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国連「女性と少女に対する差別に関する作業部会」がフェミニスト視点に立った「人権を基盤とする経済」を呼びかけ

 国連の「女性と少女に対する差別に関する作業部会」は、2023年4月に「貧困におけるジェンダーの不平等:フェミニスト視点に立った人権を基盤とするアプローチ」と題した報告書を第53会期人権理事会に提出しました。作業部会の議長であるドロシー・エストラーダ・タンク氏は6月の人権理事会で、貧困層において女性と少女が占める割合が大きいことを指摘し、これに対応するために、格差・不平等を生み出す社会・経済システムを見直し、気候変動における女性と少女への影響を考慮して、国内外で協力していくことが必要であり、フェミニスト視点に立った「人権を基盤とする経済」を構築することが重要であると述べています。
 報告書は、女性と少女が直面している貧困と不平等は、世界、地域、国のそれぞれのレベルでの経済政策が家父長制の枠内で優先順位を選択してしまい、女性と少女が経験する特有の課題や権利を無視してきた結果であり、明らかな制度的失敗が女性と少女に対する差別を生み出してきたと指摘しています。新型コロナウイルスによる危機によって、社会におけるケアの中心的役割を担うのが女性と少女であることが再認識されており、経済の主流の考え方にこうした問題を組み込み、公共政策を担う国家の市場に対する姿勢を見直すべきであるとしています。
 また、多くの国において、女性と少女が社会的、経済的に弱い立場に置かれ、司法制度にアクセスする費用を負担できないことから、刑法が女性と少女に不利なかたちで適用されていることが指摘されています。特に影響を受けているとされるのが、中絶を含むリプロダクティブヘルスケアを受けられない路上生活者、先住民族・移民・民族的マイノリティ、セックスワーカー、性的マイノリティなどの貧困層の女性と少女たちです。
 貧困は、ジェンダーに基づく暴力とつながり、さらなる悪循環を生み出すことが指摘されています。職場でのセクシュアルハラスメント、家庭内や路上での暴力に直面している女性と少女は、労働市場に平等に参加することを阻まれ、社会保障の給付を受けられず、老後に貧困に陥り、路上生活を強いられたり暴力にさらされたりする可能性が高くなるといいます。
 社会的、経済的に弱い立場におかれた人々は格差・不平等に直面していますが、その是正を前提とする実質的平等に対する権利と、貧困から解放される権利は密接につながっています。その実現のためには、社会経済戦略の実施にあたって女性と少女の多様なグループの参加が重要であり、国内および国家間における資金の確保と再分配が必要であると報告書は指摘しています。先進国は、ジェンダー平等に向けて、低所得国のすべての人の経済的、社会的、文化的権利の実現を支援し、国家間および国内の不平等の是正に協力することが求められるとしています。報告書は、国家、国際経済機関、企業に対して、フェミニスト視点に立った人権を基盤とした環境面・社会面での新たな連携の必要性を提言しています。

<参照>

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(2023年08月07日 掲載)