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マイノリティ問題に関する特別報告者、「現代の国際関係におけるマイノリティ問題」について 報告書を国連総会に提出(7/17)

 2026年9月8日に開幕した第81回国連総会に向けて、マイノリティ問題に関する特別報告者、ニコラ・ルブラ氏は、1992年に国連総会で採択された「民族的(national or ethnic)、宗教的および言語的マイノリティに属する人びとの権利に関する宣言」(以下、「マイノリティ権利宣言」または「宣言」)について、現代の国際関係との関わりから検討する報告書を7月に提出しました。

 以下、報告書の概要を紹介します。

マイノリティ権利宣言において国家間の協力が重視される背景

 報告書は、マイノリティ権利宣言には、国家間の協力や国家間関係に直接言及する規定が複数存在すると指摘し、とりわけ以下の4つの規定に注目しています。

  • 第5条2項:国家間の協力・援助の計画は、マイノリティに属する人びとの正当な利益に妥当な考慮を払って、立案され、実施されなければならない。
  • 第6条:国家は、相互理解と信頼を促進するために、マイノリティに属する人びとに関連する問題について、とくに情報と経験の交換を通じて、協力する。
  • 第7条:国家は、この宣言が定める権利の尊重を促進するために協力する。
  • 第8条4項:この宣言のいずれの規定も、国際連合の目的と、国家の主権の平等、領土の保全、政治的独立を含む国際連合の原則に反する活動を許すものと解釈することはできない。

 特別報告者は、マイノリティの権利保障に関して、国家間の協力が重視されている理由について3つの視点から説明を試みています。

①国際的なマイノリティ保護の歴史的経緯

 報告書によれば、マイノリティをめぐる問題が国家間の関係と密接に結びついてきた背景の1つは、国際的なマイノリティ保護制度そのものの歴史にあります。第一次世界大戦後、国際連盟の下で、マイノリティの保護は国際協力の重要な対象でありましたが、今日の普遍的人権制度のような仕組みではなく、新たに成立した国家や領土を拡大した国家と戦勝国との間で締結された条約などを通じて実施されていました。このような歴史的経緯から、マイノリティ保護については、国連の普遍的人権システムの下においても、国家間の協力が重視される構造が残っていると特別報告者は指摘しています。

②マイノリティに属する人びとの経済的、社会的権利を実現するための国際協力の必要性

 また、報告書は、マイノリティの権利については市民的・政治的権利だけの問題ではなく、経済的、社会的および文化的権利とも関係しており、これらの権利の実現においては国際協力がより盛んに行われていることも背景にあると述べています。

 特に宣言の第4条5項は、国家に対し、マイノリティに属する人びとが自国の経済的進歩及び発展に十分に参加できるよう適切な措置を考慮するように求めており、さらに第5条2項は、この「配慮」を国家の国内政策に限定せず、国家間の協力・援助計画にも拡張しています。

 特別報告者は、この考え方を経済協力に限定する必要はなく、教育や文化を含む、より広範な国際協力に適用しうると述べ、ミレニアム開発目標(MDGs)にも持続可能な開発目標(SDGs)にもマイノリティの正当な利益への言及がないことは、マイノリティ権利宣言に違反すると批判し、2030年以降の国連開発アジェンダにおいて、マイノリティに属する人びとの正当な利益が明示され考慮されることを求めています。

③マイノリティの保護は平和と安全保障の問題でもある

 そして3つ目の視点として報告書は、マイノリティへの差別や迫害は、国内の人権問題にとどまらず、国家間の緊張や武力紛争につながってきたことを特に強調しています。

 特別報告者は、ナチス・ドイツによる自国民保護を理由にしたチェコスロバキアに対する領土要求から、2022年以降は、ロシア連邦がロシア語話者住民に対するウクライナ当局による「ジェノサイド」を口実にウクライナへの侵攻を正当化していることを含め、マイノリティ保護が、国外に居住する「同胞」や「自民族」の保護を理由とした国家による一方的介入の口実として利用されてきた、また利用されうるという問題を重視しています。

 これに関連して特別報告者は、「パスポート化(passportization)」と呼ばれる、ある国家が国外に居住する人びとに自国の国籍を付与し、その後、その国民が国外で差別されたり不当に扱われたりしていることを理由として介入を正当化する慣行を取り上げています。そして、居住国の国籍を有する個人は別の国家から自国民として保護されないという「実効的国籍(effective citizenship)」の原則を援用し、そのような慣行に基づく同胞国家(kin-State)の介入は、外交的保護を通じた場合を含め、法的効果を有さないと主張しています。

 報告書は、宣言の第8条4項を、この問題に対応する重要な規定として位置づけています。

 その上で特別報告者は、国家は国外に居住する自国民などのマイノリティに関して何らの活動も行えないというわけではなく、たとえば文化活動や教育機関への支援のような活動が国際法上禁止されていないことを確認しつつ、その活動は、国家による一方的な措置としてよりも、二国間又は多国間の協力を通じて実施されることを宣言第5条および第6条は奨励していると述べます。

国連システム全体にマイノリティをめぐる課題の主流化を

 特別報告者は、国家による一方的な介入を制限する宣言第8条4項は、マイノリティへの重大な権利侵害に対して国際社会が集団的に対応する必要性をより強く示していると述べ、国際平和と安全の維持について第一次的責任を負っている安全保障理事会には、マイノリティ集団に対する人権侵害が平和および安全への脅威を引き起こしうることを認識し、マイノリティの保護に取り組む義務があると強調しています。

 特別報告者はさらに、安全保障理事会の常任理事国が自らの行動によって安保理の任務遂行を妨げている場合の法的責任について、国連総会が国際司法裁判所に勧告的意見を求めることも検討すべきだと提案しています。

 そして、マイノリティをめぐる課題は、マイノリティ権利宣言第5条2項のもとでは開発のための協力に関する問題であり、第8条4項のもとでは安全保障上の懸念事項でもあります。さらに、自由権規約第27条、子どもの権利条約第30条およびマイノリティ権利宣言のもとでは、人権問題でもあります。こうしたことから特別報告者は、すべての国家に対し、国連システム全体にマイノリティをめぐる課題を主流化するため協力するよう求めています。

【出典】

A/81/214
https://docs.un.org/en/A/81/214

マイノリティ権利宣言(日本語訳)
https://imadr.net/wordpress/wp-content/uploads/2025/03/UN-Declaration-on-the-Rights-of-Minority-Japanese.pdf

(2026年09月24日 掲載)