていた。しかし、「こどもひろば」で活動する中で、制度は簡単には変わらず、文句を言うより、どのようにすれば既存の制度を最大限に活用できるのかを考えることが、支援者にとって重要だと考えるようになった。同時に、「ダイレクト」のような、そもそも既存の制度を利用することさえ難しい、制度の狭間に落ちている子どもたちの存在を知った。自分が制度に不満を持てたこと自体、制度にアクセスできる立場にいたからこそ可能だったのだ。

高校入試の面接練習
活動を続ける中で、私は外国ルーツを持つ子どもたちの進路選択そのものに制約があることに気づいた。私は高校受験の時、文系を志望していたため、特別選抜実施校という限られた選択肢ではあったが、その範囲内ではさらに大きな不自由を感じることはなかった。しかし、「こどもひろば」には理系に進みたい子どもがいて、彼らは特別選抜実施校の中からさらに選択肢を絞らなければならなかった。というのは、帰国生枠校の中には、学校自体には文系理系両方のコースがあるが、特別入試で入れるのは文系コースのみになっている学校があるからだ。一方で、文系コースにも偏りがあり、多くの帰国生枠校のコースは英語系や国際系である。「外国ルーツ=英語」という固定観念が、特別選抜の受験制度に表れているのではないかと感じた。
また、私は教育の「継続性」にも懸念を抱くようになった。2025年度、「こどもひろば」では、在留資格が更新できず帰国した家族や、更新できる見込みがなく自主的に帰国した家族がいた。子どもの在留資格は基本的に親の在留資格に紐づけられているため、子どもは極めて受動的な立場である。子ども自身が日本で学校に通い続けたいと思っていても、親の在留資格によって帰国を余儀なくされる場合がある。母国で学校を中退して日本に来た子どもは帰国後、すぐに学校に復帰できるのか。日本で育てられ、母国の言葉を十分に話せない子どもは、母国で学校についていけるのか。子ども自身にはどうすることもできない事情によって、教育の機会や継続性が失われることについて、私は疑問を持つようになった。子どもの教育を受ける権利や継続性は、一体誰が保障するのか、答えは見えないままである。
高校進学についても課題がある。2025年度、大阪公立高校の日本語枠の入試では、「回し合格」が行われたにもかかわらず、合計で100人以上の不合格者が出た。「回し合格」とは、一般入試で生じた定員割れの分を、日本語枠の不合格者から補充し、追加で合格とする仕組みである。過去3年では不合格者が20〜30人台だったことを考えると、外国ルーツを持つ子どもたちの高校進学をめぐる状況が大きく変化していることがわかる。
不合格者の進路はどうなるのかは、とても憂慮すべきことであると感じる。一般受験するのか、二次選抜を受けるのか、あるいは帰国するのか。本来、全ての子どもに高校進学の機会を与えるために設けられた制度だが、不合格者が多く出た今、子どもの就学機会が保障されないことになっており、子どもやその家族は、不安を掻き立てられているのではないかと感じる。しかし一方で、いくつかの私立高校が独自に外国ルーツを持つ子どもの受け入れを始めるなど、行き場のない子どもを出さないための取り組みも生まれている。
ここで、私は1つの矛盾を感じている。「外国ルーツを持つ子どもは増えているが、日本で学び、暮らし続けることができる外国ルーツを持つ子どもは、必ずしも増えているとは限らないのではないか」という矛盾である。外国ルーツを持つ子どもが増える中で、「こどもひろば」のような支援団体や、外国ルーツを持つ子どもを受け入れようとする学校は、子どもたちが日本で学び、将来を築けるように支援を広げている。一方で、在留資格をめぐる制度によって、日本で暮らし続けること自体が困難になっている家族もいる。外国ルーツを持つ子どもたちを日本で受け入れ、学びを支えようとするNGOや市民団体の動きが広がる一方で、入管行政は必ずしもその子どもたちが日本で暮らし続けることを前提としていない。このようなNGOや市民団体の支援と入管行政との間に生じている方向性のズレに、私は強い違和感を覚えている。
私は「こどもひろば」での活動を通して、外国ルーツを持つ子どもを支援することは、目の前の子どもに勉強を教えるだけではないことを知った。その子どもがどのような制度の中で暮らし、どのような選択肢を持ち、そしてその選択肢を将来にわたって維持できるのかまで考える必要がある。外国ルーツを持つ子どもたちが増えている今、私たちは「どう支援するか」だけではなく、「その子どもたちが日本で学び、暮らし続けられる環境になっているのか」を考える必要があるのではないだろうか。

現在の場所に移転する前の教室のようす
<参考>
(2026年09月16日 掲載)