MENU

ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
交流ハブをめざします

  1. TOP
  2. 資料館
  3. ニュース・イン・ブリーフ
  4. 育成就労制度の創設や永住資格の取り消しを盛り込む入管法改定案が国会へ(3/15)

ニュース・イン・ブリーフ サイト内検索

 

Powered by Google


ニュース・イン・ブリーフ Archives


育成就労制度の創設や永住資格の取り消しを盛り込む入管法改定案が国会へ(3/15)

 政府は3⽉15⽇、外国人技能実習制度に代わる新たな「育成就労制度」を創設することなどを盛り込んだ「出入国管理及び難民認定法」(入管法)、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習法)、および「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」(入管特例法)の改定案を閣議決定し、国会に提出しました。
 今回の政府の方針に対して、移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)、日本弁護士連合会など市民社会組織や弁護士団体から、政府も目指す「共生社会の実現」に逆行するものだとして批判の声があがっています。

育成就労制度の創設
 「育成就労制度」は、過去30年間に人権侵害が多発した技能実習制度を廃止し新たに設けられるもので、専門の技能があると認められた現行の「特定技能1号」の水準にまで就労を通して育成するとしています。受け入れ職種は、介護や建設、農業など特定技能制度と同じ分野に限るとしています。
 しかし、これまで問題とされてきた転籍制限(就労先の移動制限)に関しては、一定の技能と日本語の能力があれば同じ分野に限り認めるとしたうえで、分野ごとに1年から2年までという曖昧な範囲で期間設定ができるとしており、転籍制限が就労期間3年のうち最長2年まで容認されることが懸念されます。ひとつの受け入れ機関(雇用主)に縛り付けようとする構造は、技能実習制度と何ら変わらないと批判されています。
 また、育成就労制度において、家族同伴は特定技能1号と同じく認められておらず(同2号では同伴可)、家族の結合権を保障する国際人権基準に則っていません。

在留資格「永住者」の取り消し
 法案は、「育成就労制度を通じて、永住に繋がる特定技能制度による外国⼈の受け⼊れ数が増加することが予想されることから、永住許可制度の適正化を⾏う」という考えのもと、在留資格「永住者」が税金や社会保険料などを故意に滞納した場合や、1年以内の拘禁刑に処された場合、また在留カードの常時携帯など入管法上の義務を遵守しない場合に永住資格を取り消すという内容を盛り込んでいます。
 現行の制度でも、虚偽の申請や、1年を超える懲役・禁錮刑に処された場合などは、永住資格が取り消されていますが、さらに厳格化されるものです。
 2023年6月末現在、永住資格の外国籍住民は約88万人で、在留外国人の27%にあたります。病気や失業で支払いが困難になった場合でも、法律的には「故意」とみなされるかもしれません。永住資格の取り消しは、永住者および今後永住許可を得ようとしているすべての外国籍住民の立場を不安定にするもの、と懸念されています。
 そのような改定案に対して、移住連は、3月15日に公表した声明のなかで、「税金や社会保険料の滞納や、退去強制事由に該当しない軽微な法令違反に対しては、日本国籍者に対するのと同様に、法律に従って督促、差押、行政罰や刑事罰といったペナルティを科せば足りること」「日本に生活基盤を築いた永住者に対し、永住許可取り消しという重大な不利益を課すことは、外国籍住民に対する差別にほかならない」と抗議しています。

「在留カード」「特別永住者証明書」とマイナンバーカードの一体化
 法案はまた、「在留カード」および「特別永住者証明書」とマイナンバーカードの一体化を盛り込んでいます。
 「在留カード」は、3カ月を超えて在留する外国人に、入国時に交付しており、居住地や在留資格などの個人情報が記され、ICチップ付きで、常時携帯が義務付けられています。法案は、「在留カード」とマイナンバーカードをまとめて「特定在留カード」とし、在留資格の更新手続きなどを簡素化し、利便性の向上を図るとしています。必要なシステムを整備したうえで希望する外国籍住民から受け付けるとされています。
 その一体化が実施されれば、マイナンバーカードの提⽰が必要な場合、従来のマイナンバーカードであれば記載されていない在留に関わる情報(在留カード番号、在留資格、在留期間、就労制限の有無、資格外活動許可、国籍・地域など)までもが相手に伝わるリスクが懸念されています。

<出典>
https://www.moj.go.jp/isa/05_00042.html
出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案(出入国在留管理庁、2024年3月15日)
https://www.moj.go.jp/isa/05_00043.html
出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案(出入国在留管理庁、2024年3月15日)
https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2024/240307.html
技能実習制度及び特定技能制度の在り方並びに新たな永住資格取消し制度の導入に関する政府方針に対する会長声明(日本弁護士連合会、2024年3月7日)
https://www.toben.or.jp/message/seimei/post-714.html
永住者の在留資格の取消しを容易にする法改定に反対する会長声明(東京弁護士会、2024年3月7日)
https://migrants.jp/news/voice/2024fms.html
「公正な移民社会」にふさわしい法制度を― 2024年入管法改悪にNO! (移住者と連帯する全国ネットワーク、2024年3月15日)

<参照>
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2024/02/27-211.html
政府が税や保険料を滞納する「永住者」の在留資格の取消を検討-移住連が反対声明(2/9)
(ヒューライツ大阪ニュース・イン・ブリーフ)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2023/11/11124.html
技能実習制度から育成就労制度に改称し、「就労1年」で転職可-有識者会議の「最終報告書」(11/24)(ヒューライツ大阪ニュース・イン・ブリーフ)


(2024年03月26日 掲載)